逃げる中高年、欲望のない若者たち

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584132791

作品紹介・あらすじ

自らの欲望と向き合うことから逃げる若者たち。破綻から逃げ切ることだけを考える中高年。目標を追いかける者がいなくなったこの国に不安と閉塞感が蔓延する…。村上龍が発信する希望へのサバイバル・メッセージ。

感想・レビュー・書評

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  • 激しく同意!息子(17歳)にも読ませよう!

  • 村上龍『逃げる中高年、欲望のない若者たち』を読む。
    「メンズジョーカー」に連載した
    「すべての男は消耗品である。」シリーズ最新刊。
    タイトルが挑発的でいいなと思ったら、
    腰巻にも「村上龍の挑発エッセイ!」とあった。
    「普天間を巡る思考放棄」「善戦すれば負けてもいいのか」など
    現代社会の問題から目をそむけず自分の思考と言葉で立ち向かう
    村上に何度も共感を覚えた。

    若者たちに甘い言葉もかけぬ代わりに、
    「夢を持て」などと無責任に励ます大人たちにも容赦ない。
    当の大人たちこそ自分の夢を持たず、
    沈没しかけた日本の現実から
    自分たちだけはまんまと逃げ切ろうとしているではないか。
    感情におぼれず現実を直視した言葉づかいに過不足はなく、
    さすがプロの作家である。
    さて、自分は逃げていないか、
    村上の言葉に思わず僕は胸に手を当てた。

    ひとつだけ気になったのは、出版元の価格設定。
    内容量に比べるとさすがに1,300円は高いなと思った。
    短めのエッセイ17篇が載っているだけなのだ。
    一本ずつの中身がよかっただけに、
    ややデザイン先行気味の本作りには疑問を持った。
    文庫になってから読めばよかったかという気もするが、
    旬のテーマを扱っているだけにどうせ読むならいま、
    とも思い直す。

    「ニューヨークタイムズ」に寄稿した巻末エッセイ
    「21世紀のビートルズ」は読み応えがあった。
    09年の総選挙後の日本について村上の洞察が書かれている。
    同紙編集者は村上龍が相手でも加筆・修正を何度も要求する。
    その粘り強さは日本の新聞ではほとんどないと村上は言う。
    日米メディアの底力の差をそんなところにも僕は感じた。

    (文中敬称略)

  • 23歳は若くないという発言がこの本の中では印象に残った。村上龍は23歳の時に「限りなく透明に近いブルー」を書いて、芥川賞をもらっている。しかし、今の大半の若者はなんの職業訓練もなしに、大学で時間を浪費して、就職する段階になって大慌てだ。高校の普通科はなんの職業教育もせず、いたずらに学生を大学に送り込む。送り込まれた大学は、質の担保もせずに学生を社会に放り出す。大学を出ればよい企業に就職できて一生安泰という神話はすでに崩壊しているのに・・・
      大学で時間を無駄にしているくらいなら、早く目標を見つけて大人になるべきだ。幼くみえることと若さは違うことだ。
      完全に思考が停止している国。そして、欲望も目標ない。やはり草食系ではなく「死人」という方が正しいのだ。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/55804

  • 世の中を批判的に考察していた。好奇心をもつことや、欲望をもってワクワクすることが日本には足りていないという点は、他の作家も似たようなことを書いていたので、やはり日本は最近は元気がないのかなと思った。少し前の希望があった時代といわれている時期はどんな社会だったのか少し気になった。社会的に恵まれている人は、謙虚でないといけないということも、ひがまれたり対立を生まないように意識したいなと思った。

  • 2020.8.15 読了
    刺激的なエッセイだった。
    村上龍の凄いところは、一歩間違えれば訳の分からないことを言っているただの門外漢の批評家なのだが、日本国民に対する警鐘を世間に漂う雰囲気から鳴らし続けていること。
    もちろんサッカーについて述べた部分なんかは「お前なんも知らんやろ」となるが、まぁそれとそれでいい。

    文才で勝ち残ってきた人が綴る「失われた20年への警鐘」として、視座を高めてくれる本であった。

  • 村上龍のエッセイ。

    相変わらずという感じもあるが、若干視点が淡々としている。怒りとか憤りというものが薄れ、「日本はこのまま淡々と衰退していく」という端的な意見だけが節々に見られる。

    それはあきらめとは少し違っていて、単に冷静に日本を見つめているだけだ。

    著者が指摘する、日本の若者は怒りを表現する言葉を持たない、という指摘は正しいだろう。それが悪い事かどうかはともかくとして。

    書評:
    <a href=\"http://rashita.net/blog/?p=4975\">書評 「逃げる中高年、欲望のない若者たち」(村上龍)</a>

