悪いのは私じゃない症候群 (ベスト新書 239)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584122396

作品紹介・あらすじ

新型うつ、モンスターペアレントにモンスターペイシェント、クレーマー、アダルト・チルドレン、児童虐待、「前世が悪い」のスピリチュアル・ブーム…日本人はいつから「悪いのは私じゃない、あなたが全部、悪いんです!私は犠牲者、被害者です!」と言いつのるようになったのか。「それは自己責任だ」と他人から責められないためには、自分のほうから他人を攻撃する"先制攻撃"しかない。この先制攻撃合戦の悪循環の中で、この国は一体どうなってしまうのだろう。今、インフルエンザに匹敵する伝染力の国民病-「悪いのは私じゃない症候群」は怖ーわいぞ。

感想・レビュー・書評

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  • この本は自分が「モンスター被害者」になってないか、
    検証できていいと思う。

    しかし、それらが増えていることは述べられていても
    具体的な対処方法はあまり書かれていない。

    著者自身もそれは自覚しており、あとがきで書かれている。
    お医者さんだからしょうがないのかな。

    こっちはフリー仕事でモンスターなクライエントについて、いつまでも
    内省したり、うらみごとを言ったりしていたら失職してしまう。

    理不尽なことなど腐るほどある。
    自分が他者に理不尽なことをしたことも腐るほどある。

    自分が正しいか被害者かの思考に酔いしれるのは時間の無駄だ。
    真実は、いずれわかる。もしかして真実はないかもしれない。
    自分がモンスターだった甘えてたと後から気づくこともあるし、
    やっぱ、あいつが悪いよ!と思うこともある。
    まあ、どっちか100%なんてケースは犯罪被害以外ないんじゃないかな。

    自分が被害者だろうが、加害者だろうが
    自分の人生の責任は、結局のところ自分で引き受けるしかない。

    加害者は変えられない。満足いく補償なんて現実にはない。
    (本当に被害を受けたとしても。相手が悪人だったとしても)
    変えられるのは、自分の仕事のレベルと
    対応の具体的なアイデアだけだ。

    著者は時代に警鐘を鳴らしているが、
    現実には「被害者」は減らせないと思う。

    どうこの時代を泳ぎきるか。

  •  香山リカの本が好きなのは、わかりやすい文体とか、材料と説明のバランスがいいことにくわえ、その本に1カ所かそれ以上、実はものすごくちゃんと調べたり読んだりしたものの説明が入っていることだ。今回は信田さよ子のスピリチュアル・ブームの分析や、荻上チキのサイバーカスケードやネット言説についての分析がかなり丁寧に紹介されていた。日本人はウツ病でもないのにみな自責的に振る舞う、と言われていたのが崩れていることについて、なんだか崩れているよね、じゃなく、著者が実際に見聞きした事例も使って具体的に示され、ウツ病患者までがときに他責的になっている(新型ウツ病とか呼ばれることも)、昔はもっと「牧歌的」だったのに、と香山は言う。この「牧歌的」はたぶん、医者という立場から見たある種上から目線であって、患者や一般市民は判断の材料もなく自分で自分のことを決定するだけの権威も持っていなかった、そういうことなんだろうと思う。自責的なのがまずいのはDVサバイバーとか見れば明らかなんだが、でも「あなたが(全部)悪いのではない」というメッセージやさまざまな判断の材料、そして自己決定の権利が得られるようになったことと、「自分は(全部)悪くない」とだれもがいいつのる状態が社会現象化したことが一緒くた、というのは不幸なことだよなぁ。成果主義や新自由主義的競争が元凶と、香山さんは書いているが、ここがもう少しがっつり書いてあればなおいいんだが。そこが弱いので、結論の「私が悪くないと言わない勇気」が、「郵便ポストが赤いのも…」を弱者に言わせることにつながって行きかねないのがかなり残念。うーん、最後がなぁ。

  • 悪いのは私ではない症候群について知りたくて読書。

    著者の本はあとがきが面白くまさに内容の要旨となっている。

    悪いのは私ではない症候群の要因が本書で指摘してるものかどうかは別としても確かに例としてあげられているこの種の人たちは増えているように感じる(第7章の田母神氏の例は違うと思うが)。

    心理的にも自分を棚に上げて人のせいにしたほうが楽で、自己対峙しなくていいから思考停止な状況でいられるから心地いいのだと思う。その代わり成長もしないという代償が発生する。

    確かに新自由主義、市場万能主義も要因のひとつかもしれない。それも含めて将来の展望が見えづらい長期間の不況、デフレ状態が人々のメンタルへ影響していのではと思う。

    最近のTwitterを巡る事件などでも自分の将来の不安、生活や仕事の不満などを相手を批判することによって自身を肯定化している人もいるのだと思う。辛い辛い現実を忘れる簡単な手段なのかもしれない。

    他罰主義は一時的には特をするかもしれない。しかし、マクロ的には因果応報で戻ってくるようにも思う。自分が嫌だと感じることは人にはしない。自分がして欲しいことを人に先にやるが原理原則なんだと思う。

    悪いのは私ではない症候群的な人が増えれば増えるほど、他者を思いやる。相手の立場を考えて発言できるような相手主義で接したり、コミュニケーションができる人の価値が相対的に上がるように思う。

