ノモンハン事件―機密文書「検閲月報」が明かす虚実 (平凡社新書)

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著者 : 小林英夫
  • 平凡社 (2009年8月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582854831

ノモンハン事件―機密文書「検閲月報」が明かす虚実 (平凡社新書)の感想・レビュー・書評

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  • 以前より「ノモンハン事件」については知りたかった。あまりにも様々な結果情報が交錯していて、結局どうだったんだ?という話である。
    本書は事件そのものから、戦後の情報操作が仕組まれていく過程を1次資料を吟味しながら解き明かしていく。そして、「その後」にまで言及してある点において、新書ながら幅の広い考察となっている。
    戦った双方の死傷者数は甚大だが、わけても帝国陸軍の装備・作戦・兵站・情報の各面で劣っていた状況がわかり、あまつさえ総括なき状態が、その後の戦訓として残らなかった点に暗澹たる気分にさせてくれる。肉弾至上主義の前進攻撃至上主義!トップの無責任ぶりが悲惨な状態を産み出す典型ですね。ジューコフ将軍にかなうはずもない。
    歴史的にはその後のソ連の極東リスク排除に大きな意味を持った。

  • 2009年刊。著者は早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授。日中戦争のさなか、満州国西部国境で発生した日ソ間軍事衝突。それは、ソ機械化部隊に、実戦参加の関東軍の3割喪失(事実上の壊滅)とも7割喪失とも言われる帰結を招いた。本書は、漸く存在と内容が明らかになった関東憲兵隊の検閲月報を新資料として、当該ノモンハン事件に新たな光を当てる。検閲月報に関する引用を除けば、それほど新奇ではないが、当時の報道が事実とは程遠い内実でしかなかった点を再確認できる。惜しむらくは、ソ連の当時の報道内容にも言及がない点か。

  •  ソ連側・モンゴル側の研究や証言も踏まえた「ノモンハン事件」=ノモンハン・ハルハ河戦争の実相と、日本語の文脈で「ノモンハン戦争物語」がどのように作られていったかを追跡する。『出版警察報』が出て来ないのはやや理解に苦しむが、それでも、ノモンハン=ハルハ河戦争の実際の展開と、新聞報道との付き合わせ作業を行ったことはとても重要。シンプルだが、他の戦場をめぐっても、やっておくべき作業ではある。

     サブタイトルの『検閲月報』とは、旧満州で地中から掘り出された(!)関東軍憲兵隊作成の郵便・通信検閲を中心とする資料のことだが、現地ではほぼ実相に近い情報を持っていた人たちがいたにもかかわらず、検閲と報道統制によって、実相と乖離した戦争物語がかくも易々と流通してしまった、というのが何とも恐ろしい。メディアと情報をコントロールすれば、ヴァーチュアルなファンタジーの中に人々をまどろませておくことも可能なのだ。ソ連軍は、ノモンハン=ハルハ河戦争の教訓を「大祖国戦争」の勝利につなげたが、日本の側は、敗戦を糊塗し、あるいは一時的な劣勢か引き分けと言いくるめる言説空間の管理方法を学習した、と言えるのかも知れない。

     筆者の議論によれば、ノモンハン=ハルハ河戦争のポイントは以下の通り。

    1 「満洲国」建国当初から、ソ満・蒙満国境紛争は頻発していた。
    2 関東軍内部では、国境付近の戦闘について、国境を通じての攻撃も含め、現地司令官の判断に一任、関東軍中央がそれを追認するような「処理要綱」が作られていた。
    3 ノモンハン=ハルハ河戦争は、日中戦争の動向と深くかかわっていた。戦争を指揮した服部卓四郎・辻政信は、この戦争に日本軍が勝利することで、天津租界をめぐる日英交渉を有利に進められると考えていた。
    4 関東軍は、ソ連軍はスターリンの粛清で弱体化したと見ていたが、シベリア鉄道を活用した兵站が機能、西方から有力な機械化師団や航空戦力が輸送されたことで、ソ連軍の戦力は著しく優位となった。
    5 ノモンハンの停戦協定直後、ソ連軍はポーランドに侵攻。いっぽう、関東軍は現地指揮官に責任を転嫁し、関東軍中央幕僚の責任追及をまぬかれようとした。

  • [ 内容 ]
    ノモンハンの虚実入りまじった事件像は、どのようにして輪郭が作られたか―。
    当時の新聞報道、郵便検閲の実態、作戦当事者の手記、回想記などを検証し、七〇年前の事件が今に問いかける意味を考える。
    発掘された関東憲兵隊の検閲資料から、あぶり出される事件の真相。

    [ 目次 ]
    序章 最果ての地ノモンハン
    第1章 国境紛争の歴史
    第2章 ノモンハン事件戦史
    第3章 検閲から見るノモンハン事件
    第4章 一人歩きしていく事件の虚像
    終章 事件があらためて問いかけるもの

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 岩波新書の「ノモンハン戦争」よりもこちらの方が、ノモンハン事件に絞って記述されているぶん、事件そのものがどういうものだったのかということはわかりやすいです。それだけでなく、全体的に文章もすーっと頭に入ってくる感じです。

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ノモンハン事件―機密文書「検閲月報」が明かす虚実 (平凡社新書)の作品紹介

ノモンハンの虚実入りまじった事件像は、どのようにして輪郭が作られたか-。当時の新聞報道、郵便検閲の実態、作戦当事者の手記、回想記などを検証し、七〇年前の事件が今に問いかける意味を考える。発掘された関東憲兵隊の検閲資料から、あぶり出される事件の真相。

ノモンハン事件―機密文書「検閲月報」が明かす虚実 (平凡社新書)はこんな本です

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