やがて目覚めない朝が来る

著者 :
  • ポプラ社
3.64
  • (35)
  • (53)
  • (69)
  • (7)
  • (4)
本棚登録 : 330
感想 : 75
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591100011

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 最初、「ちょっと読みにくい文章だなぁ…」と思いながら読み続けていくと、突然の展開に引き込まれていき、あっという間に読了しました。
    いつか必ずやって来る「やがて目覚めない朝」、それを迎える数々の登場人物の姿に、死があたかも生の一部であるような感覚に陥りました。
    寂しさはあるけれど、誰にも平等に必ずやって来るその日のことをぼんやりと考えながら、今を大切に生きようと不思議と前向きな気持ちになれました。

  • 読み終わった今、心の奥深い場所が温もりのある暖かい手で包まれているような気持ちだ
    人の人生は、糸を紡ぎ、その一本一本の糸を布に織りあげていくもののようにおもえた。
    布が出来上がると、目覚めのない朝がくる
    その時、ああ生きていて良かった、生まれてきて良かったと思えたら、と願わずにいられない。

  • ① この本を選んだ理由
    図書館でタイトルに惹かれて


    ②あらすじ 
     少女の有加ちゃんが、小学生から、結婚して子どもと生活するまでの期間の中で、おばあちゃんの蕗さんと、その周りに集まる人たちとの関わりが、描かれている。
     基本的に登場する人たちの会話が多く、のんびりしている雰囲気が溢れているが、その中で死を意識させられる物語になっている。


    ③感想
     ふわっとしている感じ。そんな中で、みんな死んでしまうから、今の大切さを感じるとともに、いつか目覚めない日がくる悲しさを感じた。


    ④心に残ったこと
     今、ダラダラした生活をしているけど、皆が笑って生活してるな〜と、今を客観的にみてみたり、昔、母が生きていたときの、家族が一緒だったときの、そんな休みの日を思い出してみたり、これが幸せなんだろうな〜と、しみじみと考えさせられた。
     やはり、笑顔が大切なんだろうな…


    ⑤登場人物
    有加
    蕗 お祖母さん
    のぶちゃん 母
    舟(しゅう) 父

    富樫さん
    一松さん
    田幡さん

    久慈融 のぶちゃん父
    久慈充子 のぶちゃん母

  • 登場する人たちが一人ひとりこの世から去っていく。
    静かに去っていく。

    登場した子どもが成長して大人になり、
    子どもという存在が登場しなくなると、
    次へつなぐ命が登場しなくなると、寂しい。

    たとえ満足して、たとえ望んだものに近い形であっても、
    いつか人はこの世から去っていくのだ。
    やがて目覚めない朝がくるのだ。
    人の一生の儚さを感じずには居られない。

    大島真寿美さんの小説を読むのは2冊目。
    どちらも文章が上手だとか、
    読んでいる時に感動した、ということはないのだけれど、
    いつまでも心のどこかに静かに引っかかるものがある。

  • 私(有加ゆか)が蕗さん(有加の父方の祖母)と蕗さんを巡る人たちを語る物語。
    くだらない定義付だと承知の上で「お父さんお母さん子ども」を典型的な家族とするなら、登場人物は皆んな家族が欠けている人たち。でも、皆んな自立していてそれぞれの非常に魅力的だ。お互いに認め合って楽しく友人以上家族未満とう言う感じで付き合っている。

    有加は周りの人たちから大事にされて大人になってゆく。

    淡々と話は進む。大きな山場とかはないので、あらすじが伝え難い。でも私は、有加の目を通して蕗さんや周りの人たちの言動に触れる事で、心が温かくなり、私も「やがて目覚めない朝が来る」まで頑張って生きていこうと思えた。「くだらない事で悩んでいるうちに老いぼれてしまうから」♬と襟裳岬♫ばりに勇気をもらった。

  • 有加が自分の祖母である蕗さんとの時間について語った本です。

    私、大島さんの書く文章って好きみたいです。三冊読んで気づく。
    なんだか静かで、降り積もるように積み上げられていくかんじ。
    読みはじめて、一気に読んでしまいました。
    本の表紙、一枚白い紙をめくって出てくる金から白へのグラデーションのページがこの本にぴったりで、読み終わった後もしみじみ見つめてしまいました。

    出てくる人がみんな優しいからこんな気持ちになるのかなー。
    一番好きなのはミラさんです。
    離婚しそうな有加の話をきいて、「いいぞいいぞ、有加、その調子ー!」って、そういってくれる人がいることってなんて心が安まるんだろう。
    それも、すっごい深い愛情があるからこそ出る言葉だとおもいます。
    「勝手なことして、失敗して、泣いて、のたうち回って、なにやってんだろあたし、なんてばかなんだろ、って自分で自分にがっかりするくらいでちょうどいいのよ。そうやって好きなように生きたらいいわ。失敗したら、みんなはがっかりするでしょうけど、みんなをがっかりさせないために生きることは、ないのよ、有加。あなたはあなたの好きなように生きたらいいの」
    自分に言われているように感じました。

