道成寺: 安珍と清姫の物語 (日本の物語絵本 8)

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  • ポプラ社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (40ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591080436

感想・レビュー・書評

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  • 前述した「かみながひめ」からの流れで、こちらも紹介しておこうかと。
    あちらが本来の道成寺縁起であるはずなのに、なぜかこちらの話が道成寺縁起ということになっているようだ。
    平安時代からあった話らしいが、「清姫」という名はなく単に「女」と表記されていたらしい。
    江戸中期の浄瑠璃で「清姫」という名がつけられ、「幼少の頃より容顔麗しく・・」と語られて、お話もより盛り上がるものとなったらしい。
    たぶんそのあたりから、様々な形で演じられることでその名をはせたのかもしれない。
    お子たちに向けて読みたいという方ももしやいらっしゃるかと思い、絵本版で。
    入手できなかったが、「能の絵本」のシリーズの中にもこのお話の絵本版があるらしい。

    ちなみに、「かみながひめ」は701年の頃の話。
    古事記にも載っているという話で、かたや「安珍・清姫」は928年の話。
    道成寺創建から200年以上も後のことになる。
    この作品、松谷みよ子さんのテキストがそれはそれは素晴らしい。
    挿絵の幽玄な魅力と相まって、まるで舞台を見るかのような臨場感をもたらす。
    なかなかこのような美しい文章に出会う機会もないので、ぜひ声に出してお読みあれ。
    ただ力んでしまうとただの怖い話になるので、あくまでもナレーション型の読み方が良いように思われる。
    約15分。高学年以上かなぁ。

    日本初のストーカーの話と揶揄した人もいたが、それは的外れのように思われる。
    清姫は自分のすべてを投げ捨てて安珍を求めたあげく、人間の姿さえ失った。
    かたや僧であるがゆえ、嘘をついてまで清姫を拒否しなければならなかった安珍。
    これは、そんな若いふたりの切実な人生ドラマなのだ。
    因果応報などととても言いきれない、あまりに悲しいお話だと思う。

    和歌山の地名がいくつも登場するので、地図を取り出して調べてみたら、清姫はなんと60キロほどもの道のりを、追いかけたことになる。
    凄まじい恋の執念だ。
    幸か不幸かそんな恋とは無縁で生きてきたが、感情をただ欲しいままに解き放っていると、決して良いことはないよと、いにしえのひとは教えたかったのかもね。

    • mkt99さん
      nejidonさん、こんにちわ!(^o^)/

      私は先月、市川雷蔵と若尾文子主演の映画『安珍と清姫』を観たばかりです。(^o^)

      ...
      nejidonさん、こんにちわ!(^o^)/

      私は先月、市川雷蔵と若尾文子主演の映画『安珍と清姫』を観たばかりです。(^o^)

      映画でも、これは人生の切実なドラマだったと思います。
      映画で観ていると、若尾文子の執念深さと市川雷蔵の優柔不断な苦悩ぶりが際立っていて、私はただただ身震いをしていました。
      映画だと念がビジュアル過ぎて、迫力がありますね。(^_^;
      2018/03/24
    • nejidonさん
      mkt99さん、こんばんは(^^♪
      コメントありがとうございます。
      はい、ワタクシもmkt99さんのレビューを思い出しながら載せました♪...
      mkt99さん、こんばんは(^^♪
      コメントありがとうございます。
      はい、ワタクシもmkt99さんのレビューを思い出しながら載せました♪
      そうですかー、身震いしながらですかー。
      トラウマになりそうで(笑)見るのに勇気がいりますね。
      ほわんとした感じの若尾さんが清姫をどのように演じているのかは、興味があります。
      お話で聞くよりも、眼で見るとより怖いと思います。
      特に映画は音響効果もあるし撮影でも盛り上げるだろうし。
      絵本でもなかなかページがめくれませんでしたよ。
      あまりにも切実なドラマだからこそ、こちらの方が道成寺縁起として根付いたのかもしれませんね。
      何かしら人の心の奥をとらえて放さないものがあるのでしょう。
      とりあえず、こういった「激情」からは出来るだけ遠いところにいようと思います・笑





      2018/03/25
  • 清姫の恐ろしいまでの一途な思いが美しい言葉で再生されます。上手に朗読できるようになりたい!□

  • 「むかし、紀伊の国に清姫という美しい娘がいた。清姫は、年若い山伏・安珍をひと目見て心を奪われた。けれど、清姫の想いは安珍に届かない。思いあまった清姫は…。能、歌舞伎などで広く知られている作品をもとにした絵本。」

  • むかしばなし

  • 若くて清らかな美形であったがゆえに泊まった和歌山の田舎の地方役人の物知らずな1人娘に一目惚れされ、夜這いをされてこれを拒否るのに朝までかかり(宿の意味なし。父親はしっかり娘をしつけろよ!)、あまりにもしつこいので熊野詣の後にまた来ますとウソを言って、参詣後は別のルートで帰ろうとしたら、ストーカー娘の清姫はヘビの姿になって追って来て、最終的に道成寺の鐘の中に隠れた安珍さんを尾でガンガン鐘を叩きながら口からの火で焼き殺すという全くもって刑事事件以外の何物でもないストーカー話。

