誰でもいいから殺したかった! (ベスト新書 193)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584121931

感想・レビュー・書評

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  • <感想>
    秋葉原通り魔殺人事件を中心に、通り魔事件を起こした10代~30代の犯人の心理について研究した本。
    無差別殺人を起こした犯人の共通点が「躾が厳しかった」というのは意外だった。人生が期待に応えなかった時、無理をして生きてきた人間がどういう行動を起こすのか。

    <アンダーライン>
    ★★★★★
    私が会った、もっとも凶暴な少年犯罪者は、もっとも厳しいしつけを受けた子どもだった

    ★★★★加害者の絵師年は、自分を「負け組」だと決めつけて、希望を失い、存在を示すために騒ぎを起こしてでも「特別な存在」になろうとするのです。
    ★★★★社会全体にも希望がもてない人は、えてして、事態を改善し、問題を解決するために「一発逆転」を狙います。
    ★★★「誰でもいいから殺したかった」といって残虐な無差別殺人を犯した犯人たちは、本当は誰でもいいから愛してほしかったと願っていたのかもしれません。
    ★★★手のかからない子ほど、手をかけてあげないといけない

    ★★★★★
    2000年の母親バット殺害事件は、友達を殺してしまったと思い込んだ少年が、大好きな母親を人殺しの親にはできないと考えた「愛他的殺人」でした。

    ★★★★通り魔的な凶行に及ぶ人は「ひどい境遇を受けてきた自分がやることは悪くない」と、価値判断が倒錯している場合が多い
    ★★★★そもそも人間関係に深く関わらなくなったことが、殺人事件減少につながっているかもしれません。殺したいと思うほどの、濃密な人間関係が最初からないわけです。
    ★★★★アイデンティティを確立する作業は、なにかを切り捨て、断念する作業です。だから、辛いのです。
    ★★★★心理学的にいえば、恥意識と罪意識の違いは、関心が自分に向くか、行動に向くかの違いです。

    ★★★★★
    人は、大切なものを他の人に壊されるぐらいなら、自分自身で壊してしまおうと思います。本当は自分の命も人生も、自分の夢も才能も大切だと思っているのに。しかし、だからこそ、誰かに夢をつぶされた、人生を狂わされた、才能を認めてもらえなかったと思い込んでしまった時、もうこんな自分なんかどうでもいいんだと、自暴自棄に陥ってしまうのです。

    ★★★★★
    奈良の放火殺人事件の少年は、ウソをつき、父親から罰を受けることを避けるために、家に火をつけました。

    ★★★★快楽原則と現実原則
    ★★★思うように行動しているが、願うようには行動していない

    ★★★★★
    「ねばならない」と思い込むと、失敗した時に第2希望に進めません。

  • 子育てに関しての見解は、ハッピーアドバイスと同じような意見です。

    秋葉原の事件の犯人が言うように、「人と関わりすぎると怨恨で殺すし、孤独だと無差別に殺す」が、現代特有の殺人事件の理由でしょう。これはなかなかどうして興味深い。

    そういえば、江戸怪談にもあるように、人間関係のもつれがテーマになっているものが多く、日本人は割とそういった犯罪性格を持っているのではないかと思います。

    今年の漢字は絆となりましたが、これは『ほだし』とも言い、辞書で調べると、
    1 人の心や行動の自由を縛るもの。自由をさまたげるもの。「義理人情の―」
    2 馬の足をつなぎとめるための縄。ふもだし。
    3 手かせや足かせ。ほだ。
    と記されています。つまり、絆という一つの良い面だけしか見ていなくて、反対の桎梏が犯罪の土壌に繋がっていると感じます。「情に絆される」という慣用句は、「人情にひかれて心や行動が束縛されること」という意味で使われ、つまりそこには自由が無くて、強制力しかありません。ムラ社会特有の「見えない閉塞感」と換言できましょう。
    話は脱線しますが、2011年の今年の漢字に選ばれた『絆』。
    あれは僕はどうも好きじゃありません。強制を求められるからです。

