カジノ幻想 (ベスト新書)

著者 :
  • ベストセラーズ
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584124734

作品紹介・あらすじ

日本のカジノ導入議論は、これまで「別の土俵からの空中戦」であった。つまり、カジノ推進派は地方再生・観光客増加などのメリットだけを強調し、反対派はギャンブル依存症問題・治安悪化などのデメリットだけを主張してきたわけだ。では、そもそも推進派が主張する「カジノで日本経済が成長する」は真実なのだろうか?本書では、「ゼロサム」「カニバリゼーション」「ジャンケット」「コンプ」といったキーワードから、IR型カジノの危うさを明らかにしていく。カジノの危険性と、そこに残された可能性から、カジノが日本を幸福にするのかを問い直す。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で見つけたので読んでみました。

    この本によると、「カジノ」は、それに付随する施設の生産や整備は、付加価値を生むものではあるものの、「カジノ」そのものは付加価値を生まず、単に、財貨の移転をしているだけです。
    この点は、カジノビジネスの大きな特徴だと思います。
    また、利用者の負けが大きくなればなるほど収益が大きくなる、ということで、利用者を幸せにする可能性が低いのも、カジノビジネスの特徴です。
    さらに、カジノの利用者は、より大きな刺激を求めるようになるため、収益が増加せずとも、設備投資を継続する必要があり、カジノビジネスは、事業の継続に多くの費用を要します。
    というわけで、カジノビジネスは、短期的には利益が出ても、長い目で見ると、利益を出しにくいビジネスと言えると思います。

    しかも、カジノビジネスは、カジノの施設の周囲にある飲食店やリゾート施設を犠牲にする(飲食店やリゾート施設からお客を奪う)ことで成り立つことが多いため、その点でも、あまり健全なビジネスと言えないと思います。

    そういったことを踏まえると、カジノビジネスは、長い目で見た場合、経済の成長に寄与するとは言いにくいのですが、つい先日、大阪のIR整備計画が政府に承認されましたね。
    これについては、本格的に動き出す前に止めるのが、大阪や日本にとっての正解だと思われます。

  • 東2法経図・6F開架:673A/To67k//K

  • IRが世界各国に建設されて数年経った今どんどん崩れ始めていることを、いくつもの事例を挙げて説明している。自分はどちらかと言えばIR推進派だけど、本書で言われているように、成功と言われ日本が参考にしようとしているシンガポールもマカオも実は穴があり、さらに元々物理的にも「アジアだから」と一括りにしてはいけないと示すデータに、考えの甘さを突かれた。ギャンブル依存症も対策をするから大丈夫、と緩いことを言っていると取り返しのつかないことになる。IRはハイリスクだと示すこの本の役割は重要だと思う。

  • 日本へのカジノ導入(表面的には統合型リソート、IR)に対しての問題点を他国でのデータをもとに丹念に検証した本。
    本当によく調べ上げていて、説得力のある内容になっている。
    本書の出版は2015年だったが、その主張もむなしく日本でのカジノの導入は決まってしまった・・・。
    目先の利益にとらわれて、長期的には国と国民を疲弊させる可能性の高いシステムの導入が決まってしまったことに深い失望を覚えるものである。
    後は、後年「やっぱり、あの本の言うとおりだった・・・。」ということにならないことを祈るのみである。

  • いくつか読んだカジノ本の中では一番まとまっていた。特に第1章で議論がコンパクトにまとめられているのでわかりやすい。その後の各論も論旨は明快。

  • 佼成新聞デジタルより

  • 日本におけるカジノ導入への批判論。日本におけるカジノ導入にあたって、考えなければならない有益な指摘も多いが、過剰にデメリットを強調しているように感じた。
    カジノが「ゼロサム経済」であり、周辺の他の消費を奪う「カニバリゼーション」が発生するという指摘は、重要な指摘ではあるが、インバウンド振興やIRの設計次第で最小限に抑えられる問題であるようにも思った。
    ギャンブル依存症も深刻な問題ではあるが、現にパチンコ等で日本で発生しており、カジノ導入にかかわらず対処が必要だろう。カジノ導入がギャンブル依存症対策が本格化する契機にもなるのではないか。カジノ導入後進国である日本は、諸外国のカジノ依存症対策を参照できるというアドバンテージもあろう。

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著者プロフィール

鳥畑 与一(静岡大学人文社会科学部教授)

「2016年 『入門 現代日本の経済政策』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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