月のうた

著者 :
  • ポプラ社
4.05
  • (31)
  • (44)
  • (21)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 193
感想 : 50
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591099551

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 小学4年生の時に母をガンで亡くした民子の成長と、その家族の物語。

    各章が、民子、継母の宏子、母の親友の祥子、父亮太それぞれの視点から描かれる手法。
    最初の民子の章は辛かったです。
    まだ中学生の民子は、母と祖母の死を受け入れてはいても、我慢をし続けていることが多数ある様子で、痛々しくて、悲しくなりました。
    この章では宏子も亮太も、私の中では悪人の立ち位置で、最後に今のように温かな気持ちで読み終えることが出来るとは思っていませんでした。

    とても素敵なお話でした。
    民子が幸せになれますように。
    国原家の残り3人も、楽しく暮らしていけますように。

  • 数年前に穂高さんの本に出会って
    ずっと読みたくて
    タイミングをはずしてここまできた一冊。

    今の私にはこの本が必要で
    読み切ることができて良かったと本当に思ってます。
    欲してるものとか
    正直自分ではよくわからないけど
    自然と手にとっていて何とも言えない気持ちです。

    母親・美智子はガンで亡くなり、
    父親と
    再婚相手の宏子と
    老人ホームで亡くなった婆ばと
    美智子の親友である祥子と息子の陽一と、

    そして美智子の子どもである、民子。

    不器用で愛のある家族の話です。

    繋がりのある短編で
    民子の目線からの「星月夜」
    継母の宏子の「アフアの花祭り」
    親友である祥子の「月の裏側で」
    父親からの「真昼の月」

    自分が年を重ねてきているからか、
    もちろん民子の話はぐっときましたが
    自分の感情が残っているのは継母である宏子。

    彼女は再婚相手であり、父親とも年が離れているし、
    料理もだめで、御惣菜ばかり買って、
    口調も適当で
    本当にダメ女として描かれていくのかと思っていました。

    親族たちに陰口をたたかれても
    負けない彼女は
    本当に幸せになるべきだし
    きっと幸せになれる。

    とにかく物語の真ん中には
    「終わり」と「始まり」が
    静かに横たわっていて
    それをしっかりと受け止めて行く民子の姿は
    周りのおとなたちよりも
    ずっと格好良い。

    と言うか、大人なんてそうなのかもしれない。
    年齢を重ねた分、
    いろんな感情や状況や
    思考が頭をぐるぐるしていて
    足踏みや躊躇をする。

    どんなに気をまわしても
    思っていても
    相手に伝わらないこともあって。

    でも、
    それでも
    相手を大事にする気持ち
    寄り添っていたい気持ち
    月と一緒に
    その気持ちと物語が進んでいきます。

    不覚にも泣いてしまいました。苦笑
    民子の発する言葉が
    的確で優しくて、思いやりがあって。
    そーゆーあったかさに触れる瞬間て本当に愛おしい。

    昔の私だったら読めなかったかもしれない。
    家族にも子どもにも感情移入できなくて。
    もちろん今でも完全ではないけど。

    月の裏側にいる大切な人たち
    優しく見守って
    そして微笑んでくれているんでしょうか。
    こんな季節なのに
    夜道でホットレモンを飲みたくなる一冊です。苦笑

  • 月がつなぐ親子の話

    しすかに横たわるあたたかさがよかった

  • 「本当のやさしさってのはね、自分のことは全部背負いこんで、きっちり落とし前をつける強さがないと出てこないもんなの。そういう覚悟がある人だけが他人に本当にやさしくできるの」

    登場人物の視点を変えながら、同じ状況を違う視点で描きながら、物語は少しずつ進んでいく。
    ”死”が絡んでいるのもあると思うけれど、其々が互いを思いやる気持ちにあふれていて、心に沁みる。

