新書821伊勢と出雲 (平凡社新書 821)

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 84
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582858211

感想・レビュー・書評

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  • 昨日の昼過ぎから読み始めて、今日の夕方まで。
    新書一冊にどれだけ時間がかかるんだ!っていうくらい苦戦した。
    伊勢について、本当に何も知らない自分に愕然。

    そもそもこの本、初心者向けじゃなかったわ。
    伊勢の内宮の禰宜(ねぎ)荒木田一門について書いてあるのを、私は「荒木田」一門と読んでいたのだけど、読み進むと荒木田二門が出てきた。
    つまり、「荒木田一門」と「荒木田二門」というのがあるらしいのだ。

    そもそも伊勢といえば、伊勢神宮。
    伊勢神宮といえば皇室の氏神が祀(まつ)られていて、皇室の未婚女性が斎宮になるなど、皇室に縁の深い場所。
    その伊勢に、それ以前より朝鮮半島からの渡来人が住んでいて、宗教施設が多く残されているなんて思いもしなかった。
    新羅からの渡来人にゆかりの場所が、新羅から白木、白城、などに馴化し、白木神社が白髭神社などに変わり、すっかり日本の風景になじんでしまっているのだそうだ。

    出雲については、この間『古事記』と『日本書紀』と『出雲国風土記』を読み比べた本を読んだばかりなので、多少はまだ理解できる。
    国神である大国主が、天の神・アマテラスの弟、スサノヲに国譲りをする話。
    この時大国主の子である建御名方神(たけみなかたのかみ)が抵抗を試みるも、逆に追い詰められて諏訪に逃げ込み、それが諏訪大社の来歴となっているが、伊勢にも伊勢津彦という神がいて、天日別命(あめのひわけのみこと)に追われて信濃に逃げたという話が残っている。
    伊勢の民は出雲から流れてきたのではないか、という説もあるらしい。

    共通点としてはもうひとつ。
    どちらも製鉄の高い技術を持っていたらしいのだ。
    これは朝鮮渡来の技術なので、ここから新羅が云々の話になってくる。

    そう、この本は、宗教と製鉄の2点から、古代日本と朝鮮の関係を明らかにしてい公ということが書かれた本なのだ。
    それがわかったのは、ようやくこの本を読み終わる頃だった。
    自分の理解力のなさに、情けなさすぎて泣ける。

    日本の神様はいたるところにいる。
    自然のなかにもいるし、人間が神さまになることすらある。
    それは、神性を持っているからではなくて、そこに神さまの依り代があると考えるからなのではないかと、最近思っている。(あくまでも私見)
    樹齢何百年の大木が神さまになるのではなく、そこに神さまが宿る。神さまは別にある。
    だから、人の移動とともに、神さまも出雲から伊勢へ、そして諏訪へ、さらには日本中へと広まっていったのではないかな。

    出雲の神様を祭る神社は日本全国至る所にあるが、特に東国に多いらしい。
    武蔵(埼玉・東京)では半数を超えるそうだ。
    国作りが西から東へ広まったように、神さまも西から東へ移動していった結果なのかとかんがえると、わくわくする。

    古代史は、よほどの証拠が見つからない限り、仮説の域を出ることはない。
    それをいいことに、少し読んでは頭の体操とばかりいろんな仮説を組み立てて(妄想をして、ともいう)、一向に読書が進まなかったのである。
    もっと知識があったら、もっと面白いのだろうけど。

    ひとつ不満がある。
    もっと親切に読み仮名を振ってくれなくちゃ、読めん!
    地名、人名、神さまの名前。
    固有名詞の殆どに読み仮名が振っていないので、これも読むのに時間がかかった理由の一つである。

    十六島を“うつぷるい”とは読めないでしょう?
    これが出てくるたびに、一番最初に読み仮名振っているところまで戻って、読み方を確認しながら読むのさ。
    こんな難読固有名詞がいくつもいくつもあるのである。
    全部に読み仮名振って!お願いだから。

