秘密結社の世界史 (平凡社新書 315)

著者 :
  • 平凡社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582853155

作品紹介・あらすじ

人はなぜ"秘密結社"に魅せられるのか?ヴィジュアル・カルチャー、インターネットの発達によって、見える表面と見えない背後の二重化が進んだ現代では、物事の背後にある秘密を垣間見たいという欲望が高まっている。古代密儀、テンプル騎士団、薔薇十字団、フリーメーソン、イルミナティ、KKK、ナチス、カルト、マフィア…。古代から中世、近代、二十世紀、現代に至るまで、秘密結社という「隠された視点」から世界史を読み直す。

感想・レビュー・書評

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  •  古代から現代まで、時代別に数々の「秘密結社」の盛衰を概観しながら、なぜ人は秘密結社や陰謀説に引き付けられるのかを考察したもの。
     正直、個別具体的な色々な団体の歴史にはそんなに興味が持てなかったが、もっと一般的に人はなぜ秘密に引き付けられるのか、とか「インターネットは、カルトや秘密結社をきわめてつくりやすい状況を準備した」(p.221)みたいな分析はとても面白かった。
     たぶんどんな組織でも、ある情報を握っている、ということが管理する側であり、上層部であり、その情報をどう操作するかという権利を握るということが重要なのだろう、ということが、裏付けられた。この考えはおれの前の職場で確信に至った考えだが、つい半年くらい前も同僚に「まだ詳しくは言えないんだけど、実は今こうこうこうなっていてさあ」とベラベラ何かの情報の断片を喋られたが、それはたぶんこの人(=同僚)は相手(=おれ)よりも優位な立場であることを誇示しているだけなんじゃないのか、とか考える。やっぱり「あなたにはまだ秘密にします」ということをあからさまに言われると、あんまりいい気はしない。(しかもその情報は後で知ってみると別に大したことじゃなかったりした上に、そもそもおれに言ったところで別に何かの害になることをおれがしたりしない(というかできない)ことくらいあなたも知っているでしょうに、とか色々その人に対して思ってしまう…)で、本文では「狩猟民は農耕民に対して秘密が少ないと言われる。なぜなら守るべきものが多くないからだ。失うものが少ないのだ。秘密が少ないと儀式も簡単で開放的になる。」(p.35)という部分がなるほどと思った。やっぱりまず守るものがあって、秘密が生まれる、というのは分かりやすい。「狩猟民や遊牧民に比べて、土地という永続的なものに依存する農耕民は、より大きな秘密にこだわることになる。」(p.38)ということ。さらに裏返せば「秘密は見えるものでなければならない。そうでなければ秘密は意味や力を持たない。なぜ見えなければならないかといえば、秘密はなにかを守るためのものだからである。」(p.38)そこから「仮面」の話になるが、あの世とこの世のものを結ぶ仕掛けであった仮面が、ただの顔を隠すカモフラージュになってしまった、という話も面白かった。あとはよく聞く「テンプル騎士団」について、「テンプル騎士団は銀行の役割を果した」(p.60)というのが、また興味深い。「中世では、教会や修道会は、すべて銀行の役割を果していた。寄進だけでなく、財産を一時、預かってもらう寄託といった形があった。修道院の金庫に預けておけば安全であった。」(pp.60-1)というのは知らなかった。そして、前に読んだ『フリーメイソン』の本でもあった気がするが、合理的なものが神秘的なものに結びつく、という話があったが、そういう意外なもの同士の結びつきという点で、「知の独占は権力に関わるから、ある秘密性を帯びる。そして入るには入社式が必要なのである。」(p.71)という部分で、要するに大学やアカデミーにそういう秘密結社と関わりをもつ、という話が面白かった。「魔法から科学へ、というように、中世の錬金術から近代の科学が生れたことを考えれば、アカデミーと秘密結社の関係も特に不思議ではないかもしれない。」(同)らしい。最後に、中世の「医者」について、「医学においては、内海と外科医が差別さsれていた。内科医は古い伝統医学に固執し、それを唯一のものとして、外科医を一段低いものとしていた。外科は床屋やサンバ、民間の治療師などに属していた。」(p.75)だそうだ。今では区別なく「医者」とひとくくりにする中に、そこまで扱いの違うものが含まれている、というのが驚きだし、日本語では内科と外科、という体の内か外か、という分類をしただけだが、英語ではそもそもsurgeonとphysician(米ではinternist)とか全然違う単語を使う、というあたりとも関係しているのかもしれない、と思った。英語を教える時にはこういう捉え方の違い、というのも教えておくべきだろう、とも思った。(19/03/27)

