正義という名の凶器 (ベスト新書 402)

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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584124024

作品紹介・あらすじ

「あなたのやったことは間違っている。私が正しいのだから」という考えの元、徹底的に悪の糾弾を行い懲らしめ、相手が許しを乞いても尚、激しく攻撃を続ける。時にして、相手の命を奪うこともある。いじめ、体罰、ストーカー、地域紛争、戦争。社会の揉め事の起因が、この「ひとりよがりの正義感」にあることが多い。人はなぜ、正義を振りかざし、相手を叩くと気持ちよくなるのだろう?そして、なぜターゲットを変え、何度もこの行為を繰り返すのだろう?「正義の仮面」の下に隠された現代人のかかえる数々のトラウマ、「正義を振りかざしやすくなった社会」という2つの側面から、今もっとも怖ろしい「正義依存という病」の本質に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 誰の中にも正義はある
    でもそれが正義ではなく「自分自身の悪の浄化」だったとしたら…

    ネット炎上、ネット処刑、さらにはISやヘイトまで…
    この世の中にあふれる「正義」の正体を解説

    他人を責める人、いじめる人は自分の中にある同じような”もの”をそこに見出して嫌悪して事故便宜のために攻撃する…

    じゃあ正義って何なんだろ?
    結局は正義っていうのは自分の中にしかないのかな?
    凶器にも武器にもなる正義
    振りかざすときは自分の手にある「正義」の正体を見てからなんだろね。

  • 防衛機制の「投影」を中心にまとめてあって良い。

    誰が読んでもわかりやすいかと思うのだけど、どちらかというと様々な知識と教養があった方が、読んで面白いと感じる箇所は多いと思う。
    読んでてイライラする箇所もあるのだけど、それだけ的を得ているというか痛いところを突いてきているのかもしれない印象。

    ただ「正義」と「大義」がごっちゃに語られているような印象は残った。正義が大義に変化しているのか、大義を得るために正義の集合が行われているのか、自分にはよくわらないし、もしかしたら書いてあったのかもしれないけど、その辺りが自分みたいなのにもわかりやすく区別して書いてあればよかったので残念。
    大義名分(行動を起こすにあたってその正当性を主張するための道理・根拠)があれば極端な話「何をしても良い」のは世界の共通ルールとして(良い悪いは別として)漠然としながらも間違いなく普通の人々に普遍的に存在していて、当然ながら我々のうちにも存在するのであって、そういった面が捉えられていればもっと読み応えのある本になったと思った。なんだか二分法で終わった感は残った。

    あと文章。メディアの露出が多い人の文章によく見られる乱れ方で、流れの中で急にポコっと別の話が入ってきて、そこにきちんと言及せずにまた元の話に戻る。ちょっと読みづらい。

  • ・この本は、ある意味、もう一つの『未来の年表』かもしれません。少子高齢化がもたらす影響も大きなものですが、匿名に守られた中で客観性のない正義を振りかざす人による暴力は、社会を蝕むかもしれません。

     私は、この本についての感想・レビューを書く前に、『正義という名の凶器』という言葉を定義づけする必要を感じ、あえて「凶器になりかねない正義」と言い換えました。それを行使する人たちは、意外と古い価値観を呼び覚まされた顔のない集団なのかもしれませんね。

     凶器になりかねない正義とは、自己に対して客観的ではない特定の集団、あるいは個人的な価値観に支えられた行動原則だと思います。誤解を恐れずに言えば、何らかの原理主義とも考えられます。凶器になりかねない正義とは、そのような価値観を持つ特定の集団や個人によって行使されます。

     インターネット社会においては、そのような行為が仮面を被った状態で行われ、そこに"はやしたてる観衆"や"傍観者"も加わって拍車がかかりやすくなります。"観衆"の調査能力は驚くべきもので、加害者のプライベートは暴かれ、家族も連帯責任を負わされます。

     この本は、ある意味、もう一つの『未来の年表』と言えるのではないでしょうか?少子高齢化による人口減少がもたらす影響も大きなものですが、匿名に守られた中で客観性のない正義を振りかざす人による暴力は、社会を蝕むかもしれません。

     この本は、積読になっていたのですが、2018年から2019年への移り変りの中で手に取ったということに運命を感じるような内容でした。2ヵ月に渡って仏教について学んでいなければ、素直に受け止められないような、衝撃がありました。

  • 論理に納得出来るところが多く、つくづく嫌な世の中になったものどと感じた

  • 片田珠美『正義という名の凶器』(ベスト新書、2013)を読む。

    精神科医が社会の病理を語ったもの。『他人を攻撃せずにはいられない人』『プライドが高くて迷惑な人』で一般にも知られるようになった著者だけあって読ませます。職場の困ったさん、クレーマー、ネット炎上。歪んだ自尊心と正義感について。