  •  古里の話題は親近感強く面白い。
    伊勢の楠部、五十鈴川に沿ったところに韓神山という山があることをこの本で知った。韓神社は国津御祖神社など神社が三つも接してあるところの孟宗竹の藪の先にある。司馬遼太郎ともちかい金達寿はこの地を訪ね、禰宜の墓地であることを教わったと「日本の中の朝鮮文化」4で触れているそう。内宮の禰宜荒木田は新墾田あらきだの意、「皇大神宮禰宜譜図帳」(907)で読めるとある。神宮が五十鈴川の川上に倭姫により定められたときから荒木田氏は禰宜に任じられている。今も韓神社は楠部の病院長が月のはじめに来て一人で祀っているという。他にも外宮の高倉山古墳という大きい古墳が有るのも感心ごとなり。

    • osakajoさん
      古里の話題は親近感強く面白い。伊勢の楠部、五十鈴川に沿ったところに韓神山という山があることをこの本で知った。韓神社は国津御祖神社など神社が三...
      古里の話題は親近感強く面白い。伊勢の楠部、五十鈴川に沿ったところに韓神山という山があることをこの本で知った。韓神社は国津御祖神社など神社が三つも接してあるところの孟宗竹の藪の先にある。司馬遼太郎ともちかい金達寿はこの地を訪ね、禰宜の墓地であることを教わったと「日本の中の朝鮮文化」4で触れているそう。内宮の禰宜荒木田は新墾田あらきだの意、「皇大神宮禰宜譜図帳」(907)で読めるとある。神宮が五十鈴川の川上に倭姫により定められたときから荒木田氏は禰宜に任じられている。今も韓神社は楠部の病院長が月のはじめに来て一人で祀っているという。他にも外宮の高倉山古墳という大きい古墳が有るのも感心ごとなり。
      2017/07/19
  • 崇神天皇の時に、天照大神と倭大国魂の二神を皇居に同居させるのは良くないということで天照の彷徨が始まります。天照の方が出るのは不思議ですが、倭姫の同行で約40年もさまよい、結局、伊勢神宮へと落ち着きますが、何だったのでしょう。移動コースも変です。その辺に興味がありましたが、解決しません。伊勢と出雲の関係性も伊勢津彦と建御名方の行動パターンが似ている、猿田彦の生地伝承が出雲にあるというのだと弱いですね。

  • 古い資料を文語のまま引用しているところや難しい漢字が使われている部分が散見され、読みやすい本とは言えない。ただし、最初は難しかったものの、慣れてくると、著者のほのぼのとした神社巡りの状況が浮かんできて、だんだん楽しくなってくる。古事記や日本書紀に関連する文献を読んだことがある人であれば、読みこなせるだろう。なお、私は三重県出身であるので、本書に登場する地名に馴染みがあった。地元の人ではないと知らない地名も登場し、友人宅の近くにこんな遺跡や謂われがあったのかと驚いた。また、伊勢と出雲の関係や朝鮮との関わりの深さには驚かされる。古代のロマンに浸りながら本書を楽しんだ。

  • 伊勢と出雲に興味あり!
    もちろんどちらにも出かけましたよ。

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著者プロフィール

岡谷公二(おかや・こうじ) 1929年生。東京大学文学部美学美術史学科卒業。跡見学園女子大学名誉教授。著書に『ピエル・ロティの館』(作品社)、『貴族院書記官長柳田国男』、『柳田国男の青春』(筑摩書房)、『島の精神誌』(思索社)、『神の森 森の神』(東京書籍)、『島』(白水社)、『南海漂泊』(河出書房新社)、『殺された詩人』、『南の精神誌』(新潮社)、『絵画のなかの熱帯』『柳田国男の恋』(平凡社)、『南海漂蕩』(冨山房インターナショナル、和辻哲郎文化賞)、『原始の神社を求めて』『神社の起源と古代朝鮮』(平凡社新書)訳書に、レリス、ドランジュ『黒人アフリカの美術』(新潮社)、レリス『幻のアフリカ』(平凡社ライブラリー)、ルーセル『アフリカの印象』、同『ロクス・ソルス』(平凡社ライブラリー)など多数。

「2016年 『島/南の精神誌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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