- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582858280
感想・レビュー・書評
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一昔前に松岡正剛さんの「白川静」という本を読んで、自分の中で「白川静ブーム」が巻き起こっていました。何気なく使っている「漢字」の成り立ちを知ったら、漢字って本当に面白いものなんだなあ〜と。
そして、久しぶりに書店で「文字学者 白川静」の書籍を見つけて、迷わず手に。久しぶりに浸った白川静ワールドはやはり最高でした。
ちょっと前に三浦 しをんさんの「舟を編む」という辞書を編纂する編集部の小説がありましたね。改めて「日本語」という文字や文化を知るのもいいものです。 -
「網の目のように縦横に関連して存在している漢字」の成り立ちを
体系的に解明し『字統』『字訓』『字通』を著した白川静
その白川に教えを乞い白川文字学の普及に尽力する記者が
白川の人となり、文字学の神髄をわかりやすく解説する
世界最大の漢和辞典といわれる諸橋轍次の『大漢和辞典』と
そのコンパクト版とみられる『広漢和辞典』
この両者の記述にあたりながら白川の『字統』が与えた影響をさぐる
第二章はとくに興味深い -
ぼくは今まで白川静さんに対し、敬意を表しつつもどこか敬遠していたところがあった。それは、白川さんの解く漢字の説明が呪術的で、読んでも覚えられないし、現実の漢字の意味を考える上であまり参考にならなかったからである。しかし、本書を読んで白川さんの偉大さは、その体系性にあることを知った。たとえば、「口」が白川説の中では特に重要で「祝詞を入れる器」を意味することは記憶があったが、それが他の漢字を解説する際にも一貫しているということである。たとえば、「器」の中が「大」ではなく「犬」であるということは知っていたが、四つの「口」と「犬」がなにを意味するかは、白川説でないとうまく説明できない。あるいは、「尋」もそうで、これは実は右手と左手で、祝詞をいれる器である「口」と神器である「工」を持ち、神をさがしている形である。こんなふうに、一つの漢字の部品がわかれば,他の文字に応用できるというのが真の漢字学だと思う。そういう認識がぼくには欠けていた。
また、白川静の漢字学は呪術的で近寄りがたいと言いながら、一方でその説を無視できない現象が起こっていた。たとえば、漢和辞典と言えば、大修館の『大漢和辞典』が有名でこれはぽくも持っているし、時々は引くこともある。しかし、その縮刷版?たる『広漢和辞典』は、どうせ同じ内容であろうと思って買っていないが、実はこの『広漢和辞典』の方の語源解釈はどうも白川説を採ったものがあるようなのである。小山さんはそれをいくつかの字について一々例証する。また、一方、白川さんがともすれば反動的だとかという見方に対しても、そうではないということを白川さんの作った歌や文章から説明する。そういう意味で本書は、小山さんの白川静批判に対する義憤の書である。ただ、一つ不満もある。白川静批判の中には、文字とは言語を書く道具であり、音声こそ言語であるという立場がある。本書でも、その文字がどのような音を写し、その音がどのような意味を持っていたかについてはまるで触れていない。古代中国人も文字にする前に音声言語を発していたはずで、その点に対する言及もあってもよかったのではないだろうか。