翔ぶんだったら、いま: 青葉学園物語 (こども文学館 11)

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  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591007846

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  • 青葉学園の夏休みが終わり、秋が来ました。のぞきをした兄ちゃんにそれと知らず口止めおやつをもらったり、二千円猫ババして町に遊びに行ったり、悪ガキたちは怒り笑い色々考えて、また少し成長します。原爆により子も孫も失った老夫婦の悲しい言葉をしっかり噛み締めて、同じく原爆で亡くなったそれぞれのおとうさんおかあさんを思い出し、周りの人をいとおしく思える。翔ぶんだったら今。泣けました。

  • 『右むけ、左!』、『さよならは半分だけ』に続く、青葉学園物語の3巻。

    10月を「自由月」ともよぶ日々、道で拾った大金を警察へ届けにいったら、夏の西瓜泥棒のことを思い出したおまわりにどやされ、ええいと、その金で、学校をサボって街へくりだす話が出てくる。1~2巻ではほとんど書かれていなかった原爆のことも、ウドン屋のじいさんとばあさんが原爆で子や孫を亡くしたと語るなかで書かれる。こんなことも書いてあったっけと何十年ぶりに読みなおして思う。

    街へくりだし、腹がへったのうと川むこうのバラックどおりをぬけて食べに入ったウドン屋で、店のじいさんとばあさんが、うどんを食べる子どもらをみながら、原爆でうしなった孫のことを縷々話しだす。しめっぽく話しつづけるじいさんにソッポを向いていた和彦だったが、拾った大金の残りをぜんぶそのウドン屋に置いてきたんじゃと言う。「ええぞ、ええぞ和彦ちゃん!」「えらいのう!えらいのう和彦ちゃん!ええことをしたのう!」

    街にはこんなに人があふれているのに、誰もおじいさんらのことを知らん、みんなバカ揃いじゃ、ウドン食いにいっちゃればええのに、そしたらおじいさんらは喜ぶのにと思う子どもら。

    原爆で親や身寄りをなくした和彦やボータンは、こんなことを話す。
    「おれじゃって、日ごろ、原爆のことなんか思いだしたりせん。きょうは、あのおじいさんにおうて、久しぶりに、おれが四つのときに原爆にやっつけられてことを思いだしたけど…いつもは、わすれてしもうとる」「じゃが、わすれてしもうてええんかのう」「和彦ちゃん、おまえ、お父さんやお母さんがおらんのは、悲しいことじゃと思うこと、あるか?」
    「悲しいじゃの思うたことないわい。とうのむかしに死んだ人びとじゃけえのう。あの人らは」
    「おれじゃって、日ごろ、お父さんやお母さんを想い出したりすることはないけど…なんかのひょうしに、ふっと思うても、ただそれだけのことで、べつにどうと言うこともないけど…」
    「きょう、あのおじいさんに原爆のときの話を聞いて、おれのお父さんやお母さんはどんな人じゃったんかのう、と、きょうは特別、気になって…」
    「もう、おらんもんはおらん。そんな話はするな」
    「じゃが和彦ちゃん。おれらはもう、お父さんやお母さんがおらんことがあたりまえみたいで、べつに悲しいと思うたこともないけど、お父さんやお母さんがおらんことは、よう考えたら、やっぱり悲しいことかもしれんぞ。和彦ちゃん、どう思う?」
    「うるさいのう。そんなこと、知るもんか。お父さんじゃのお母さんじゃの、聞きなれんことを言うな。─気持ちがわりい」
    「じゃが…」「ひょっとしたら、悲しいことかもしれんぞ」

    おじいさんとおばあさんは、自分らが死んでしもうたら子や孫のことを思うもんが誰もおらんようになると言った。そんなふうに、人はいつか、誰からも思いだしてもらえなくなるのか?とボータンは思う。
    ▼顔も思いだせず、いっしょに暮らした記憶もないけど、やっぱりお父さんじゃもん。やっぱりお母さんじゃもん。おれを生んでくれたんじゃもん。すっかり忘れちゃあ、いけんのじゃ。
     ボータンは五年生の頭でそう思った。
     いままでうっかりしていたけど、今度から、お父さんお母さんのことを、ときどき思いだすことにしよう。と、ボータンは決めた。(pp.153-154)

    原爆にやられたとき、ボータンは4歳、和彦は5歳だった。子どもにとって、親をうしなったということは、どんな記憶になるんやろと思う。

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