    伊吹有喜の本を好きだとここに書いたら、穂高明の本も好きかもよ!とここで教えて下さったので、読んでみました。ありがとうございます。(通勤電車で読むのは危険)

  • 読了後に余韻が強く残る家族の物語。
    章ごとに分かれた人物たちの心模様が読みやすい。
    そして章ごとに読むと人物たちの本心が垣間見える。
    そんな不器用で衝突ばかりの家族がイジらしく愛おしい。
    読み手が優しく見守る形になる構成や、内容の深さや現実など熟読して読むことが出来た本。

  • そっかこれも月の本だったんだ。
    すっかり忘れてた。
    眼鏡かけて星見るとこだけは憶えてたなあ。
    そうそう月は同じとこしか見えないんだよね。
    すっかり忘れてた。

  • 登場人物のことが明確に伝わってきて
    集中して読めた

    旅立ちの春にオススメの一冊
    思春期の女の子をもつお父さんたちにもオススメ


    祖母のことを
    久しぶりに思い出した
    もっといろいろ教わっておけばよかったと反省

    家族で生活できる日々は
    とてもとても短い

    陽一くん、朔望くんの命名理由はよくわかった
    民子ちゃんの命名理由も知りたかったかな






  • 登場人物がよい。
    母を亡くした民子、母方の祖母と父との暮らし、父方の伯母と従兄、父の再婚相手で30代の宏子、母の親友とその息子陽一。
    淡々としていながら強い気持ちで自分を保っている民子。
    章ごとに違う人物の目線で語られ、時系列に沿って進む。
    みんなが民子見守っていて、あたたかい。
    なんだか頼りないお父さんも、一見何も考えてなさそうな宏子も、月をモチーフにした静かなストーリーもよかった。

  • とてもよかった。
    この本に出合えたことに感謝したいです。

    「むすびや」を読んだことで何となく名前を憶えていた作者さん。
    こちらがデビュー作なんですね。
    丁寧に綴られた、とてもとても良い話でした。

    今度はしっかり名前を刻み込みました。
    別作品も読もうと思います。

  • 子どもと大人というのは時間軸の話で、人間としての度量の大きさとか優しさとかはは子どもと大人という縦軸とはまた違ったベクトルで決まっているような気がします。
    もちろん経験によるものも多大とは思いますが、死ぬまで心が狭くて優しくない人なんて腐るほどいますから。
    主人公の民子は中学生ながらナチュラルに度量が大きく、大人縦軸の拡張でさらに将来開花しそうな、意思も強くて優しい女の子。でもそういう風にあからさまに書いていないのが憎い。それなりにイライラしたりぶつかったりするし、基本愛想が不足しているのですが文章から読み取れる情報だけでも真っ直ぐ育っているのが感じられます。
    民子は母を早くに亡くし、その後若い後妻が来るのがポイントなのですが、ここは是非読んで確認して頂きたいです。父親がちょっとあんぽんたんなのは女性陣を引き立てる為なのでしょう。

  • 「むすびや」でその世界にハマったのをきっかけに読んだが、思ったほどのイメージではなかった。でも、人の温かさに通じるものはあって良かった。

  • 小学四年で母を病気で亡くし、2年後、大好きな祖母も亡くした民子。その民子と彼女を取り巻く人達との話。民子目線の章から始まり、継母、亡くなった母の親友であり、民子の幼馴染の母でもある女性、そして父親目線の章へと続く。各章の主人公だけでなく、祖母、幼馴染、伯母、従兄など、たくさんの人が民子をいつも側で温かく見守る。月のように…216ページとボリュームとしては少なめのページ数から伝わってくるものは、とても大きい。中学生の姪に勧めてみようか…

  • いい話を読んだなぁ、って素直に思える小説だった。読み心地最高!毎日、月を見て歩きたくなるぞ。

    ある家族の物語である。その家庭では妻であり母であった人が肺がんで亡くなっている。そこに若い女性が嫁いでくる。当然その家族には不協和音が生じる。で、その不協和音がどう静まっていくのか?美しい和音になっていく過程を家族を構成する個人個人の目線(一部外野目線含)で追いかけていくテーマで描いた4編からなる短編集である。

