虫めづる姫ぎみ (日本の物語絵本 2)

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (41ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591077146

感想・レビュー・書評

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  • 音読すると20分かかるため、お話会では使用しなかったが面白いことには変わりはないので記録しておくことに。
    教科書に登場したという人と、そうでない人に分かれそう。
    私は登場した側だが、当時はピンポイントでしか学ぶという
    ことを捉えられなかったので、果たしてこのお話を楽しめたかどうかは謎。
    言葉の意味を古語辞典でひいたり、言い回しに気を取られていた程度だろうなぁ。
    ああ、もったいない。

    平安時代後期の「堤中納言物語」の中の一編で、全10編の中で最も面白いと言われているらしい。
    おしとやかな女性ばかりが登場する古典物語の中で、それはそれはユニークな個性を持った姫様が主人公だからだろう。
    今で言えば「リケジョ」に分類される、このお姫様。
    生きている虫が大好きで、それも特に毛虫が大好き。
    近所の男の子たちを使って来る日も来る日も虫集めに夢中。
    それ以外にはとんと興味を示さないため、身だしなみも野生児のよう。
    たまりかねた両親の注意に対して返した言葉がなかなか秀逸。

    「ものごとは原因と結果を見極めてこそ面白いのです。」

    宮中の女性たちの間で「物語合わせ」なるものが流行したらしく、このお話もそのひとつ。
    珍しい物語や新しい物語に歌を添えて出し合い、優劣を競い合ったらしい。
    物語コンクール?とでも言えば良いのかな。なんとも雅な遊びがあったものだ。
    いつ頃どんな人が書いたかも不明で、この姫のモデルがいたのかどうかも不明だと言うが、そのあたりも大いに興味をそそられる。
    絵もお話を損なわない程度のデフォルメで、色遣いの美しさが嬉しい。

    オチがないので、途中経過を楽しむ一冊。大人もどうぞ。

  • 本当みんな余計なお世話よね。
    でもそれが当時の常識で、虫を愛でる姫君は異端中の異端で。
    それだけで愉快な話だったんだろうな。
    今となってはその愉快さも薄れつつあるかもしれないですね。
    その分周りの人たちの卑しさが目立っちゃう。

  • むかしばなし

  •  平安時代末期にまとめられた短編集『堤中納言物語』の一編を絵本にした作品。

    けらを(ケラ) 和歌に詠まれたりもしてる。田んぼや畑にたくさんいる。コオロギに似てる。
    ひきまろ(ヒキガエル)
    いなごまろ(いなご)
    あまひこ(ヤスデ)

     平安時代人としてはぶっ飛んでたけど、現代人から見ればしとやかなお姫様のお話を、途中までは楽しく読んでた。途中までは。
     「ひらがなは、まだ おかきになれないので、」という一文を読むまでは。
     虫愛づる姫は、自分の言葉で意見を言うこともでき、自分で自分の生き方を決められる高い知性を持つ女性だ。なのにこの一文は、彼女をろくな教育を受けたこともない無教養で不作法なだけの女性だと決めつけているようだ。
     平安時代のカタカナは、漢字を読むための補助記号だった。公文書や学問をするための書物を読む時、漢文やカタカナを読む知識は必須だった。
     虫愛づる姫は大納言の娘として立派な教育を受けたインテリ女性だ。返歌をカタカナで書いたのは、彼女の能力が低いからではなく、右馬之助にむかついてたからだ。ひっぱたけるものならひっぱたいてただろうけど、そうできないから、代わりにかたいごわごわした紙にカタカナで格調高く「くたばれ」と返事を出したんだ。

  • 2016年3月24日

  • 虫が好きなお姫さまって変わってる。
    古典でも、変な物語もあるんですね。
    周りから嫌がられても、気にもせず、好きなことを追求する。
    現代なら、いい研究者になれそうだけど、平安時代には、ただの変人でしょう。

  • 堤中納言物語の中の物語のひとつを絵本化したもの

    古典文学を絵本に、ということで読んでみた。
    絵本というより読み物に近いので、どちらかというと原書などの背景を知っているととっつきやすいのではないか。

    古典には珍しく、おしとやかで身なりを気にする姫ではなく、虫をめでるユニークなお姫さま。
    みだしなみ(眉毛やおはぐろ)にも気にせず、毛虫見たいな眉毛でまっしろい歯をしている。
    そして近所の男の子たちと虫取りに励む毎日。
    右馬之助(うまのすけ)がおもちゃのヘビでおどかしたときの反応も驚いているのを隠し、「うまれるまえのみうちかも~」と。

    物語も変わっていて面白いけれど、物語合わせから生まれた作品というのも大変興味深い。
    物語合わせというのは、珍しい物語や新しい物語に歌をそえてだしあい、その優劣を決める遊びで平安時代の宮中で暮らす女性たちの間で流行。
    原作のさいごには「二の巻きにあるべし」と書いてあるそうで、続編があるように見せかけられているとのこと。
    おしゃべりのつまみなのか。

    wikipediaによるとナウシカはこの姫から着想をえたそうです!

    堤中納言物語
    』(つつみちゅうなごんものがたり)は、日本の平安時代後期以降に成立した短編物語集。編者は不詳。10編の短編物語および1編の断片からなるが、成立年代や筆者はそれぞれ異なり、遅いものは13世紀以後の作品と考えられる。

  • 2012.7.22.sun

    【経路】
    図書館。

    【感想】
    平安の貴族時代のお話といえば、源氏物語がぶいぶい言わせていて雅なお姫かんがでてくる中で、こういうユニークなキャラクターがあるのも素敵。
    へびのおもちゃに女の子らしくあたふたしていることから、男を寄せ付けないために芝居をしているのではという解釈は初めて聞いたのでなるほどなと思った。それでも変な子かわいい。

    【メモ】
    文 森山京(みやこ)
    絵 村上豊
    堤中納言物語

  • 41ページと長いお話で、平安時代後期のお話で、可愛くないお姫様(ドレスはもちろん着ていない)が主人公・・と変わった絵本だが、とてもユニーク。毛虫が好きなお姫様は、美しく飾り立てることなく日々、毛虫の見た目と変態に興味津々。昔昔にも毛虫はいて、それを観察する人がいたのだと改めて想いを馳せることができた。「ものごとは 原因と結果を 見きわめてこそ、おもしろい」という姫ぎみ、あっぱれ♪わが道を進む人が平安の世にもいたと知るのは面白い。『堤中納言物語』に収録のお話が原作とのこと。

  • 息子はまったく興味なし。主人公がお姫様ではね。絵はさらりと綺麗だけど、やはり男の子向きではないな

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著者プロフィール

1929年東京都生まれ。コピーライターとして活躍後『こりすが五ひき』で講談社児童文学新人賞佳作入選。「きつねのこ」シリーズ(あかね書房)で路傍の石幼少年文学賞、『あしたもよかった』(小峰書店)で小学館文学賞、『まねやのオイラ旅ねこ道中』(講談社)で野間児童文芸賞など受賞多数。子どもやそのまわりのおとなたちの姿をあたたかく、真摯に描いた多くの作品が愛され続けている。2018年逝去。

「2018年 『おばあちゃんのわすれもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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