- Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582856439
作品紹介・あらすじ
近代国家主義の権化たるシオニズムによって建国されたイスラエルは、正統的なユダヤ教徒たちの国ではない。欧米主導で形成された虚構の歴史を、"ディアスポラ"の歴史学者が明快に説く。
感想・レビュー・書評
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読みにくい。ワイの読解力に原因はあるかもしれないけど。
翻訳なのか書き手の癖のある書き方が原因かわからないが、難しくてギブアップした。テーマは興味あるんだけど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
[ユダヤからの乖離として]イスラエルとその主な建国理念の一つとされるシオニズムを、ユダヤ教からの逸脱として厳しく指弾する作品。大きな反響を巻き起こした『トーラーの名において』の普及版とも位置付けられる一冊です。著者は、モントリオール大学で歴史学を講じるヤコヴ・M・ラブキン。訳者は、フランス語文学を特に専門とする菅野賢治。
切れ味及び舌鋒鋭い作品。いわゆる「新・歴史家」の系譜に連なり、シオニズムを徹底的に脱文脈化した考え方がどういったものかを知ることができるかと思います(ただこの作品だけを読んで「イスラエル知れり」とするのは非常に「危険」なことのように感じられます)。なお、新書という手に取りやすいスタイルではありますが、使われている語句や内容はイスラエルやユダヤ教について若干程度の知識がないと読むのが辛く感じられてしまうかもしれませんのでご留意を。
〜シオニズムとユダヤ教のあいだには中立の立場も妥協点も見出せそうにありません。その両者のあいだには、そもそもの出発点において越えがたい深淵が横たわっているからです。〜
イスラエルに対する見方は国際社会に対する見方の一端を映し出すんだなと再認識☆5つ -
ユダヤ教徒がすべてシオニズムに共感している訳ではないのか。全く無知だった。世界史のことをもう少し勉強してからもう一度読みたい。
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原題:Au nom de la Torah : Une histoire de l'opposition juive au sionisme
著者:Yakov M. Rabkin(科学史、ロシア史、ユダヤ史)
【感想】
著者は、現状のイスラエルに厳しい目を向けています。パレスチナとの摩擦だけではありません。
ユダヤのナショナリズムがシオニズムとあわさり(そして様々な要素とも合流し)実際の建国に繋がっていく流れは私も知っていましたが、シオニズム自体に(ユダヤ教との整合性という)問題があるという指摘は初耳でした。
政治面の問題も大きなテーマで、アメリカとの連携を経てイスラエルが軍事大国となってしまっている点や、パレスチナへの帝国主義的な態度、中東における不和なども再確認しました。
なにより、ユダヤ教義とシオニズムが、実は不倶戴天であるという本書の主張には、説得力を感じました。
本書から離れてイスラエル側の意見も考慮すべきですが、「イスラエルの意見が世界にあまねくユダヤ人を代表しているわけではない」ということは、念頭に置いときたい。これは一見当然のことですが、日本でのカジュアルな議論だと、たまに「シオニズムに反対するユダヤ人」の存在が忘れられているので。
【内容紹介】
近代国家主義の権化たるシオニズムによって建国されたイスラエルは、正統的なユダヤ教徒たちの国ではない。欧米主導で形成された虚構の歴史を、〈ディアスポラ〉の歴史学者が明快に説く。
畏れを知らない軍事大国、植民地主義の最前線。古代イスラエルと今日のイスラエル国は別物である。
<http://www.heibonsha.co.jp/book/b163591.html>
【目次】
目次 [003-007]
凡例 [008]
第一章 今日のイスラエル 009
基本情報/イスラエルと西洋/ナショナリズムの典型かつ例外/イデオロギー的な「もろさ」
第二章 ヨーロッパのユダヤ教徒とユダヤ人──平等と絶滅のはざまで 023
市民としての〈解放〉/帝政ロシアの状況/ポグロムとテロリズム/瀞待と恥辱/異なる「民」概念/非宗教的ユダヤ人の誕生/反ユダヤ主義(反セム主義)とは何か/非宗教化(世俗化)とは何か
第三章 シオニズムのキリスト教的起源 049
言葉以前のシオニズム/キリスト教と帝国主義の接合/聖書の政治的、歴史的利用/存在はせず、ひたすら約束する神
第四章 シオニズムの企図 061