  • 【由来】


    【期待したもの】
    ・このての本でトンデモじゃないのを読みたかった。
    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】

  • 世界には説明のつかない不思議な歴史が存在する。
    その歴史のほとんどが秘密結社によって作られたという本。
    何事にも秘密がある、と思えるから面白い。

  • あなたの知らない世界を覗き見ることが出来る本。

    とは言え、秘密結社は秘密であるだけに、古今東西の様々な本から存在の真偽や教義の内容について推測するしかないわけで、結局真相ははっきりわかりません、という印象を受けました(あの人はこう言ってて、この人はこう言ってて、といったぐあい)。
    しかし、初めて触れるには、大変面白い本だなと思いました。もっと興味を持った方は、もっと突っ込んで専門書をあたるようにということなのでしょう(もともと新書ってそういうものかも)。

    現代社会で秘密結社が再び流行しているのは、インターネットの普及にともなって、寝た子を起こすような事態になっているのでは?という説は、非常に興味深いと思いました。

  • 秘密結社、それは多くの人を魅きつけてやまないミステリー。

    本書は世界中の秘密結社を、古代から現代まで幅広く概観していく。
    本書に出てくる秘密結社のあまりの多さに、「本当に人間は昔から、秘密結社や陰謀論の類いが好きなんだな。」と思わずにはいられない。
    世界史をこうゆう変わった切り口から眺めて見るのも楽しい。

  • おなじみのフリー・メーソンやKKKはもちろん、ナチスやマフィアのように秘密結社らしくないものまで登場する。結局、秘密結社って何なのかという疑問には答えられてはいないのだか、世の中や人間性の色んな一面を考えるにはよい刺激になった。『ダ・ヴィンチ・コード』や『フーコーの振り子』の予習に役立ちそうだが、これらのネタバレが含まれているので、未読の人は要注意。

  • [ 内容 ]
    人はなぜ“秘密結社”に魅せられるのか?
    ヴィジュアル・カルチャー、インターネットの発達によって、見える表面と見えない背後の二重化が進んだ現代では、物事の背後にある秘密を垣間見たいという欲望が高まっている。
    古代密儀、テンプル騎士団、薔薇十字団、フリーメーソン、イルミナティ、KKK、ナチス、カルト、マフィア…。
    古代から中世、近代、二十世紀、現代に至るまで、秘密結社という「隠された視点」から世界史を読み直す。

    [ 目次 ]
    プロローグ―秘密結社の世界
    第1章 古代
    第2章 中世
    第3章 近代
    第4章 十九世紀
    第5章 二十世紀
    第6章 秘密結社の現代
    エピローグ

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 同じ著者による『ホモセクシャルの世界史』が面白かったので興味を持ちました。もちろん、フレーメーソンや薔薇十字団にも興味はあったのですが、思いかげず今日的な課題を含んでいることを知って、面白かったです。「秘密」というものは誰も知らなければ「秘密」になりえず、「そこになにかあるらしい」と人の心をそそるところに成立するんですね。あってないようなもの、それが秘密結社なのかもしれません。

  • 秘密結社は秘密であることを「明らかにして」初めて秘密結社になる、という指摘に笑ってしまう。本当に誰も知らなかったら陰謀論も成り立たないのだね。ピタゴラスに始まり、普通に見えるアカデミズムの中にも生きている秘密結社の精神の解説など、駆け足気味の記述だけれど面白い。

  • アメリカ旅行に行く前に、少しでも『KKK』について調べておこうと思って読み出した本。
    既存の体勢からの離脱こそが秘密結社創設への第一歩であり、個人こそが至高の秘密なのだと思う。

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著者プロフィール

美術評論家。1976年から平凡社『太陽』の編集長を務めた後、独立。幅広い分野で執筆を行う。

「2023年 『アジア・中東の装飾と文様』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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