    清姫さん、13歳でお坊さんに積極的に夜這いをかけるわ、自分から求婚するわ、追いかけて暴力を奮ったあげくに苦しみ抜かせて殺すわ、思い込みと行動力がありすぎて、14歳で情熱が暴走して5日で1つの物語を創ったイタリア・ヴェローナのジュリエットちゃんに対抗できます。

    男性側に全く好かれていないところでは、日本の13歳のほうが悪質度ははるかに高いです。
    洋の東西を問わずしてローティーンの情熱はコワい!
    シェイクスピアさんが言うように、これは大人から見たら「悲劇」ではなく「喜劇」ですわ。

    しかし、安珍さん。
    わざわざ奥州白河から遠い遠い熊野まで参拝したのに、これはかわいそう。
    若くて清らかな美男子ってだけで、この受難。
    帰りに戻ってくるつもりもないのにその場限りのウソをついた安珍さんが悪いというのであれば、もう旧約聖書レベルの厳しさですな。
    熊野の神さま、ちょっとこれはどうよ?!

  • 「道成寺」は、確か、はげしくも悲しい恋物語として、
    昔から歌舞伎や浄瑠璃などでも演じられている作品です。
    名前は聞いたことあっても、
    恥ずかしながら歌舞伎では観たこともなく、
    今回松谷さんの絵本で見つけて、
    再確認の意味で読んでみました。

    いちずな少女の恋心が報われなかったとき
    少女はどうなるのでしょう。

    可憐な13歳の少女・清姫が一目で恋した相手は、
    美しい山伏・安珍でした。
    修業の身の安珍は清姫の想いにはこたえられず、
    その場しのぎのウソをつき、ひたすら逃げだします。
    騙されたと知った清姫は怒りのあまり、
    蛇と化してどこまでも安珍を追って行きます。
    安珍はたどり着いた道成寺で
    匿ってもらうことになりましたが…。

    女心のいちずさと怨念のおそろしさ。
    執念深い生き物とされている蛇に変身するのも
    それゆえのことなのでしょう。
    身震いするほど、恐くて美しい恋愛物語でした。

    おりしも今年は巳年。
    ここまでの執念深さは見習いたいですが、
    ここまで、人を慕い続けられるかどうかが、問題です。

  •  熊野にむかう途中の若く美しい山伏・安珍。安珍を一目見て、恋をしてしまった清姫。もう一度もどってくるという約束(そもそも、その約束をしたのは安珍になりすました別の男だったんだけれど…)をやぶった安珍を追いかけるうちに、その姿は蛇身へと変わっていき…。
     えっ、清姫って13歳だったの!?まず、そこにびっくり。

  • 蛟堂で気になったので借りてみた。うわ~・・・不幸だ・・・。勝手に片思いされて逆恨みされて殺されて・・・。チーン☆だけど、本当はどうだったんだろう?もっと深いお話で読みたいです。

  • 日本の物語絵本。
    安珍と清姫の悲しい恋物語。

    昔(今から千年あまり前)、紀伊の国真砂(和歌山県真砂・まなご)に清姫という美しい娘がいた。年は13歳。
    奥州白河(福島県白河)から熊野権現に向かう旅に出た、若い山伏・安珍は、真砂で庄司に宿を借りた。そして、そこで二人は出会った。
    清姫は安珍に一目見て心を奪われてしまった。そこで、安珍が旅立つ前に、また真砂にもどってきて清姫を嫁にもらってくれるようにと頼む。安珍は清姫の申し出に弱り果てながらも、約束させられてしまう。
    熊野詣を終えた安珍は、真砂を避けて帰ろうとするも、清姫が追ってきた。約束を守らず、裏切られたと思った清姫は、角を生やし、鬼女のようになって追ってくる。川を渡り、道成寺に身を隠した安珍に、ついには蛇に姿を変えた清姫は、釣り鐘に隠れた安珍を、釣り鐘ごと焼き、殺してしまう。

    清純な娘のひたむきな慕情と、僧であるが故に、ウソをついてまでそれを拒否しなくてはならない若者との切ない恋物語。
    仏教の戒め・・・因果応報・・・?


    いや、
    女の私が読んでも、清姫、怖ぇええええ!そりゃ逃げたくなるわ。

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著者プロフィール

1926年、東京生まれ。1944年頃より童話を書きはじめ、1956年、信州へ民話の探訪に入り、『龍の子太郎』(講談社)に結実、国際アンデルセン賞優良賞を受ける。以来、民話に魅せられ創作と共に生涯の仕事となる。日本民話の会の設立にかかわり、松谷みよ子民話研究室を主宰。著書に『女川・雄勝の民話』(国土社)『日本の昔話』『日本の伝説』『昔話一二ヶ月』『民話の世界』(共に講談社)『現代民俗考』8巻(立風書房)など。

「1993年 『狐をめぐる世間話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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