シオニズムが突き付ける問い/同化ユダヤ人の苛立ち/すべてに優先する「民族」の次元/二重の忠誠心(二重国籍)の問題/ヨーロッパ式ナショナリズムの模倣/「神なき宗教」――宗教の機能主義的利用/植民地主義としてのシオニズム/入植者かつ先住者?/領土のシオニズム化=非アラブ化/専守防衛のエートスから先制攻撃のエートスへ/新しい言語の創出/忘却の必要性/〈聖なる言語〉の非宗教化/「イスラエル国」の意味/むしろ「イスラエル語」か/「土地」=「母」のイメージ/新しい人間の創出/他者への気つかい/移民の再教育/ユダヤ教への敵意/優生学と社会ダーウィニズム/踏み出せない伝統再接近への一歩/ユダヤ人とは誰のことか
第五章 シオニスト国家の形成と維持 127
政治・軍事的側面/流入の波/分割にいたるまで/独立宣言をめぐる状況/イスラエル政治の一貫性/アラブ系ユダヤ人の境遇/アーズフ人ユダヤ人ユダヤ教徒/文化的ジェノサイド
第六章 ユダヤ教の伝統にとって〈イスラエルの地〉が意味するもの 151
「選ばれてあること」の意味/〈聖地〉に住むことの危険/流謫〔るたく〕とは何か/三つの誓い/神慮としての流謫、帰還/帰還の祈り――二つ感受性/ふたたびユダヤ人とは誰のことか/歴史と集団記憶/歴史への回帰と〈かの地〉への回帰/歴史の脱=神話化
第七章 ナチスによるジェノサイド、その記憶と教訓 185
第二次大戦とシオニズム/救出者の「選抜」/シオニズムとナチズム/「ショアーの日」/ユダヤ人ジェノサイドの教育効果/問い直しの気運/正統派ユダヤ教における「大災厄」解釈/アムラム・ブロイの「ネトゥレイ・カルタ」/神は見捨てていない
第八章 シオニズムに対するユダヤ世界内部からの抵抗 213
見落とされてきた抵抗の潮流/イスラエルの外における伝統的ユダヤ教からの抵抗/〈聖地〉における伝統的ユダヤ教からの抵抗/民族ユダヤ教に抗して/ユダヤ教・反シオニズム思想の伝播と受容/改革派ユダヤ教からの抵抗/敵の一味か、不人気な預言者か/シオニズムに対する政治・社会的抵抗/ヤコブ・イスラエル・ド・ハーンの活動/ユダヤ教の反戦主義/預言思想の伝統/左翼系の反シオニズム/伝統的ユダヤ教における暴力と平和/武力行使への抵抗/ヤコブ・イスラエル・ド・ハーンの暗殺/過去の犠牲と眼前の暴力/スピルバーグの「ミュンヘン」/ユダヤ世界の反シオニズムが問いかけるもの
第九章 変貌するイスラエル社会とユダヤ共同体 279
左も右もなく/犠牲者感情/イスラエルの公民宗教/イスラエルを後にする人々/ポスト=シオニズムの動向/冷静な議論を不可能にするもの/イスラエル主義/ユダヤ世界を引き裂くイスラエル国の存在
第十章 国際的視点から 303
イスラエルの対外関係/「もろさ」の感情/一国家構想/イスラエルと国際世論/反アラブ、反イスラームの本質主義/アメリカの「イスラエル化」/イスラエルをありのままに見る
訳者あとがき(二〇一二年三月 菅野賢治) [325-328]
用語集 [329-332] -
イスラエルの国家としての特異性は国境に関するコンセンサスの不在。
ユダヤ人問題なるもの自体、純粋なるヨーロッパの産物だった。
ユダヤ教徒は古代ローマの時代からヨーロッパに居住していた。
ユダヤ人をシオニズムに向かわせたのは、多くの場合、恥の感情、傷つけられた尊厳の感覚、周囲から敬意を取り付けたいという願望。
民族のビジョンというためならば解放の価値さえ毀損しかねないシオニズムの姿勢はナチスによるユダヤ人迫害をめぐって、のっぴきならない議論を提起している、つまりシオニズムは国家の建設以前からすでに国家事由を全てに優先させていたのではないかという疑問が浮上した。
ユダヤしはすべからくシオニズムをその終着点とすべしという目的論としてユダヤ人の歴史を掲示しようとする政治的な著作は無数に存在する。
一部の研究書ではシオニズム運動が対象者の選抜を行っていた、つまり政治ないし経済の観点からシオニズムの企図に積極的な貢献をなしうる人々のみをパレスチナに受け入れたという批判もされている。
イスラエルの公立小中学校の歴史教育では課程の15%がナチスによるジェノサイドに割り当てられる。
ユダヤ教徒の反シオニストたちは、ユダヤの統一性なるスローガンをシオニズム的であると同時に反ユダヤ主義的なものとして退ける。
ユダヤ人の使命は義を守ることであって、敵と同じように行動することじゃないんだ。
イスラエル在住の多くのユダヤ人が、その出自いかんに関わらず、自分たちのことをナチスに勝るとも劣らぬ恒常性と非合理性を備えたアラブ人の暴力に身をさらしていると考えている。 -
本来のユダヤ教とシオニズムの関係が、本来の神道と国家神道の関係とダブって見えてしまって。
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ユダヤ人=イスラエルではなく、ユダヤ人=シオニストでもないということがよくわかった。
むしろキリスト教的な部分がある。
ユダヤ教に基づくのであればあのような国家はあり得ないということらしい。