    のぶ子が舟のことを有加に語るシーンは、ちょっと泣いてしまいました。
    本人は全然泣いてないんだけど、すっごくかなしいんだなーさみしいんだなーって思ったので。
    のぶ子が、楽しい時、素敵なものを見た時に「ああ、舟ちゃんは死んだんだった」とつぶやくの、なんかちょっとわかります。
    私も、おじいちゃんはいないんだーと思うのは楽しい時だったから。

    やがて目覚めない朝がくる。
    蕗さんみたいに、有加みたいに、そう思って生きてみようかな。

  • 静かで、美しい。
    内面の葛藤は具体的には描かれず、しかしどんな説明よりも雄弁だ。

    生きる覚悟を、しずかに見極められるかのように。

  • 美しい話。
    この世界の死生観が好きだ。
    出てくる人がみんな美しい。
    読後感は、とても美しい花束を魂がもらったような感じ。
    蕗さんが、バラの花を毎日用意する件がとても好きだった。その想いも含めて。

  • 一度読み終えて、この物語を味わいきれてないような気がして、もう一度最初からゆっくり読み直した。
    ものすごく深いところで、心の奥に染み込んでくるものがあるのに、それを「感想」という言葉で表すことが私にできない。
    星が四つなのか五つなのか、そんなことではあらわせないものがこの物語の中にしずかに潜んでいる。

  • 大島さんのまだ読んでなかった小説。

    ふきさんと主人公ゆかのお母さんのお話。
    ゆかのお母さんみたいなサッパリしたキャラの人が大島さんの小説にはよく出てくる気がする。
    家族がテーマなのかな。

    ☆気になったぶぶん

    蕗さんは、何遍やり直しても、同じ選択をして、同じような後悔をするのではないか、と、運命とか、宿命とか、そういう大袈裟な話ではなくて、その人の領分、とでもいったらいいか。この人の領分で精一杯動いたところで、どうしたってこれだけのものはあふれ出てしまう、こぼれ落ちてしまう、というような。もちろん、違う選択だって出来ただろう。子供を堕ろして、舞台に専念したってよかった。でも、そうしたからって、後悔はやっぱり残ったはずだ。
    →なにをしても後悔するんじゃないか。っていうのは、誰にもでもあるんだろうなぁ。ってすーごく思った。

    愛って難しいから、有加は、愛に応えたらだめなのよ、とミラさんは言った。愛してくれる人達みんなをがっかりさせてやればいいのよ。みんな年を取ったから、有加に自分が学んできたことを教えようとするでしょう。同じ失敗を繰り返さないように、って。愛する有加のためを思って。だけどね、有加。そんなものはいらないのよ、って思ってなさい。勝手なことして、失敗して、泣いて、のたうち回って、何やってんだろあたし、なんてばかなんだろ、って自分で自分にがっかりするくらいでちょうどいいのよ。そうやって、好きなように生きたらいいわ。思いっきり、生きたらいいわ。失敗したら。みんなはがっかりするでしょうけど、みんなをがっかりさせないために生きることは、ないのよ、有加。あなたはあなたの好きなように生きたらいいの。
    →みんなをがっかりさせないために生きることはない。ってとってもいい言葉だなって思った。応える人生は自分の人生じゃないよなーって。

    本当言えば、私は、病院中に触れ回りたかった。この人がどういう人だか知ってますか、と。この人の人生がどんな人生だったか、あなた知ってますか、と大声で知らせて回りたかった。いろんな人に蕗さんのことをわからせたかった。わかってもらいたかった。たんなる一人の病人として、たんなる一人の惚けた老人として扱われている蕗さんに、特別な重みを加えたかった。この人を見て!と。もっとちゃんと見て!と。蕗さんという人の歩みを、その重みを知ってほしかった。でも、すぐに思い直さずにはいられない。それを言うのならば、誰も彼も、特別ではないか、と。私が知らないだけで、あの人も、この人も、それぞれが、それぞれの、特別な道のりを歩んできているのではないか、と。なにも蕗さんだけが特別なわけではない。そして、誰よりも、蕗さん自身がそれを一番よくわかっていた。
    →確かに、舞台に立っていたからってそれが特別ってわけじゃないかも。誰もかれもが不器用ながらにでも一生懸命生きてる。そんなもんだよね。それぞれ一人一人が特別。

全75件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1962年名古屋市生まれ。92年「春の手品師」で文学界新人賞を受賞し同年『宙の家』で単行本デビュー。『三人姉妹』は2009年上半期本の雑誌ベスト2、2011年10月より『ビターシュガー』がNHKにて連続ドラマ化、2012年『ピエタ』で本屋大賞第3位。主な著作に『水の繭』『チョコリエッタ』『やがて目覚めない朝が来る』『戦友の恋』『空に牡丹』『ツタよ、ツタ』など。2019年『妹背山婦女庭 魂結び』で直木賞を受賞。

「2021年 『モモコとうさぎ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大島真寿美の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×