    役所内部にもこのような人々はごろごろと転がっており、屈折した自尊心、行き過ぎた正義感、人を使い潰す自己中心主義などが蔓延しています。

    著者が指摘する、自らの「悪」を否認するための投影。嘘つきほど他人の嘘を指摘しののしるという事例。類似例があちこちに。

    後輩さんが栄転ともなれば、本書含めて片田先生の著作すべてをもたせてあげようと思います。


    【本文より】
    ◯ひとりよがりの「正義」を振り回す人のために迷惑したというような経験は、誰にでもあるのではないだろうか。

    ◯職場にもある「正義」の仮面をかぶせたいじめ

    ◯「正義」を振りかざせば、自分は相手を傷つけたいわけでも、うっぷん晴らしをしたいわけでもなく、ただ悪者をこらしめているだけなのだと思い込めるので、心地よい正義感に酔える。

    ◯困ったことに、客観的に見れば、ひとりよがりの正義感が暴走しているような場合であっても、「正義」を振りかざしている本人は、まったく気づいていない。それどころか、自分はあくまで正しいことをやっているのだと信じ込んでいるような人さえいる。

    ◯他人の「悪」をたたくとスッとするのは、それによって、「悪」が自分にはないかのようなふりをする、つまり否認することができるからである。

    ◯自分自身の「悪」を否認するには、外部に投げ捨てて他人に転嫁するのが最も手っ取り早い方法である。これは、「投影」と呼ばれるメカニズムであり、正義感を振りかざして、他人を激しく非難したり、批判したりする人にしばしば認められる。

  • 常日頃から感じていたことがタイトルだったので期待して読む。が、詰まる所は他の本当同じことが繰り返した感じで新しさはなかった。

  • 良書

  • 正義という名の裏に隠された、怒り、嫉妬、羨望のメカニズムを明解に述べるている。ネットの書き込みなどについても的を射ている。ただ極例はさておき、大多数の普通の人の自然な感情や本能的感覚からくる平凡な正義感ってのは必要ではなかろうか?非常に面白かったのに、おわりにの文章で、自分のスタンスの正当性を主張する姿が残念でした。201407

  • 覚えのあるものもありました。どこか客観視できる自分でいたいと思いました。また、投影は自分の中にある弱さや認めたくないものを見なくて済むからだそうですが、文句が言いたくなったり、何かを標的にしたくなったりした時に、自分のためにも、自分にもあるものと先に向き合えたらと思いました。


    自分が大切だとみなしている領域で他人の優越性を思い知らされたり、他人の成功や幸福を見せつけられたりすると、自尊心や自己愛が傷ついて、ときには自分には何の価値もないのではないかという思いにとらわれ、無意識に防衛メカニズムが働く。無価値化とか、あらさがしとか、でも苦労もあるだろうとか。時にはシステム自体を批判することも(こんな世の中が悪いのだ)。すっぱいぶどう。そうやって折り合いをつけようとするのは、良くも悪くも自然な心の流れとわかっておくとよいのかな。自分の意思ではなく、誰かの誘導によるものだったと気づいたときに抱く復讐願望や被害者意識(あんたたちが保証すると言ったから)もしかり。

  • 元々、動物愛誤団体だの、障碍者様の気持ちを代弁しているつもりの人だのが嫌いだ。
    ネットで起きる炎上。過剰なバッシングは何故起きるのか。彼らはいつもわざわざ叩けそうな生贄を探しいるようにすら見える。
    在特会のように弱者がさらなる弱者を叩いていじめるのは何故なのか。いじめの加害者を叩いて自分たちがいじめをしている欺瞞から目を剃らせるのは何故なのか。その解説にはなるほどと思うことが多かった。本質をついた名言の引用もいい。

    しかし肝心の特効薬はというと存在しないので、せめて自分はそうならないように気をつけるしかないというのが残念だが、適当な健康番組みたいに「コレに効くのはこの食べ物」みたいに断言してしまうよりはよほど誠実なのかもしれない。

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著者プロフィール

1961年生まれ。大阪大学医学部卒業、京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。京都大学博士(人間・環境学)。専門は精神医学、精神分析。フランス政府給費留学生としてパリ第八大学でラカン派の精神分析を学びDEA(専門研究課程修了証書)取得。精神科医として臨床に携わりつつ、精神分析的視点から欲望の構造について研究。日生病院神経科医長、人間環境大学助教授を経て、現在、神戸親和女子大学教授。著書に『オレステス・コ
ンプレックス—青年の心の闇へ』『17歳のこころ—その闇と病理』(共にNHK出版)『分裂病の精神病理と治療7—経過と予後』(共著、星和書店)など、訳書に『フロイト&ラカン事典』(共訳、弘文堂)などがある。

「2005年 『攻撃と殺人の精神分析』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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