ゆれる

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 213
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591093030

作品紹介・あらすじ

東京でカメラマンとして活躍する弟。実家に残り、家業と父親の世話に明け暮れる兄。対照的な兄弟、だが二人は互いを尊敬していた、あの事件が起こるまでは…。監督デビュー作『蛇イチゴ』で映画賞を総ナメにした俊英・西川美和が4年ぶりに挑んだ完全オリジナル作品を、自らが小説化。

感想・レビュー・書評

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  • 僅か220ページ
    息苦しいくらい濃密な内容だった。

    映画監督の西川美和が自ら書いた作品だが、まず映画ありきなんだと全ての文章から感じられる。
    2006年の作品をなぜか今読みたくなった。
    当然読んでる間は頭の中で映像が流れ、兄「香川照之」弟「オダギリ ジョー」がこれ以上ないキャスティングで存在する。

    兄弟という一番身近なライバル
    愛情と同じくらいの妬みと憎しみ
    この関係を壊したい気持ちと壊すことへの恐怖
    ラスト数ページで涙が込み上げました。

    映画「ゆれる」もう一度観たくなりました。




    • ゆーき本さん
      みんみんさん こんばんは‪*ˊᵕˋ*

      わたしも「ゆれる」すきです。
      香川照之さんの怪演。すごい。
      オダジョーがラスト「兄ちゃん!」と叫ぶシ...
      みんみんさん こんばんは‪*ˊᵕˋ*

      わたしも「ゆれる」すきです。
      香川照之さんの怪演。すごい。
      オダジョーがラスト「兄ちゃん!」と叫ぶシーンも!!映画も小説もいいですよね( ¯꒳¯̥̥ )︎
      2023/03/10
    • みんみんさん
      オダジョー大好きなの(〃ω〃)
      小説のラストで「兄ちゃん」って走る場面がホントいい!
      オダジョー大好きなの(〃ω〃)
      小説のラストで「兄ちゃん」って走る場面がホントいい!
      2023/03/10
  • 小説家という人たちは自分でも分からないあの時のモヤモヤとしたものを鮮やかに言葉に変えてくれるのですね。

  • 母の一周忌、弟が実家に帰ってきた。あいかわらず父との折り合いは良くないが、実家に残った兄が彼らのあいだを取り持つ。
    実家のガソリンスタンドで弟が昔付き合っていた女が働いていた。女は今では兄と仲良くやっているらしい。その日の夜、弟と女は寝た。

    次の日、兄弟と女は渓谷に出かけた。兄と女が吊り橋の上で、口論になり、女が川に落ちて死んだ。
    事故と判断されたが、後日、兄が女を殺したと言い出して逮捕された。

    兄を守りたいと思った弟は弁護士の伯父さんに頼り、兄を無実を証明しようとする。しかし、弟は気づく。自分と女の関係を兄は知っていたのだと。
    そして、弟は証言する。「彼女は兄に突き落とされました」と。

    ---------------------------------------

    東京でカメラマンとなって認められた弟と、地元に残ってガソリンスタンドで働き続ける兄。
    彼ら兄弟の父親も地元に残った人だった。父の兄は東京で弁護士をしている。
    二つの兄弟の対比が興味深かった。

    学生の頃、カーテンを閉め切った四畳くらいの自室でこの映画を観た。オダギリジョーさんのカッコ良さは突き抜けていた。弟に嫉妬する兄役の香川さんの、ボンクラっぽい演技がさらにオダギリさんのカッコ良さを際立たせていた。

    でも、オダギリさんがどんなにカッコ良くても、ストーリーの核になる部分は、オダギリさん演じる弟のなかになかった。
    弟の心理的葛藤を通して、兄が心の奥底でずっと育て続けきた深い闇にスポットライトが当てられる。そのときにやっと兄の本当の感情が見える。

    弟への嫉妬。
    長い期間を経て、やっと手に入れようとしていた女を兄は弟に横取りされた。そして、兄はそのことに気づかないフリをした。弟が実家にいた頃とおなじように。

