マルクスの『資本論』 (名著誕生)

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制作 : Francis Wheen  中山 元 
  • ポプラ社 (2007年9月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591099124

マルクスの『資本論』 (名著誕生)の感想・レビュー・書評

  • ランシスウィーン著、中山元訳「マルクスの資本論」poplor1(2007)

    *資本論は2つの魂があることに気がつく。第一は、資本主義という社会システムの内在的論理を全体としてとらえようとする観察者としての魂。第二は、資本主義社会の限界から革命が発生し、新たな共同体、マルクスが言うところの共産主義社会に向けた転換が発生することを期待する革命家としての魂。
    *これまで多くの人々は第二の立場から資本論を読んでいた。1971年のロシアのおける社会主義革命の成功が資本論の言説のただしさと受け止められたためだ。ロシア人はレーニン主義に過剰な意味を見いだした。帝国主義時代においてはレーニン主義が唯一の正当的マルクス主義で、もはやその他のマルクス主義は成立する場所をもたなかった。西欧では、ドイツ社会民主党、オーストリア社会党、などに結集した社会民主主義者は、当初、自らがマルクス主義を継承すると考えていたが、徐々にマルクス離れを起こしていく。その原因は資本論で展開された資本主義の内在的論理を理解しなかったためである。その点日本におけるマルクス主義は独自の発展をした。マルクスレーニン主義を唯一の正当的マルクス主義と信じる人々は日本共産党とその周辺に結集。しかし、それとは別のマルクス主義者もアカデミズムと論壇で大きな影響力を持った。
    *マルクスは将来、資本家になることを志望する資本か見習いの視座で書かれているという見方がある。言い換えれば、マルクスは労働者の立場ではなく、資本家の立場で資本主義を見ている。だからこそ生産過程における労働力商品の重要性がわかる。労働力の対価である賃金は労働に対する対価ではない。労働力は賃金以上の価値を生み出すことができる。その差額分が余剰価値なのである。常識で考えても、企業は従業員に賃金を払ったあとに残りが全くないのであれば、企業として活動する意味がない。資本家はこの余剰価値の最大化を目指して行動をする。資本論が解き明かした最大の秘訣は労働力が商品化されて、経済のすべてが商品経済で行われるということである。労働力の商品化から資本主義が生まれる。言い換えれば、労働力の商品化以外のメカニズムで経済が運営されるようになれば資本主義システムは脱構築される。労働力は商品であり、その価値はすべての商品と同じように、それを生産し再生産するために必要な労働時間の量で決定される。
    *マルクスは、資本主義のもとでは絶対的ではなく、相対的な賃金低下がおこるということである。
    *マルクスは商品は、2つの特性があると主張している。使用価値と交換価値だ。

  • この本は資本論を読むための手引きとなる本でしょう。

    前半はマルクスの人物像や出版までの経緯について書かれているがこれがまた面白い。

    本の締め切りに間に合わない数々の言い訳に触れることによりこれまで教科書でしか聞いたことのなかったマルクスという名前にとてもイメージがつきやすくなると思う。締め切り破りすぎてて笑った。

    後半は出版後の世の中の反応や資本論について。
    最後に書かれている佐藤優さんによる解説もよかったです。そこだけでも読む価値があると思います。
    「労働力商品の対価である賃金は労働に対する対価ではない」という文章は新たな視野を与えてくれました。

  • 最初の章が一番興味深く読めました♪

  • 『資本論』の入門書但しこれを読んで分かった気になることはできなかったですが。締切嫌さでマジで肝臓悪くするマルクス、など笑い話みたいな挿話もあり、楽しく読めた。

  • マルクスの『資本論』の成立過程(とくにマルクス自身の借金苦や好奇心に駆られて他の著作にかまけたり、共産主義者と距離をおきながらも興味津々で評議員などやっていたこと)や、その後の影響などをまとめた非常に良質の入門書の翻訳です。マルクスは若いことから何度も雑誌を発禁にされた「札付き」のジャーナリストで、なんども「できた」と宣言しながら、結局生前には『資本論』の1巻しか刊行しなかったこと、マンチェスターの工場経営者であった(「勝ち組」の)エンゲルスが、マルクスの遺稿をまとめて、2巻・3巻を発行したことが書いてある。だから、資本論は1巻と後の巻では性質がことなること、『資本論』は未完であり、聖典視してはならないことが指摘されています。マルクスの思想の解説では、「商品」や労働力、余剰価値の部分がたいへんわかりやすいし、「地獄めぐり」という文学的モチーフがあり、アイロニーを主とする文体があることも指摘されています。影響の部分ではフランス・イギリス・ロシアなどの影響を概観し、アルチュセールや近代経済学がどうマルクスを読んだかが書いてあり、ジョージ・ソロスや、ウォール街の銀行家、「ターボ資本主義」の論者がマルクスを深く読み、影響をうけていることを指摘しています。あとがきは佐藤優氏の文がありますが、なかなか面白いです。このまま「新自由主義」(ターボ資本主義即ち純粋で凶暴な資本主義)が支持されつづけると「格差社会」などというヌルイ状態ではなく、本物の「貧困」がやってくると警告している点は傾聴すべきだと思います。また、ロシア専門家の観点から、マルクスの書き方がユダヤ教のラビであった家系の影響で、タルムード学に似ているという所は興味ぶかい点です。また、日本のマルクス研究、とくに宇野弘藏の研究にふれている点も評者の見識を感じます。

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