  • タイトルに集約されているとも思える村上龍のエッセイ集。表現にあてる言葉や角度は多少違えど概ね腑に落ちた。村上龍のスタンスは嫌いではない。村上龍はいい人だ。「どうでもいい」は、よく出てくることわり文句なんだけど親切におかしいと思ったことをおかしいと言ってくれる。村上龍はあまりブレーキをかけない。当然、右翼でもないし、左翼でもない。イデオロギーに縛られた印象が無いので左翼的に見えるかもしれないけれど、思考停止した左翼とは根本的に違うし別な意味で硬直的な右翼とも違う。お節介といえなくもないんだけど、現状を認識する考える人の話として面白かった。

  • 物怖じしない語り口が新鮮で後腐れがない。

  • 村上龍は嘘をつかない。
    きれいごとをいわない。
    人に期待をしない。
    人を高くも見ない。低くも見ない。
    そもそもあまり評価をしない。

    ただ現実を見て、それにまとわりつくバイアスを全部捨てて、事実だけを提示して見せてくる。
    そんな切れ味鋭い村上龍のエッセイは、衰えるところを知らない。

    「欲望が衰退していることは、事実であり、悪いことだったり、嘆かわしいことではない。ただ、事実なのである。」
    今の若者はけしからんという言葉は、村上龍にとっては無縁な言葉だ。ただ彼が思うのは一つだけ。
    「つまらなそうに、辛そうに、生きているなということ」だけ。
    彼にとっての欲望とは、人生を楽しむための原動力である。
    例えば、遠足の前日にワクワクして眠れないように。輸入盤の貴重なレコードを探してあちこち練り歩くように。
    そんな「楽しい」を放棄し、ひたすら「快適」だけを探しているように見えるのだ。

    だからそもそも、彼のエッセイに文句を言うのは間違っている。それは事実であり、皆が見たくないものをスッと見据えている人間の言葉だ。
    誰もが真っ暗な日本経済や家庭環境や人間関係にうんざりしている今、少しでも暖かい物語を求めている。
    だが、それは真実ではない。
    常に生きることは困難なことである。そして、その戦いは、「逃避」ではなく「事実を受け止める」ことから始まる。
    生きていこうじゃないか。死ぬことだけは否定されるべきだ。この辛い人生を、生きていこう。そして、死なずに生き残ろう。生きているだけで、評価されるような時代が、戦後以来、遂にまたやって来たのである。

  • 決して人におもねることなく、忌憚なく自分の意見を言える人は凄いなぁとただただ感心してしまった。これは自分に自信があるからか?良く分からないけど。

    エッセイなのですらすらと読めますが、本の開き方が洋書と一緒なので吃驚。しかも中身は横書きで二度吃驚。

  •  近日中に、イギリスの主要経済メディアの取材を受ける予定がある。きっとまた、「経済でも対中国など外交でも、日本は息も絶え絶えに見えるがだいじょうぶなのか」と聞かれるだろう。即座に「だいじょうぶだ、心配には及ばない」と答えるつもりだが、根拠を示すのに苦労するかも知れない。「武士道精神でがんばる」とか精神論を説くわけにはいかない。そんなつもりはないし、そんなことをしたら海外メディアからは笑われてしまう。具体的な展望を示さなければならないが、現状ではきわめてむずかしい。 
    「日本は、是帯としてはひっとしたらゆっくりと衰退していくかも知れないが、優れた個人が多数現れているので、文化や科学技術やスポーツなど具体的なぶんやでめざましい成果を上げるだろう。現にあなたの国でも、覇権をアメリカに譲り、政治経済の疲弊が頂点に達したころ、ビートルズが出現したではないか」
     そんなことを言うつもりだ。

  • 現実を隠すためのどうでもよいような抽象的な表現。太平洋戦争では戦争で敗れての撤退を大本営は「転進」と呼んだ。

    草食系、勝ち組など


    政治家の仕事は外交と資源の再分配。


    お前はこれからどうやって生きていくんだ?

