経済で読み解く明治維新 江戸の発展と維新成功の謎を「経済の掟」で解明する
- ベストセラーズ (2016年4月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784584137239
感想・レビュー・書評
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ボイシーでおススメされているのを聴き興味がわいて図書館で借りました。
江戸幕府の解体と明治維新の必要性が分かり易く解説された本です。
江戸幕府は全国の藩に対して徴税権がなく、また給与はコメで払う石高制であり、それら幕藩体制を変えられないことで大名は貧乏になっていき国力も衰退し、外国に翻弄される構造はとても分かり易かったです。
幕府内の権力闘争によって老中の構成が変わり、その度にリフレから緊縮へ、緊縮からリフレへ、と振り回され結果的に失策になった場合が多く、いつの時代も同じだなと苦笑してしまいました。実力者が権力者になれないー!
また、参勤交代の始まった理由や武家諸法度の内容、貧乏だと思っていた(農民とは限らない)百姓や商人たち民間が海上輸送を中心とした流通ネットワークを作り、消費地のニーズを調べ、より多くの利益を得ようと商品作物や工業製品にチャレンジするという世界に通用する初期資本主義システムを完成させていたことなど、教科書で習ったこととは全く違う実情に、もうなんだかワクワクしてしまいました。。日本人すごいじゃん!
あ、あと昔大河ドラマ篤姫で登場していた調所(ずしょ)様が、薩摩のためにめっちゃ強引な借金踏み倒し計画を完遂したり、相場操作や密輸や賄賂で島津家に多大な利益をもたらしたりしていたことを知って、大河でもやり手のイメージだったけどここまで?!と驚いたりして(笑)
それから、細川護熙のご先祖である細川家の悪質な借金踏み倒しにしつこく言及していたり、著者の偏ったところも面白く読みました。中国を支那と言ったりね。
著者の経済で読み解くシリーズ、他にもたくさんあるからまた読んでみようかな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
明治維新とタイトルにはついているけど、著者もあとがきで謝っているように中身の9割は江戸時代w
教科書で習う歴史とは全く別の視点。
歴史の分岐点には常に経済的な理由も存在していたってのを、現在の経済学?を使って読み解いていく。
江戸時代が教科書で習うような貧しい大量の農民と一部の豪商と武士だけの世界ではなかったってのが判る。
著者が百姓と書くときは毎回しつこく(農民とは限らない)って書いているように、自給自足で貧しい農民の姿はそこには殆ど見られない。
でも考えてみりゃ、天災や飢饉からの復興でも戦争でも何かをするにはそれを支える財源や物資が必要なんだから、自給自足で米作ってるだけじゃ成り立たないわな。
こういう本を読んで歴史小説読んだり大河ドラマをみたりすればより一層楽しめそう。
そしてますます古文書が読めると楽しいんだろうなと思った。 -
徳川家は400万石しかないのに3000万石の日本全体を治めなければならない。通貨発行、管理通貨制度。百姓は決して農民と同義ではなく、たくさんの非農業民を含んでいる。
経済の目で歴史を捉える。普通に歴史というと、政治だったんだということを知りました。なかなか明治維新にたどり着かず、前振り話だと思って読み飛ばしてしまいましたが。 -
やっぱりおもろい江戸時代。停滞なんてイメージがひっくり返る。江戸時代は僕らが思ってるより豊かで先進的で活気に溢れてるんじゃないか。経済を切り口に豊かに江戸時代を描いてくれます。この感動、菜の花の沖と独り群せず以来。
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貨幣経済やデフレの根本のイメージがしやすかった。今後普及する仮想通貨に関しても、通過統一化を果たした時の失敗などの知見がメタファーとして活かせそう。
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大東亜戦争と織田信長と読んできて、
経済で読み解く~シリーズのラストピース、やっぱり面白い
「経済の掟」が本作でもキーとなって、
江戸時代を解いていく様は 3作目になると もう 「なるほど~そうだよね!」と思うくらいに すぐに腹落ちできた
モノと貨幣量の関係や国際金融のトリレンマで
当時の背景がすっきり説明がつくし、
明治維新とは、「巨額債務問題をうまくまとめた改革」という下りには膝を打った
当時の人々は意図してないはずだけど、
幕府の大名への金銀提供⇒財政政策
貨幣の改鋳⇒金融緩和
という具合に 時としてリフレ政策になってしまったのが面白かった -
このタイトルはやや語弊があって実際は、経済史・江戸時代編といったところ。歴史にストーリーを与えて解釈するのはマルクス主義の十八番だったけど、その影響もあって長らく日本では圧政&貧農史観で江戸時代は理解されていた。
一方歴史の教科書は、年表を文章にしただけの単なる固有名詞の羅列。そこで有効な武器になるのが経済史。実は江戸期の貨幣制度は、いまだ金本位制度の段階にいた西欧より進んでいたし、金融制度や生産体制の面から見ても、既に高度な資本主義を実現していた、というのが本書の主張でキー概念は通貨バランス。金貨銀貨に含まれる金銀の価値に縛られる金本位制では、経済が発展すると通貨供給量が不足しデフレになる。日本は小判を改鋳して品位を落としたり、藩札を大量流通させたりしたタイミングでデフレを脱し社会が活性化した、という江戸時代のことを話しながらも常に現代日本と話題がオーバーラップしてくる内容。 -
江戸時代は地方税のみで国税がなかった。400万石で3000万石を支配・統制するのは無理。だから幕府は財政が厳しくなり、結果明治維新を迎えた。幕府というのは軍事政権なので武力で押さえつければどうにかなると権力と支配の事だけ考えて、財政の事など考えずにスタートしたのだから仕方ないような気もするが、それが致命的な欠陥であったと。それでよく265年も続いたなと逆に感心するが。
田沼意次が国税導入を画策したが後ろ盾が居なくなって失敗したというのは新たな発見。田沼に関しては悪徳イメージがあるが、最近見直しも高まっているので今後再評価されていくのかもしれない。
江戸時代の経済史に関しては「XXの改革」程度は知っていたが、経済の視点で歴史を見つめる事はあまりなかったので大変参考になった。今後の歴史の見方の幅が広がりそうである。リフレ・緊縮の是非は別として、双方の振り子によって、生活や文化が影響を受けたというのは紛れも無い事実であり、政治・経済・文化・外交といった複合的視点で歴史を考える重要性に気づかされる。ただし、著者はリフレ派なので、その観点で書かれているという事には留意する必要はある。また著者の個性だろうが他人を貶す・煽る箇所が所々にあるのは残念というか内容がよいのに勿体無い気がする。