    日本人にとって理想の家族とは「サザエさん」一家であったり、「ちびまる子」一家であったり、「東京バンドワゴン」一家であったりするんだろうけど、この作品の一家も、これら理想に匹敵するくらい素晴らしい家族なんじゃないかなと、むしろ現代日本にはこういう家族形態こそが目指すべき姿となるんじゃないかな、と思えてくる。

    娘の民子の健気さが実にいい、賢くて気配りができてしっかりしてて、でも実は張りつめて生きているので相当しんどくなっていて…
    天然系の後妻宏子も、母親の親友とその息子(民子のBF)もいい味出しているし、どしんと構えた民子の祖母や宏子の母親も素晴らしいが、この作品集のキモはやっぱり民子である。娘育てた経験のある男は、マジで健気さに震えるぞ!

    そして、情けない父親像がまた…、物語後半で赤ん坊に名前を付けることになるんだがそのセンスときたら…、民子が嘆くのもムベなるかな。けど多かれ少なかれ、世の父親はこういう風なもんなんだろうなぁ、俺含め。

  •  一つの家族の話です。娘、継母、母の友人、父親、いろいろな目線で綴られていきます。それぞれの人の想いを読み進めるうちに、この家族の絆が浮かび上がってきます。おばあちゃんの思いが泣けました。
     女って強いなって。いやいや、強い女がたくさん出てきます。

  • 「月のうた」穂高明◆新しい母親、親戚のお兄ちゃん、幼馴染の男子…。主人公・民子の周囲で変わりゆく関係と変わらない関係。著者のデビュー作だそうです。部分部分ではきれいなところもあるのですが、全体的に予定調和というか、どこかで読んだ話を繋いだような印象が拭えぬまま終わってしまった。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:913.6||H
    資料ID:95070482

  • 十五夜読書にて。
    ポプラ社小説大賞優秀賞受賞作。
    4章からなる作品ですが、各章のタイトルも月にちなんだタイトルがつけられていて素敵です。
    章毎に視点が変わり、視点が変わることで登場人物達のそれぞれの思いが浮かび上がり、温かく絡み合っていく。
    何か大きな盛り上がりがあるわけでは無いのですが、ただただ静かに紡がれていく物語がすっと心に入ってきます。
    作中で描かれる月夜の下での様々なエピソードがとても良かったです。
    思いがけず良い作品に廻り合えました。
    是非月の綺麗な夜に読んでみて下さい。

  • お母さんをガンで亡くした少女の成長と周辺の人々からの目線で書かれた話。

  • ほっとするような、やさしいお話だった。
    1章は母を亡くした民子、2章は継母の宏子、3章は母の親友の祥子、4章は父親…と、視点が変わっていく。
    どの人物の感情も理解できて、読みやすかった。

  • 主人公、民子を取り巻く人たちのそれぞれの視線で描かれた、やさしい愛情に満ちた温かい物語。

    成績優秀な民子は物分りも良い優等生かと思いきや、「伝統」という言葉を隠れ蓑にした悪しき風習など気にもしないし、机を蹴っ飛ばしちゃったりもする子で読んでいて胸がすかっとする。
    さまざまなことを受け入れる懐の深さと、物事を先入観なく見つめられる真っ直ぐな心を持っている民子のように、私も生きていきたいと思う。

全50件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

一九七五年、宮城県生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。二〇〇七年『月のうた』で第二回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。同作は、傑出した筆力を書評家などから絶賛された。他の著書に『かなりや』(ポプラ社)、『これからの誕生日』『むすびや』(双葉社)、『夜明けのカノープス』(実業之日本社)がある。

「2019年 『青と白と』 で使われていた紹介文から引用しています。」

穂高明の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×