    兄弟だからこそ、感情が捻じれてしまうことってあるんだよな。

  • 兄は彼女を殺したのか。弟は何を見たのか。身勝手で矮小な人間の姿は本質に近いのだろう。それでもガソリンスタンド従業員の青年の成長に小さな光を見る。

  • 何が真実なのか

    真実はそれぞれの中にあるということか
    それぞれの信じているもの見えているものが真実なのか

    憎悪、嫉妬、優越感、劣等感、、、、
    どろどろした感情がないまぜになっている
    でも不思議な透明感に包まれている

    誰もが自分自身を他者のイメージの中にうまく当てはめようと演じているのかもしれない

  • とあるカフェに置いてあったので、パラパラとめくっていったら止まらなくなりました。でも全部読む時間もなく、残り半分は後日本屋で読んできてしまいました。

    途中で、こういう展開かな?と気づくのですが、小さな疑問はちょこちょこと残ります。
    いや、展開のよさ、かな?もっとえぐってほしかったような気もします。
    映画もみてみたい。

    2016年11月 再読

  • ほんと西川監督は小説書くのも上手い。ちょっとした表現とか、比喩とか、感情とか。映像を見てるかのように想像できる。
    映画を見てるからってのもあるかもしれないけど。
    映画以上に、ラストが意味深。

    映画では目つきや映し方で表現するものを言葉にするのは大変だと思う。けど、映画以上にゾクッとさせるものもあった。
    『ぽたぽた、ひたひた、と少しずつ、そして絶え間なく落ちてしみを広げて、最後は肉を腐らすだろう』
    これなんて映画からじゃ読み取れない感情が出ててイイ。

  • 2013.2.19 図書館
    兄の狂気がすさまじい。闇が深い。本だと登場人物の細かい心情がよくわかるが、映画でのあの演技あってこそだなと思う。
    香川照之素晴らしい。

  • 一人称の語り手がぐるぐる変わっていって、大方の登場人物については心理までわかることになり読者に優しい小説だと思った。女性が書いたにしては男視点に過ぎる気もしてその辺が不思議。

  •  母の一周忌を迎え、法要のため実家に帰ることになったプロカメラマンの猛(たける)。告別式にも帰らなかった息子を、父親は敵意の眼で見るが、家業の燃料店を継いだ兄は、満面の笑みで弟を迎える。
     兄はガソリンスタンドを経営し、そこにはかつて猛の恋人だった智恵子が働いていた。兄と智恵子の打ち解けた様子をガラス越しに見つめる猛。2人の関係を知らない兄は、翌日3人で渓谷に行こうと持ちかけ、猛もその誘いに乗ることに…。しかし、猛がつり橋を渡り、写真を撮っている間に、智恵子がつり橋から転落し、そこには動けなくなった兄稔の姿が…
     はたして、これは事故?それとも兄に殺意があったのか?
     注目の中、裁判が始まるが…


     プロのカメラマンとして活躍中の弟と、家業を継いで独身のまま田舎で暮らす兄。「温厚でやさしい兄を慕う弟と、いつも輝いている弟が自慢の兄」という構図が1つの事件をきっかけに、揺らいでいきます。「つり橋」さながらに揺れる2人の心情、兄弟関係。
     同じように家業を継いだ弟である稔・猛の父勇と、奇しくも稔の弁護人となった兄修もまた、心にわだかまりを抱いたまま年月を重ねています。『スコーレ…』は女のきょうだいだったけど、男同士もまたいろいろあるんだなぁ~、難しいなぁといろいろ考えさせられました。
     以前から気になっていた1冊ですが、映画ありきの監督自らのノベライズとのことでした。しかも調べてみたら、オダギリジョーと香川照之が兄弟だとか…。ハマリ役すぎるキャスティングで、しかも落ちていくのが真木よう子というから見応えあり過ぎです。本でも十分ズ、ズ~ンと来るので、映画はしんどいかなぁ。とはいえ、それぞれの立場から1人称で進む形なので、とても自然で読みやすかったです。

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著者プロフィール

1974年広島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。在学中から映画製作の現場に入り、是枝裕和監督などの作品にスタッフとして参加。2002年脚本・監督デビュー作『蛇イチゴ』で数々の賞を受賞し、2006年『ゆれる』で毎日映画コンクール日本映画大賞など様々の国内映画賞を受賞。2009年公開の長編第三作『ディア・ドクター』が日本アカデミー賞最優秀脚本賞、芸術選奨新人賞に選ばれ、国内外で絶賛される。2015年には小説『永い言い訳』で第28回山本周五郎賞候補、第153回直木賞候補。2016年に自身により映画化。

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