聖と俗 〈新装版〉: 宗教的なるものの本質について (叢書・ウニベルシタス 14)
- 法政大学出版局 (2014年1月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784588099762
作品紹介・あらすじ
聖なるものは遠い人類の神話時代に発し、古代社会における人類の生存全般にわたって顕現した宗教的価値であり、やがて歴史時代の進展と共に衰退し、近代の工業社会に至ってほとんどその影を没しようとしているものである。本書は、この聖なるものの現象形態全般とその中に生きる人間の状況とを叙述し、現代社会に代表される俗なる世界との対比により、宗教的人間のあり方を問い直す。
感想・レビュー・書評
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原著1957年刊。宗教学の古典であるルドルフ・オットー『聖なるもの』(1917、邦訳岩波文庫)から40年後の宗教学書。
エリアーデの本書は単に宗教学というよりもかなり人類学に近く、哲学・心理学等とも隣接している。
宗教的人間と非宗教的人間の内面世界の対比を克明に挙げてゆく。あまりにも痛快に断定する傾向があってちょっと危うい気もしたのだが、全体に面白く読めた。
20世紀を経て多くの人間は無宗教となったが、その代わりに、宗教に類するような世界像を必死に拾い歩く困窮の民も多く、情報化社会のひろがりによって簡単にデマや陰謀論にはまりこみ、一種の宗教のように凝り固まってしまっているような人も多く見かける。
そのような現代人の疑似-宗教の世界像も、本書が示すような宗教学の観点から分析し直してみることができそうだ。 -
やはり、西洋の—キリスト教の宗教理解を前提としている—学者だなと感じるところはあった。
だけど、近代において軽視され、迷信なり無知蒙昧なものとしてしらぞけられがちな宗教理解ないし宗教体験に対して再考できた。
あたかも古代の宗教理解や神話の儀礼的反復が根源的で真実を体現したものみたいに書かれているように感じられて、思わず頭を傾げてしまうところもあったが、それもまた本著が近代人としての観点を揺さぶるものだからなのかもしれない。