吾輩は猫である (下) (ポプラ社文庫―日本の名作文庫)

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著者 : 夏目漱石
  • ポプラ社 (1980年5月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591009321

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吾輩は猫である (下) (ポプラ社文庫―日本の名作文庫)の感想・レビュー・書評

  • 上巻より続けて再読。
    猫視点で人間を描いた作品で、漱石の処女作にして出世作。

    下巻で目を見張るのは、「一つの立場やものの見方を正義とせず、すべて徹底的にひっくり返していく視点」だと思う。

    特に顕著なのが、実業家で金持ちである金田(鼻子)夫妻との一連の対決の流れ。
    金田夫妻は主人公の苦沙弥先生に嫌がらせをするために、苦沙弥先生の自宅の隣りにある学校の生徒に、苦沙弥先生宅の庭へボールをしつこく投げ込ませ騒々しくさせる。

    この出来事に対して、苦沙弥先生は怒り心頭だが、家を引っ越さずに抵抗する(立場1)。
    金田夫妻の息のかかった人物である鈴木は、「多勢に無勢どうせ、かなわないのは知れているさ」と、長い物に巻かれ「金と衆に従う(猫談)」ことを勧める(立場2)。
    苦沙弥先生のかかりつけ医師である甘木先生は「催眠術で神経をしずめよう」としてくれる(立場3)。

    ここに哲学者の八木独仙が訪れる。恐らく、彼の考えが一番作者の漱石の考えに近いと思われるのだが(「現代日本の開化」の講演文章等を読むに)、
    「積極的にやり通しても際限がない。目ざわりのものを取り払うと、次はその向こうのものが邪魔になる。自分以外の状態を変化させて満足を求めるのではなく、動かすことができないものはできないものとして、そのままで満足だという心持ちを養成するのがいい(要約)」と、苦沙弥先生にアドバイスする(立場4)。

    並みの作者なら、この独仙の主張と立場を展開したところで、満足して終わると思われる。実際、私も「なるほど」と感心したし、この考え方を示せるだけでも本来なら充分凄い。

    しかし、ここで終わらないところが、本作の徹底しているところで、特色である。
    しばらくして、ほら吹きの美学者迷亭がやって来た時に、独仙の影響を受けている苦沙弥先生を大いに冷やかし、
    「独仙が実際には、地震が起きた時に一人だけ慌てて二階の窓から飛び降りてしまうような俗物で、しかも、彼の思想に影響を受けた男が二人も気を違えておかしくなってしまった」話を明かす。

    このような、すべてに対して徹底して容赦のない視点に驚かされると同時に、「自分に対してもここまで容赦がないと辛いだろうなあ。そりゃあ、神経衰弱にもなる」と思ったりするところもあった。

  • 後半は少し難しかった。結末がなんとも切ない。

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