    好奇心とエネルギーを持つ。

    経済的余裕が精神的余裕を生む。

    しょうがないからそろそろやるか

    最大限の力を発揮できれば達成できるポイントに目標は設定する

    曖昧な表現を辞める

    自らの欲望を肯定し、それが現実になることでワクワクする。遠足の前夜のような興奮が失われている。そのためにも欲望を持つべきだが、駅前で拡声器を使って不特定多数の人に、私は皆さんを幸せにします。などと票欲しさに大声で叫ぶという行為に個人としての欲望を感じることはできない。

  • サイゼリアああああ。本心から絶賛してるうう。普段どんだけなイタリヤン食ってんだ?・・・という具合に多分に自己愛認知バイアスに塗れているのが愛すべき特徴なのだな。SMしかりサルサしかりサッカーしかり。中田のサッカーはすべて肯定、という具合にサイゼリアのパスタ(生ハムはいいけど、これはさすがに・・)でさえも高級な味として喧伝してしまう脆さと可愛さが、しかし魅力的ともいえる。同じように若い世代に対して同じように社会や政治経済を語っているとすれば少々問題はあるようにも見えるが、なに、この先生はそこまで影響力あるカリスマではない。なりきれない原因は、この自己愛によるバイアスが露見してしまうわかりやすい胡散臭さにあるわけなので、バランス取れた構造だ。そこまで自己相対化して狙っているとすればやはりすごい。先生ならそれもやりかねないところが、また面白いところだ。

  • 音楽について
    "国民的な悲しみが消えたときにメロディも消えたのだ。イタリアのカンツォーネも、フランスのシャンソンも、ポルトガルのファドも、アルゼンチンやドイツのタンゴも、ブラジルのボサノバも、懐かしのメロディと化した。メロディが消滅した後に、ビートと言葉だけの音楽が生まれるのは当然のことだった。"
    聞く音楽がなくてクラシックばかり聞いていた龍さんが出会ったのが、キューバ音楽だったそうな。
    へー!!

  • 社会、経済状況から今の日本の世代論を語る。日本をゆっくりと衰退していくしかないと断じながら、そこで生きる為の希望を模索する。

  • 三葛館一般 914.6||MU

    「草食系と肉食系というごまかし」「23歳なんて若くない」「怒らない若者たち」「逃げ切りの中高年、犠牲になる若者たち」など、村上さんの現実的な文章がスパッと気持ちよく、目次をみているだけでも興味をそそられるエッセーです。
                                  (ゆず)

    和医大図書館ではココ → http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=68931

  • 数年前に書かれた村上龍のエッセイ。社会や若者を中心に独自の目線で痛快に切っていく。納得させられる点が多々あるのだが、(おそらく)意図的に乱暴な表現が(おそらく意図的に)鼻につく。嫌いではない。

    あと、サッカーの話は聞くに値しない批評。いらない。

  • 村上龍の言葉は、ぱりっと乾いている。
    哲学のように、内容を分析的に掘り下げてはいかない。
    表面をかけぬける文章。
    読んでいてとても気持ちよかった。

  • この世には勝者と敗者しかいない。
    政治的に、自分は何ごとかをなすことができると思っている若者はよほどのバカか自信があるかのどちらか。
    日本ではそれほどの金がなくても相応の快適な暮らしができる。
    何かを外部に求め、探し、出会うための努力をしなくても良い。

    戦争はイデオロギーの対立で起こるわけではない。経済的な利害の対立で起こる。だが米中の経済関係は利害対立しているどころか、相互補完的。

  • なるほど

  • 「若者」である私には怖い本だった。村上龍、ホンネを言う人だと思った

  • 読むと、元気になります。
    といっても、
    日本には未来はないよと、
    未来に繋がる希望と欲望がないよと、
    繰り返し言葉にされているだけだが。

    閉塞がどこからやってきて、
    どのように打破すれば己が救われるのかを、
    真剣に考えている人間は、
    読むと元気になると思います。
    むしろ、
    既に自分なりの答えを見出している人が読むと、
    元気になるのかもしれない内容である。

    つまり、
    現実はあまりに絶望的であるということだ。

  • 是非、10代、20代の人たちに読んでもらいたい。ぼやっと思っていた思いが、やっぱりそーだよ!と自信がついた。自信がついたとはいえ、日本自体に、希望が持てないという見解は一緒だし、希望や欲望がないことを若者が怠惰だの覇気がないだの言いたくないという気持ちもすごく理解できた。ほんと、これからこういう若者を少しでも意識改革していくためには一体何をすべきなのか。物凄く大きな、これからの課題である。映画「桐島、部活やめるってよ」をもう一度観たくなった。

  • 熱のない若者達、元気な中高年層。若者に職が無いのは、第一次産業の担い手がほとんど想定されておらず、皆がサービス業を取り合ってひしめきあっているように思える。第一次産業を苦にしない覚悟が、熱のなさと共通するのではないかと連想した。

  • 若者よりに書かれている
    わたしが普段感じていることを
    代弁してくれているような気がする

  • 非公開

  • 今の日本人がいかに欲がなくなったことがわかる。

  • 村上龍っぽい本。現代、という時代を、村上龍がどう捉えているのか、かじることができる。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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