    エピローグの最後の
    「バカと言う人がいちばんバカ」
    というシンプルな原則を見直す日は来るのであろうか。

    読書時間:約40分

  • なんでもだれかのせいにして、自分を守る。
    今の競争社会・格差社会・・・社会。社会。
    私も、社会のせいにしたくなったけど、「いや
    ちょっと待てよ」と考えることのちょっとしたきっかけになる本だった。きいつけよう。

  • 福本
    最近出かけた先で、この人は自分の事しか考えてないのかな、迷惑だな。と腹の立つことが多くなってきていまして(年でしょうか、、、)そんな折みつけたこの本。
    少し趣旨は違うんですけど、悪いのは私じゃない!って人々について書かれています。
    新型うつ、モンスターペアレント、モンスターペイシェント、クレーマー、アダルトチルドレン、児童虐待、「前線が悪い」のスピリチュアル・ブームなどです。
    自分自分!の人々について書かれています。
    読んでいて、こんな人いるの!なんて自分勝手だ!と、腹はたつものの、思い返せば、自分も人(物)のせいにすることあるよなあと、いろいろな要素が重なってこうなってしまったのであって私は悪くない!なんて、口には出さなくても考えてるよな、と気づきました。
    最終的に「悪いのは私じゃない症候群」の元凶についても語られています。

  • bookoffにてふと購入。

    読みやすい文章を書く人でした。
    「他罰」のエピソードがたくさんあって、事例集としてよさそう。

    他罰的に振舞う人は、本人としては必死で一生懸命なわけで、
    (”生きるための基本条件”のとおりに行動しているだけであって)
    かわいそうというか、厄介というか。。^^;

    他罰って、今までおばちゃん集団の陰口みたいにある程度こそこそしてたものが、
    面と向かってぶつけられるようになってきたような感じなのかなぁ。
    あとは、やっぱりネットが、匿名=防御力無限の状態で攻撃し放題っていう形式を、
    身近にしてしまってる感もあるよなぁ。

    えー、しかし、この本読んで結局、
    他罰ばっかりやってると互いに助け合えないからまわり回って困るのよ、
    っていうくらいしか、他罰がどのように悪いのかについての
    説明がないのが物足りなかった。ちょっとありきたり、というか、ガツンと響かない。
    攻撃しまくって、まわり回るのを回避する人もいると思うもん。
    そういう人が一番強烈なんだし、そういう人に説得力ないと意味ない。
    確かに巨視的に見ればまわり回るのはわかるけど、一人一人は
    他罰的な人も自分も、自分自身のことでいっぱいいっぱいなわけで、
    そこまで巨視的になれないし、それをもって説得できるとも思えない。

    ちょっと前の本だから、著者さん今なら何かアイデアを持ってるかな?
    いい点に着目してると思うので、もう少し熟成して打開策を考えてほしい!

    *「潰れない生き方」高橋 克徳 を同時に読んだんですが、なんか、味わい深い。他者を攻撃しなくたって、自分を守って高めていけるはずだよね。

  • 不満や葛藤を全て自分以外のせいにする他罰な人が増えているらしい。
    「悪いのは私じゃない」と必死に自分の正当性や責任の無さを強調しようとする。。。。。
    昔からそんな子供は居ましたけど、そのまま大人になった人が多いってことですかね。
    って思って読んでみたら、筆者によると「成果主義や競争社会により、先制攻撃を仕掛けることで自分を守る傾向が強くなったのでは」との仮説が提起されていた。確かに一理はあるか。

    自らの行動/言動に、注意が必要と思う。

  • この症候群が、「新自由主義による自己責任回避の結果」という著者の主張には納得する部分あり。サバイバル社会の必然か?が、「悪いのは私じゃない」はニセの自己肯定だし、それが蔓延すると社会的圧力となり、結果「自業自得」で自滅する(のも自己責任?)という論調はわからないでもないが、利己と利他への変換と調整の内容と程度は人それぞれの考えがあるだろうし、精査されるべきだと思う。1-6章は事例紹介だが、7章以降の歴史分析は興味深い。結論から入りたい人はここから読んでもよい。

  • 確かに身の回りに何でも人のせいにする他責性の強い人が増えた気がする。

  • 棚にあがっちゃう人は本当に多い。
    真っ先に自分に非がないかを考えてしまうのは、もはや時代遅れか。
    正直者がバカを見ている気もしてくる。
    香山さんらしく、スラスラと読みやすい。
    学校に医者、職場、そして家庭へ。スラスラ進むが、スピリチュアルまでくると、ちょっと距離感が出てきた気がします。

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著者プロフィール

たくましいリベラルとして、右傾化する政治状況から現代社会の病理まで、メスをふるう行動派知識人。1960年生まれ。精神科医。立教大学現代心理学部教授。『若者の法則』『ぷちナショナリズム症候群 若者たちのニッポン主義』『生きてるだけでいいんです。』『弱者はもう救われないのか』『「悩み」の正体』『リベラルじゃダメですか?』ほか、著書多数。

「2017年 『憲法の裏側 明日の日本は……』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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