    そこで思い起こされるのが、化物語の主人公の言葉、人間は生きてりゃ恨まれることだってあるです。だから自分を殺そうとしている人間を許せる、と……。

    送り手と受け手が違うから、そこに齟齬や軋轢が生じるわけで。例えば、A先生の授業は解り易いと思っていても、他の生徒からすれば、全然理解出来ない。同じA先生の授業なのに、評価が全く違うものになってしまう。
    自分の教育方針が正しいと思っていても、それを受ける子どもは反発するかもしれない。
    であるからこそ、送り手と受け手のギャップを解消するために、送り手が間違っていないかどうかを、受け手が教えてあげないと、いつまでも両者は平行線を辿ることになります。送り手はフィードバックを求めながら、自分の方向性を確かめないといけません。その点で言えば、府知事を辞職して民意を問うた橋下徹さんはお見事!だと言えます(投票率や選挙の方法等については若干の疑問が残りますが)。
    自分と他人は違うわけだから、勿論自分と合わない人だって当然出てきます。それに対して、相手に迎合するか反発するか、それはその人次第ですが、結局、人生って、居場所探しなんだなぁと思うことがよくあります。先ず『自分』という確たる存在があって、自分についてきてくれる人、自分と波長が合う人、仲が良い人、そういう人を囲って、その中で安寧に過ごせたら、人生はそれで十分だと思うんです。そういう居場所が無い人ってのが最近はすごく多くて、それで孤立しているんだと思います。
    特に十代の多感な時期は、どうしても万人に好かれたいという気持ちが強いため、ちょっとでも反発されると、すぐに落ち込んで塞ぎがちになります。それはそれで良いのですが、再起できないほどに打ちのめされるのはまずいでしょう。打ちのめされても、再起できれば、一回り強くなった自分になれるわけで、(心理的に)受けたダメージを回復する場所が、一般的には家族でしょう。

    「人と関わりすぎると怨恨で殺すし、孤独だと無差別に殺す」
    要は、人との距離感をどう取るか。人との距離感は、今までは誰にも教わることなく、自然に学習できたものですが、やはり経験が少ないから起こるものだと思います。特に幼少からの他者との関わりが少ないと、偏った人間関係しか築けず、大人になった時に苦労するのではないでしょうか。過保護だと親子関係しか築けず、放任だと自分の居場所が見えづらい。どちらもバランスの欠いた状態だからこそ、ストレスが溜まり、一気に爆発してしまう危険性があります。

    絆というテーマを言うなら、『安心社会から信頼社会へ』『やさしさの精神病理』という本が面白いです。本書の内容とは少し学問が変わってきますが、どちらも読みやすく刺激的でオススメします。
    所々、著者の意見がどうも腑に落ちない箇所があり、疑問の残る部分もありますが、総じて良書だと言えます。僕の評価はA―にします。

  • こういった犯罪の裏には
    実は「家族」といったものが
    絡んでいる場合や、
    その加害者自体に精神面での欠点があったり
    するものなのです。

    しかし家族に関しては
    かなり恐ろしいものを感じました。
    中には完全に自分の子を自分の子でない扱いをする
    どうにもならない親もいましたし…

    この問題は他人事では割り切れませんね。

  • 無差別殺人のような事件の背景とその原因について、とても分かりやすく解説されています。

    * 事件において、一体何が起こっているのか?
    * その事件の背景には何があるのか?
    * 根本的な原因は何なのか?

    根本原因についての考えは、私のものとは異なるのですが、お勧めです。

著者プロフィール

新潟青陵大学大学院教授
『誰でもいいから殺したかった!追いつめられた青少年の心理』(KKベストセラーズ、2008年)、『人間関係がうまくいく 図解 嘘の正しい使い方』(大和出版、2008年)、『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』(主婦の友社、2001年)

「2009年 『「インターネットと人権」を考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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