- Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
- / ISBN・EAN: 9784588001574
作品紹介・あらすじ
奢侈や安楽,強欲や虚栄,悪徳や欺瞞こそが公益を生み,市民社会の土台をなすと論じ,近代思想の一源泉となった古典。著者自身の注釈,索引等を含む上巻の初完訳。
感想・レビュー・書評
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べき論だけでは世の中は成り立たないことを幾つもの例を挙げて説明している。何しろ書かれたのが西洋だが、江戸時代中期という時間差を感じるが。例えば、妻帯者の牧師 清貧を言う割には立派な教会など、キリスト教関係が目立つ。
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本書によれば、一般的に悪徳と思われている行為が、実のところ、公共の利益に貢献しており、その意味で国家の繁栄は、人間の悪徳に基づいている。こうした議論からは、もはや国家の富や「世俗的な偉大さ」が最高の目的となっていることがわかる。
例えば、誰もが一番容易な方法で生計が立てられるように努めており、商売人は、できるだけ高く売ろうとする。悪者は、消費しているのだから、公益のためになる。 宗教改革がカトリックの態度や愚鈍がなければ進められなかったのであり、また、売春婦が強姦を防止するために役立っているとすれば、逆の性質のものが助け合い、美徳は、悪徳の助力を必要とすると言える。強欲な者がいなければ、浪費する者が困ることになろう。奢侈のない社会は存在しないし、外国の奢侈が自国に入ってきたところで自国が窮乏するわけではない。奢侈によって軍事的に弱体化するわけでもない。昔は奢侈だった品々も、今では最下層の人間の「必需品」となっている。国家全体を考える場合、倹約は、富をもたらさず、むしろ人間を素朴のままにし人口も増やせない。オランダは、倹約ゆえに富んでいるというわけではない。名誉が受け入れられることは、立法者の立場からすれば、好都合であり、名誉は、自負の念に訴えた人為的な情念である。どんな悪女でも、生活必需品と贅沢品の消費に寄与し、社会の利益を生み出す。スパルタは、倹約であり、軍事的名声を博したが、イギリス人ならその偉大さを羨まないだろう。