新書772ゴーストライター論 (平凡社新書 772)

著者 :
  • 平凡社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582857726

感想・レビュー・書評

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  • ゴーストライターを当事者として話す本
    どういう流れなのか、モチベーションは何かなどを語っていく。仕事として見ると面白い。
    実際いい考えを持つ人が文章もうまいかというとそうではないので、こういう役割の人は必要だと思う。後は世間の捉え方をどうするか。

    インタビューしながら話を作る、人生を聞いてデザインする、
    情報集め①インタビュー②資料③周辺取材④現場取材
    能力①信頼される、話を聞ける②原稿力、言語化力③読者目線
    契約をきちんとしておく、利益配分、名義

  •  佐村河内守のゴーストライター騒動に火をつけたライターでもある著者が、作曲ではなく書籍のゴーストライターについてまとめた本。
     じつは著者自身が書籍のゴーストライター経験も豊富な人であり、佐村河内騒動に際しては知人から、「ゴーストライターがゴーストライティングの批判をしている」と揶揄されたという。

     だが、出版社から依頼を受けて執筆する一般書のゴーストと、関係者も欺いた芸術作品のゴーストは次元の違う話であり、著者が佐村河内を批判する本(『ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌』)を書いたことは、矛盾でもなんでもない。

     本書も「佐村河内事件の一連の報道のスピンアウト企画として生まれてきた」(あとがき)ものだが、事件うんぬんを抜きにして、ゴーストライター論として読み応えがある。

     本書に最も近い類書は、当ブログでも取り上げた『ビジネス書の9割はゴーストライター』(吉田典史)であろう。本書にも、同書についての言及がある。
     吉田の本はゴーストライターのマイナス面に強く光が当てられていたのに対し、本書は逆にゴーストライターのプラス面――仕事のやりがい・意義・醍醐味に光が当てられている。

     「ゴーストライターが文章を書いているなんて、読者に対する詐欺行為だ!」と思っている向き、ゴーストライターにマイナスイメージしかない向きには、ぜひ本書を読んでほしい。印象が一変するはずだ。

     それに、ゴーストライターにかぎらず、人物ノンフィクションについての著者の方法論を開陳した「ライター入門」としても読める内容である。

     ゴースト本の名作『成りあがり』(矢沢永吉の話を糸井重里がまとめた)を生んだ編集者にインタビューするなど、取材部分にもかなり厚みがある。「論」というより、ゴーストライターの舞台裏をさまざまな角度から探ったノンフィクションという趣。

     著者は、「ゴーストライター」という呼称そのものがネガティブでよくないとして、「チームライティング」という新しい呼称を提唱している。(名義上の)著者・ライター・編集者の三者が「チーム」となって本を作り上げていくやり方、という意味だ。
     上阪徹は同様の理由から、「ブックライター」(「書籍の聞き書きライター」の意)という呼称を提唱している。私も、「ゴーストライターではなく、『文章化のアウトソーシング』と呼べばいいのだ」と書いたことがある。

     呼び名はどうあれ、今後もゴーストライターの需要は減ることはないだろうから、ライター及びライター志望者なら読んで損はない本だ。

     複数の弁護士に取材したゴースト仕事の著作権についての考察も、興味深い。たとえゴースト仕事であっても、原稿の著作権は第一義的にはライターにあると考えられるという(!)。

    《法律的に言えば、ゴーストライティングの現場で発生する著作権は、まず原稿を書いたライターにあり、それを何らかの契約によって著者に移すという流れになる。》

     ゴースト本を多く手がけてきた者として、勇気づけられた。「私(名義上の著者)の話を文章にしただけなんだから、ライターに著作権なんて……」と軽んじられた経験も、まあ、皆無ではないからだ。

     もう一つ勇気づけられたのは、著者が一貫して“ゴーストライターは高いスキルを要求される仕事だ”と強調している点。
     たとえば、ゴースト経験も豊富なベテランライター・永江朗の、次のようなコメントが紹介されている。

    「ある大学で教えていたときに、『ライターになりたいのでゴーストライターの仕事でも紹介していただけませんか』とやってきた学生がいて、怒ってしまいました。『ゴーストライターでも』とは何か、と。著者から魅力的な言葉を聞き出してそれを読める文章にすることを舐めてはいけない。それには高度なスキルが必要なんだと諭しました」

     このコメントには快哉を叫んだ。「ゴーストライターなんて、どうせろくに仕事のない三流ライターがやってるに違いない。一流なら署名原稿だけで食っていけるはずだから」というネガティブ・イメージがあって、常々反発を覚えていたからだ。 

     まあたしかに、署名原稿だけで食っているライター(そういう人は普通「ライター」ではなく「作家」と呼ばれるが)に比べたら「三流」かもしれないが、ゴーストライターのスキルもそう馬鹿にしたものではないのだ。

  • すべては「ゴーストライター」というネーミングが悪い。この本で述べられているチームライティングとか、ブックラーターという呼び方を定着させないと、いつまでたってもゴースト=悪のイメージはなくならないだろうなぁ。

著者プロフィール

1960年埼玉県入間市生まれ。信州大学人文学部卒業。96年『ライオンの夢、コンデ・コマ=前田光世伝』にて第三回小学館ノンフィクション賞優秀賞受賞。2012年度『ピアノはともだち、奇跡のピアニスト辻井伸行の秘密』が青少年読書感想文全国コンクール課題図書選定。14年「佐村河内守事件」報道により、第45回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)受賞。「異文化」「表現者」「アウトロー」をテーマに、様々なジャンルの主人公を追い続けている。

「2017年 『成功する里山ビジネス ダウンシフトという選択 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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