- Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582857849
感想・レビュー・書評
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「社会は複雑である」っていうわりと当たり前のことを大半の経済学者は認めたがらないので、既存の経済学で満足できない人はポランニーを学んでみるのがいいと思います。
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良き社会とは、自分の社会を新たに創出していく自由(社会的自由)を最大にするため、市場(経済) ・再分配(政治) ・ 互酬(共同社会)がバランスよく機能する倫理的社会主義のこと。
義務や責任から自由(免責の自由)ではなく、義務や責任を担うことによって自由になる(自己負担の自由)。社会的に結びついていること。他人との連帯が停止する地点ではなく、社会的存在の逃れられない責任を我が身に引き受ける地点。
経済的利害のみでは多様性が消失し、社会的自由が経済的または宗教的自由で解消されてしまうか、政治的自由の抑圧が生じる。 -
副題は「ポスト新自由主義時代の思想」。よってこれは経済学入門なのか思想概説書なのかという疑問がわきおこる。この疑問こそが良く言えばポランニーの経済学に留まらない、政治学・社会学・人類学等々を盛り込んだ学際的カバー範囲の広さ、悪く言えば掴みどころのなさと分かりにくさを示している。
内容的にはとても「入門」とは思えないほど専門性が高く(これほど注と索引が豊富で参考文献も多大な新書は見たことがない)、大変に読み応えがある。昨今話題の『人新世の「資本論」 』に何か引っかかるものを感じる人であれば、読んで損はないというか、必読の書であると思う。 -
感想:
カール・ポランニーの議論の重要なエッセンスを凝縮した新書。
特に、資本主義の誕生や、誕生による伝統的社会への影響の考察が面白い。
今では当たり前のように、地方や村社会の解体が社会問題として叫ばれているが、彼がこの問題を最初に提議している。
ポスト資本主義社会を考えるにあたり、すごく参考になる。 -
すごく面白かった。
市場がすべてを解決してくれるという経済的自由主義に対し、ポランニーがいかに格闘したかということがよくわかる。『大転換』でポランニーは、経済的自由主義は実のところ国家的介入によって成り立っており、さらにそのような経済的自由主義は、貧困や不平等や文化破壊を引き起こし、ファシズムへの道を切り開いたとする。マルサスを起点とするリップマンなどの経済的自由主義者は、社会政策こそが貧困を引き起こすという理解を示しているが、それは間違いだとポランニーはいう。この点、現在の日本でも「自己責任論」の名のもとに、リップマン的な経済的自由主義者の闊歩を許しているなと思った。
また、経済的自由主義者のいう「自由」(つまり市場にすべてを任せ、人間はその上で「自由」に行動する)は、社会を結局ファシズムへと導く(p.240)。そうならないためにポランニーは「社会的自由」が重要だという。つまり「義務と責任を担うことによって自由だ」ということである(p.241)。安い食事ができるのは、その背後で奴隷的な労働をさせられちる人たちがいる、ということに気がつく、ということだろうか。
結局ポランニーの社会主義は、市場を民主主義に従属させ、複雑な社会を「諸個人間の人間関係」すなわち責任と義務への自由を担う諸個人からなる互酬的非契約関係として構築された組織に変革する努力を不可避とするものだという(p.265)。言うは易し行うは難しだが、そういう社会に僕も魅力を感じる。 -
ポランニーの自由の概念が独自であったことがわかった。責任を通しての自由を実現するために国家は何をすべきか,それを考えていきたいと思った。
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現代的意味が読み解かれていて、興味深い。資本主義の中での自由主義の限界と共産主義では克服できない市場メカニズムの限界をポランニーが批判していたことは知らずにいました。