- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582856484
作品紹介・あらすじ
地球に生物が誕生しておよそ四〇億年。だが、現生人類の誕生からは、まだ二〇万年しかたっていない。一日に換算すると、わずか五秒の間に、人類は火を使い、文明を築き、高度に発達した現代社会を創りだしたことになる。なぜこれほどまでに早く、人類は進化できたのか。近年、見直しの機運も出てきたラマルク説をもとに解き明かす。
感想・レビュー・書評
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副題が「ラマルク説で読み解く」。勉強用。
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新書文庫
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生物学と歴史学を混ぜたような本である。
人類の誕生と進化について、動物としての人類と文化文明の担い手としての人類が元来不可分な存在であるということで、人類の二面性を総括したというのが著者の言い分である。前半部分は「人類の進化をよく理解できる」ラマルクの進化論を論じ、後半は文明社会の牽引車となった「天才」の役割を論じている。
ラマルクの進化論が正しいかどうかは置くとして、進化というものがダーウィンならびにネオダーウィニスト達の論だけでは解決できなと思うし生物の遺伝の仕組みがDNAだけでは決定されないものではあるとは思う。このあたりはもう少し考察を深めたい部分ではある。
人類が自然の摂理の外へ出たとする部分は読ませるところがある。社会学者フロムの説として「人類が殺人をするのは持って生まれた本能によるものではなく、進化した知能による「動機付け」によるものだ」という話は面白い。
霊長類が新人までたどり着いた早い時期から人類は真・善・美を追究したとする。四季の変化を捉える、死者を悼む洞窟内の壁画等早くからその兆候を示すものがあるとする。
文明社会の進化は、先ずはギリシャ文明が起こし、その後停滞した文明をルネサンスによるギリシャ文明復興の運動にて次の段階に進んだ。その後もバッハ、モーツアルトの音楽、カルノー父子、ミケランジェロ等々の天才が文明を次の高見に引き上げたとするのである。否定的な見解を示すものの優生学の話も挟み込まれているところに著者の考え方の傾向性を見るような気もする。
最後の「こころ」の問題を述べているが、他者を思いやる「こころ」と言うような生物学と言うより文系な意味の「こころ」に過ぎないように思われる。
やはり生物学的な進化と歴史的な進歩を繋ぐためには、もっと意識とか思考といった脳の働きを解明しないと前半と後半を結びつけるのは難しいのではないかと考える。
特に最後の方は、老人の繰り言に近い話になっている。後半部分はもう少し行動科学的な側面から人類の進化を語って欲しところである。着想としては面白い本ではあるが、論旨の流れはチョット違うのではないかという印象を持った。 -
資料番号:011479722
請求記号:469.2ス -
幅広い知識を持っていることは素晴らしいことであるが、どうしても広く浅くなってしまうことが多い。
本書は、「人類の誕生から、現代の文明社会にいたる、長い歴史をまとめて俯瞰する解説書」という意欲を語っているが、やはり「広く浅く」としか言い様がないと思った。
「人類の進化」についての知見は、最新の知識が散りばめられているが、根拠の薄い断定が多いように思える。「発情期と体毛を失った理由」などは、誰しもが興味と疑問を抱く人類学の謎ではあるが、いまだ確定された学説がない中での断定口調は、むしろ「エッセイ」に向いているのではないか。
本書は「人類の進化」と「文明社会の進化」との構成になっているが、この二つがどのように関連するのか、読んでもよくわからない。
著者のはば広い知識には驚くが、深さにはちょっと疑問を抱く。本書は残念な本であると思った。 -
何が書きたかったのか、よくわからなかった。。。タイトルと内容に、非常に乖離がみられるというか、なんというか・・・。
まず、ダーウィンの悪口に始まり、ラマルクの用不用説こそ進化を説明できる、と豪語するが、ダーウィン憎しのあまり、ラマルクの進化論の優位性の説明が足りないような・・・読者が膝を打つような、ラマルク押しがあれば面白かったのに・・・。ダーウィン進化論のダメさをあげつらなう際の、フリーダムな論調自体は、結構面白かったのだけれど・・・週刊誌みたいで。
それから、主にヨーロッパ人の悪行の数々をあげつらね、人類の野蛮性に目を向ける。そして、天才たちの偉業のピックアップ・・・だけど、なんだろうな、学術説明から離れると、急に文章が散漫とするというか・・・。
そして唐突に生物の学術的な話に戻り、最後は「最近の若者は」的小言で終わる。
他の進化論の本では、大体ダーウィンが神にも等しく、ダーウィンを疑う、などということはあまりないので、そういう意味では新鮮であった。