- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591004005
感想・レビュー・書評
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「ラプンツェル」のお話かと思われそうだが、こちらは日本のお姫様のお話。
グリムやディズニーにばかりお姫様は登場するわけではない。
類まれなる美しさゆえに玉の輿に乗ったお話なのだが、これが実は「道成寺」の縁起話。
「道成寺」と言えば、誰でも知っている「安珍・清姫」のお話があるが、こちらはもっと時代をさかのぼる。文武天皇のおわします奈良時代である。
その文武天皇のお后となり、聖武天皇を出産したのが誰あらぬこの「かみながひめ」。
道成寺にまつわるそんな伝説など知りもせず、桜満開のお話だし有吉佐和子さんの作品だし、何と言っても挿絵はあの秋野不矩さんだし、きっと雅な雰囲気だわ・・と読み始めたワタクシ。
なんともおおらかで美しい世界に魅せられてしまった。
お話の舞台は和歌山県の日高の里。
海辺の町に、美しい女の子が生まれるが、どういうわけか髪の毛が生えない。
それを不憫に思った母親が、自分の因業に報いるためと、漁を妨げると思われる謎の「ひかりもの」を取りに大荒れの海にひとり飛び込む。
ひかりものは金の観音像で、以来海は凪いで浜に大漁が続くが、母親は亡くなってしまう。
それから女の子の髪が伸び始め、身の丈よりも長くなって美しく成長していく・・・
激しく切ない「安珍・清姫」は、そのおどろおどろしさもあって多くのひとを惹きつけ、能や浄瑠璃、舞台劇や映画にまでなった。人はやはり怖いもの見たさの気持ちが抑えられないのだろう。
それに引き替え、こちらのお話の慎ましさと清らかさはどうだろう。
はじめに美しさゆえに玉の輿の乗ったと言ったが、かみながひめは自分のために我が身を投げ出した母の恩と、幸運を導いてくれた観音様への感謝を忘れずにいた、実に心美しい女性だったのだ。
桜の向うに母の供養のための道成寺が建てられるラストでは、読む方もともに幸せになる。
日本画家としてその名をはせた秋野不矩さん。桜を描いたら当代随一と名高いお人だった。
一度だけ京都の美術館でその作品を目にしたことがあるが、たとえようもなく美しく品があり、まるで高貴な香りまで漂ってきそうな絵だった。
長い作家生活の中で絵本はこの一作のみを書かれた有吉佐和子さん。
おふたりのこの奇跡のようなコラボは、どのようにして実現したのだろうか。
約10分。低学年から大人まで。桜の季節にどうぞ。 -
髪をのばしている小2娘は、「かながひめ」のタイトルと、かみながひめの表紙絵にくいついてきた!
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髪を長く美しく伸ばす、というのは、女の子にとって一度は憧れるものではないでしょうか。
ただいま髪を伸ばし中、ラプンツェルに憧れる小2娘も例外ではなく、こちらの絵本タイトルと表紙絵をみて「読みたい!」とくいつきました(笑)
豊かな髪を抱くかみながひめの表紙絵から、絵巻物のような絵が続くことを想像して読みはじめましたが、前半は絵巻物というよりは紙芝居のような絵でした。
漁村に暮らす人々の細々とした暮らしがよくわかる絵や、海の荒々しさは、この本が絵巻物ではなく「絵本」であることをハッキリ示していました。
お話は、前半はかみながひめのお母さん、後半はかみながひめが主人公の2部制物語です。
幼いかみながひめの髪が生えないのは、自分がわがままをしてきた報いだと考えるかみながひめの母。
現代では「いやいや、そんなことはないよ」と言ってしまえるかもしれませんが、昔はこうした考え方を自然とする世の中だったのだなあと感じ、その考え方が変化しうるだけの時間が、この物語と現代のあいだに横たわっているのだなと感じました。
和歌山県の道成寺の成り立ちや、かみながひめが天皇の妃となったことを伝える言い伝えでもありますので、そうした実際の場所・人とつなげてみると、よりおもしろいかもしれません。 -
安珍清姫ではない道成寺の物語。
当時の女性の幸せを描いた物語。
髪が美しければ女性そのものも美しいだろうという価値観。
それにしても…母さんそんなに悪いことしたの?
報いというけど、それほどのわがままってどんなわがままなのよ。 -
「母の必死のいのりで、かみの毛のはえなかったむすめは美しい黒かみをさずかるのですが・・・。紀の国につたわるお話。桜の季節に」
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髪の毛が生えてこない女の子
母親が自分がわがままだったのがいけなかったと海が荒れていて沖に光り物があるときに取りに行く
光り物は観音様の像だった
海は静まるが母親はその後亡くなる
女の子の髪が生え出し、命と引き換えの髪の毛だったので捨てないで木の枝に掛ける
ツバメが都まで運んで、藤原不比等の目に止まり、養女になる天皇の妃になる
天皇は娘の願いを聞いてお寺を建てる
和歌山県、紀伊国、日高の里
道成寺、女人開運
文武天皇の妃となり聖武天皇を出産
道成寺は安珍清姫でも有名 -
美人薄命
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和歌山などを舞台とした作品です。
「道成寺」にまつわる本を探していて見つけた本です。
相手が高学年だったので、松谷みよ子さんの「道成寺」を読んだのです...
「道成寺」にまつわる本を探していて見つけた本です。
相手が高学年だったので、松谷みよ子さんの「道成寺」を読んだのですけどね(笑)
日本むかし話の面影を残す、ちょっと懐かしい雰囲気がありますよ。
ぜひお読みくださいませ~~(*^^*)
こういう絵巻物を思い出すような絵(源氏物語絵巻みたいな感じの絵)すごく好きなのです。図書館にありましたので、早速予約しました!ご紹介ありがとうございます。
再訪してくださってありがとうございます!
昔話はどの年齢でも不動の人気ですよね。
とくに絵巻物のゆかしい雰囲気は子...
再訪してくださってありがとうございます!
昔話はどの年齢でも不動の人気ですよね。
とくに絵巻物のゆかしい雰囲気は子どもたちもちゃんと感じ取るようです。
どうぞ楽しい読書となりますように(*^^*)