賢者は幸福ではなく信頼を選ぶ。

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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584135303

作品紹介・あらすじ

敗者であふれ、思考放棄の国の脱・幸福論。

感想・レビュー・書評

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  • ページ数は200を超えるが、文字数は然程多くなく、さっと読める。なのに示唆に富み、現代日本及び世界について多くを考えるきっかけとなる。本シリーズはどれもそうだが、めちゃ良書。

  • 案外これから先、いいこともあるに違いない、そう思えるような事象に出会い、確信に近い思いを持つこと、それが希望だ。

    日本の現状を冷静に判断するのは、難しいというよりは、気が遠くなるくらい面倒で、真剣に考えれば考えるほど、神経がすり減り、いたたまれない気持ちになる。

  • 村上龍の視点は鋭く、心に突き刺さる。
    歳をとった感はあるが、その分含蓄を帯びた秀逸な
    一冊となっている。

  • 情報が多い社会で、息苦しさを覚えている。
    毎日が輝いていないと、充実していないと価値がないように思えてしまう感覚は私たちの世代に覚えがあると思う。
    この本を読んで、氾濫しがちな嘘っぽい価値観に振り回されなくてもいいのでは、と思えた。
    今自分が生きている時間、空間が本物で、テレビやネットで目にした情報は、切り取られている上に幻想と空想が混じっていると思う。

  • 対立、幸福、信頼

    結局、捻くれ者でめんどくさい者が好きなのである。

  • 信頼は大事ですよね

  • 村上龍のエッセイ集。
    世界と政治と経済の動きを見ている人の目線だなぁと。
    自分の立ち位置や意識レベルに気づかされる試金石みたいに感じる。
    タイトルの意味は、幸福の追求より信頼の構築が今、わたしたちに必要だということ。

    印象に残ったのは下記2点。

    【対立】
    対立するのが当然という考え方だったら、最初からソリューションと交渉準備しなければならない。

    現実として、対立は個人から国家までありとあらゆるレベルで生じるから、本当は幼児期から、対立というのは当然のこととして存在すると教え、その解決のためには何が必要かを教えなければならない。


    【幸福】
    「思考放棄」に陥った人や共同体には特徴的な傾向があるように思う。「幸福」を至上の価値として追い求め、憧れ、生きる上での基準とすると言うことだ。

    今、私たちに必要なのは、幸福の追求ではなく、信頼の構築だと思う。

    幸福は、瞬間的に実感できるが、信頼を築くためには面倒で、長期にわたるコミュニケーションがなければならない。国家だけではなく、企業も、個人でも、失われているのは幸福などではなく、信頼である。

  • 2013年の村上龍の本。雑誌メンズジョーカーに掲載されたものをまとめた内容。ややくたびれた感のある独特の言い回しだが読んでて楽しい。

    以下メモ
    ●おじさんも若者もバカみたいに大声で話し、笑いながら酒を飲む。きっと辛い人生を送っているのだろう。ひとりで暮らしていてほとんど他人と話すことがない人が、たまに誰かと会うと爆発的に喋るのと同じ。誰かと笑い合うという雰囲気に飢えていて、たまに実現すると、大量の電気信号が脳を流れ、興奮物質が異常に分泌されるのだろう。ユーリアルバチョコフは理由もないのに笑わなかった。
    ●野田政権が政治生命をかけて増税という政策をとるなら、自民公明の「合意」を取り付けるのではなく、消費税引き上げという新しいマニフェストを用意し、解散総選挙で国民の信を問うべきだった。
    ●公約が簡単に反故されてもこれまで国民が許してきたのは、政治家がどんなにバカでもとりあえず自分の給与も生活レベルも年々上がっていたから。
    ●学生から「収入はそれほど要らないから趣味を楽しめて家族を作り、ごく普通の幸福な暮らしができればいいです」と言われたので「それでは、ごく普通の幸福な暮らしを実現するためには年収はどのくらいあればいいと思うか」と聞くと答えられなかった。だからアンケートで「あなたは幸せですか」と聞くのは意味がない。「あなたが幸福だと思える暮らしには年収がいくら必要ですか」という質問にすべきである。
    ●紅白を中止して「東アジア歌合戦」にすればよい。特に東アジアの国々とは仲良くした方が良いと思っているわけではないが、NHKがこれを開催すれば「世界でもアジアでも大きな変化が起こっていて、私たちはその変化に適応しなければならないのです」という強いメッセージを発することが出来る。また東アジアの大衆音楽の文化的主導権も、とりあえず保持できる。日本のメディアには不思議なことに「文化的主導権を奪われるかもしれない」という危機感がゼロだ。
    ●北朝鮮の指導者と指導部が理性を失ったり明らかに発狂する以外、攻撃されることはない。したがって北朝鮮のプライドが満たされるようにある程度真剣に受け止めたふりをして、基本的には静観するのが正しい。
    ●私たちの社会においては、幼児期から「対立は悪」と教える傾向がある。意見の対立、利害の対立はそもそもその存在自体が悪という考え方。幼稚園や保育所でも「みんなと仲良くしなさい」と教えられる。幼児は対立という概念と解決の方法を学ぶことができない。
    ●選手が監督を批判するのはタブーだし、部下が上司に異議を唱えるのも許されない。さらに上司が単独で責任を持って決めた、とするよりも合議制で決められることが多い。「私が決めた」ではなく「みんなで決めた」の方が丸く収まる。決めたのが個人でなくみんな、なので、トラブルや失敗の時の責任が曖昧になる。
    ●対立を回避するためのツールとして日本人は洗練された「敬語」を持っているが、対立が生じた時のツールは少ない。謝ったところで「あなたがそうまでいうなら全部水に流しましょう」とならずに「謝って済む問題じゃないだろう?」となる。解決策を考えられるのか。
    ●勢いのあるIT会社でも、低賃金で単純なプログラムを組む人と、クリエイティブな能力を駆使する少数のスペシャリストという区分が確立している。モチベーションのある子供や若者が高度なスキルを身につけられるようなトレーニング施設もない。体力のある企業が激減しているので入社後に適切で充分な研修を受けられる社員は少ない。多くの企業はすでにスキルを持つ人材を中途採用し、実務のトレーニングを受けていない大多数の新卒者は経験も技術も知識も得られないまま単に年をとっていく。
    ●多くの人が思考放棄に陥っている。シリアスな現実から目をそらし、希望的観測を交えて将来を予測し、考えることから逃げる。思考放棄に陥った人や共同体には特徴的な傾向がある。幸福を至上の価値として追い求め、憧れ、生きる上での基準とするということ。
    ●私たちに必要なのは幸福の追求ではなく、信頼の構築だと思う。外交で言えば日本は緊張が増す隣国と「幸福な関係」など築く必要はないが、信頼関係は重要。企業も個人と失われているのは幸福などではなく信頼である。

  • 10

    カンブリア宮殿の村上龍のエッセイ。
    「寂し国の殺人」以来、二冊目。
    今回も、脱力感ある感じで淡々と進むのが心地よかった。

    一時の幸せを装うさみしい若者たち。他者に合わせることで、幸せを感じようとするがなんだか虚しい。

    本質的には信頼関係を求めている。それが失われた現代の日本を村上龍の視点で描かれてるように感じた。

  • 村上龍の作品は,基本すべて読んでいるが,特にこのシリーズのエッセイ集は好きでいつも楽しみにしている.内容は「賢者は幸福ではなく信頼を選ぶ」というタイトルに集約されている.
    ・今私たちにひつようなのは幸福の追求ではなく,信頼の構築である
    ・信頼を築くには面倒で長期間にわたるコミュニケーションがなければならない.

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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