移民たちの「満州」: 満蒙開拓団の虚と実 (平凡社新書)

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著者 : 二松啓紀
  • 平凡社 (2015年7月17日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582857825

移民たちの「満州」: 満蒙開拓団の虚と実 (平凡社新書)の感想・レビュー・書評

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  • 満蒙開拓団といえば、関東軍が真っ先に引き上げた後の民間人の引き揚げの苦労。老人と女性と子供だけで飢え、寒さ、病、そして略奪と日本人を狙った襲撃。
    また、壮年男子のほとんどがシベリアに連行され抑留されたという。
    要するに終戦以降の出来事くらいしか知らなかった。

    なぜ、大勢の日本人が満州に行くことになったのか。

    最初は国策だった。
    疲弊した農村。
    それが5.15事件や2.26事件を生んだ。
    狭い耕地に大勢の農民。
    どんなに働いても貧困から抜け出すことができない。
    それならば、大陸の広大な土地を耕し、自作農として生きていけばいい。

    国は、すでに満州人、中国人が住んでいる土地を買い叩いて追い出し、日本人の受け入れ準備をする。
    これではすでに開拓ではない。移民だ。
    が、応じる日本人は少なかった。
    そりゃそうだ。
    どうせ苦労するのなら、先祖代々守りぬいた土地のほうがいい。

    次には地方自治体が動く。
    国策を錦の御旗に、天皇の御為に、貧しい農家を説得する。
    国からの財政補助、飛び地としての領土という旨味がそこにはあった。

    しかしそれでも、多くは動かなかった、
    それが戦争末期に大挙して満洲へ行くことになる。
    それはなぜか。

    “当時の人たちの感覚からすれば、渡満は一つの選択肢だった。満州には空襲もなければ、本土決戦の不安もなかった。日ソ中立条約があり、無敵の関東軍がいる。そんな安全神話を信じ切っていた。”

    この悲劇はなぜ大きな声で語り継がれないのか。
    そこには、この戦争で日本人は加害者であったという負い目がある。

    シベリア抑留者は明らかに捕虜であったのに、なぜ抑留者というのか。
    捕虜であれば、強制労働に対する給与の支払いなどの最低限の権利が保障されるのに、なぜ敢えて抑留者であるのか。
    「生きて虜囚の辱めを受けず」という呪縛から抜けられなかった。
    あくまでも面子だけにこだわった呼び方なのだ。

    時代というものにどうしようもなく流されていった先は、地獄だった。
    何も知らずにつれて行かれた子どもたちの多くは、日本に戻ってくることはできなかった。
    戻ってきた人たちの心にも、大きな傷が残った。
    それを忘れてはいけない。

  • フォトリーディング&高速リーディング。高速を4回繰り返して(最後は熟読も含め)読了とする。あと一回下記の付箋箇所のために高速するので計5回。

    移民が国策であり、地方自治体にも利権であったことが知れた。しかし強制力はそれほどなく、戦後「国策」と主張することで責任転嫁しているのではないかと思った。

    帰国した人々の体験談は重いものであるにもかかわらず、ほぼすべての人々が満州の豊かさをなつかしく思うあたり、戦後世代である私のイメージを覆された思いがした。悲惨な体験はむしろ逃避行と抑留生活。敗戦が満州国のイメージを暗くしているが、満州に希望のイメージがあった。

    開拓民は現地民を使用した農場経営をした。殆ど悔恨はしなかったようだ。関東軍が買いたたいた土地を、日本人に分配したので、敗戦と同時に恨みが噴出した形になった。

    以下に、最後の高速リーディングで付箋を貼った個所を要約する:

    数が多いので省略。

  • 【目次】
    目次 [003-007]
    満州国地図 008

    序章  最も身近な戦争体験としての「満州」 009
    消えた同級生/戦争を知らない世代の「戦争」体験/満蒙開拓団の資料を託されて

    第一章 満州国の誕生と大量移民の幕開け 021
    満州事変から満州国誕生へ/五・一五事件と満州移民/日満議定書と平頂山事件/第一次武装移民とリットン調査団/第二次武装移民と依蘭事変/「満州移民のトーチカ」高橋是清の死/大量送出の時代へ

    第二章 日中戦争と満州移民 045
    満蒙開拓青少年義勇軍/移民の募集担当だった水上勉/教員が教え子を戦場へ/少年義勇軍の悲劇/「分村移民は精神運動」/分村計画の先駆け、宮城県南郷村/「優良村」だった山形県大和村/分村移民、三つのモデル/「移民」から「開拓民」へ

    第三章 模範村「大日向村」の誕生 071
    『蒼氓』で描かれた海外移民/ブラジル移民から満州移民へ/「名ばかりの暗い日陰の村」/農村問題の解決策として/現実の大日向村/小説に描かれなかった疑獄事件/分村移民のその後/島木健作の見た大日向村/「時局便乗小説」

    第四章 形骸化する満蒙開拓事業 097
    移民に対する負のイメージ/立ち消えた京都府の分村移民計画/京都府の視察団が満州大日向村へ/「国策」と「天皇」を御旗に/数合わせに終始した机上の計画/「成功」を装う満州天田郷建設/良識ある反対派を駆逐/「満人」に対する優越感/集落の割り当てから個人・家族選抜へ/継続こそが目的に/京都府内唯一の「模範」/波紋が大きかった高知県

    第五章 戦争末期の満州と満蒙開拓団 129
    都市部の転業者開拓団/天田郷開拓団は新聞でいかに報じられたか/京都市の平安郷開拓団/「満州に来るな」/戦禍の影すらない平和な日々/ソ連参戦と逃げ出した日本人官僚/開拓地を玉砕覚悟で死守すべし/玉音放送と松花江の惨劇/敗戦後も戦禍が続く

    第六章 日本人の大量難民と収容所 159
    傀儡帝国の崩壊/麻山の集団自決と葛根廟の大量虐殺/対照的な運命をたどった二つの開拓団/ハルビンの花園収容所/満州で最大規模だった新香坊収容所/過半数が死亡した伊漢通収容所/一五万人の難民が押し寄せた奉天/都市の居留民が見た難民収容所

    第七章 引き揚げと戦後開拓──満州の記憶 195
    東西冷戦が反映した引揚事業/日本人帰国の報に募る焦燥感/封じ込められた満州の記憶/日本人女性のための「秘密病院」/満蒙開拓の焼き直しだった戦後開拓/満州引揚者が再び京都の入植地へ/軽井沢の「大日向」/大日向を詠んだ御製/加藤完治と橋本傳左衛門のその後

    第八章 一八歳のシベリア抑留──もう一つの収容所 225
    消えた「アジア最強」の関東軍/史上最大の拉致事件/シベリアの強制収容所/初めての冬に三万人が死亡/帰国のための思想改造/蒼く澄み切った舞鶴の海

    終章 消えない「満州」の残像 251
    満州移民とは何だったのか/地方の裁量と責任/混在する加害と被害/今も続く「満州」


    あとがき(二〇一五年四月二〇日 すべての戦争犠牲者に捧ぐ 二松啓紀) [261-262]
    参考文献・資料 [263-269]
    関連年表 [270-273]

  • 満州開拓に関する概説書。満州移民が発生する大きな原因を作ったのは地方自治体。棄民としか言いようのない政策だ。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記はこちらに書きました。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=5618

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