短歌で読む 昭和感情史 (平凡社新書)

著者 :
  • 平凡社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582856194

作品紹介・あらすじ

あの戦争の時代は、短歌の時代でもあった。夫を戦地へ送る"せつなさ"、故郷の妻や子への"いとおしさ"、戦局や生活のなかでの"よろこび"、そして"いかり"-。多くの人々が、心のつぶやきを、叫びを、短歌に託し、現代の私たちに残してくれた。歴史からこぼれ落ちた「感情」が、短歌とともに鮮やかに甦る。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和感情史とあるがほぼアジア・太平洋戦争史だ。
    このところ読んでいる日本の近現代史にうまく重なってとても面白く読んだ。
    戦中戦後に詠まれた短歌。庶民、軍人、文人、学者らがあの戦争をどう捉えていたか、庶民の暮らし、戦場での暮らし、戦争の実際が描かれている。
    戦中世代がいなくなってはもうこんな本が編まれることは無いのだろうか。

  • 太平洋戦争を、短歌から描き出していこうという作品である。

  • 大東亜戦争期に詠まれた短歌と共に時代の感情を描こうとするが、著者の意図とは違い、浮き彫りになるのは短歌と言う形式が日記化する過程である。しかし、所々で、人麻呂以来の時代精神の極まりが歌われる詠があった。それは生活詠とは別の次元で歌われた歌である。

  • かぎりなき瓦礫ひろがる焼原のその片空をはける紅【くれない】
       磯江 朝子

     平成生まれの若者たちは、明治・大正・昭和を一括して「昔」と片付けてしまう。やむなきこととはいえ、歴史から〈生〉を学ぶためにも、菅野匡夫「短歌で読む 昭和感情史」の一読を勧めたい。
     著者の菅野は、1979~80年刊のアンソロジー「昭和萬葉集」編纂にあたった詩人。その収録歌も引用しながら、太平洋戦争敗戦までの昭和史を解説した新書だ。
     昭和の幕開けを象徴するのは、芥川龍之介の自死。「ぼんやりした不安」という言葉を最期に残している。

      ワガ門【カド】ノ薄クラガリニ人ノヰテアクビセルニモ恐ルル我ハ 
        芥川龍之介

     昭和という元号は、「書経」の「百姓昭明、協和萬邦」(人々は聡明であり、国々は仲がよい)に拠る。しかし、けっして字義通りの時代だったわけではない。金融恐慌、労働争議、さらに長きに渡った戦争。
     とはいえ、そのなかに生活者一人一人の日々の暮らしがあった。

     葱買ひに行く我が夫よ拇指【おやゆび】の足袋の破れに墨塗りて行け
        平林たい子

     夫の「足袋」がすり切れるほど物資に困窮しているのだが、このプロレタリア作家はユーモアたっぷりに切り返している。
     掲出歌は、空襲に遭った都市の姿だろう。焼夷弾爆撃で街は「瓦礫」ばかりとなった。それを見守るように広がる夕焼け。その「紅」に、ふと顔を上げる人々。新たな明日に向けて紅潮する生活者の感情は、今日の私たちにも共有できるはずだ。

    (2012年2月12日掲載)

  • www.geocities.jp/shaktiyh/kanjo/
    に資料があるとのこと。

    主に写真,新聞の記事で、一部ラジオ放送のファイルへのURLだった。

    昭和の時代の中で,短歌にどう凝集できたかの評価は、
    事後100年くらいしないと分からないかもしれない。

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