- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591100011
感想・レビュー・書評
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読み終わった今、心の奥深い場所が温もりのある暖かい手で包まれているような気持ちだ
人の人生は、糸を紡ぎ、その一本一本の糸を布に織りあげていくもののようにおもえた。
布が出来上がると、目覚めのない朝がくる
その時、ああ生きていて良かった、生まれてきて良かったと思えたら、と願わずにいられない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最初、「ちょっと読みにくい文章だなぁ…」と思いながら読み続けていくと、突然の展開に引き込まれていき、あっという間に読了しました。
いつか必ずやって来る「やがて目覚めない朝」、それを迎える数々の登場人物の姿に、死があたかも生の一部であるような感覚に陥りました。
寂しさはあるけれど、誰にも平等に必ずやって来るその日のことをぼんやりと考えながら、今を大切に生きようと不思議と前向きな気持ちになれました。 -
① この本を選んだ理由
図書館でタイトルに惹かれて
②あらすじ
少女の有加ちゃんが、小学生から、結婚して子どもと生活するまでの期間の中で、おばあちゃんの蕗さんと、その周りに集まる人たちとの関わりが、描かれている。
基本的に登場する人たちの会話が多く、のんびりしている雰囲気が溢れているが、その中で死を意識させられる物語になっている。
③感想
ふわっとしている感じ。そんな中で、みんな死んでしまうから、今の大切さを感じるとともに、いつか目覚めない日がくる悲しさを感じた。
④心に残ったこと
今、ダラダラした生活をしているけど、皆が笑って生活してるな〜と、今を客観的にみてみたり、昔、母が生きていたときの、家族が一緒だったときの、そんな休みの日を思い出してみたり、これが幸せなんだろうな〜と、しみじみと考えさせられた。
やはり、笑顔が大切なんだろうな…
⑤登場人物
有加
蕗 お祖母さん
のぶちゃん 母
舟(しゅう) 父
富樫さん
一松さん
田幡さん
久慈融 のぶちゃん父
久慈充子 のぶちゃん母 -
蕗さんは有加の父方の祖母だが、「祖母」という認識の前に蕗さんは「蕗さん」だった。父も母も周囲の人間はみな蕗さんを「蕗さん」と呼んだ。
父と母が離婚して、母子は蕗さんの屋敷に移り住む。女三人の生活は満ち足りていていた。そして屋敷には蕗さんと関わりの深い人たちが頻繁にやって来て、有加はそんな大人たちの話を聞くことで蕗さんのことを少しずつ知っていくのだった。
血がつながらない人たちの、強いつながりでこの物語は語られる。
関係性で言えば「孫から見た祖母の話」だが、この本のあらすじとしてそれは適切ではないように思う。
穏やかで、あたたかくなったり、少し切なくなったり。蕗さんの屋敷で暮らしていた有加と同様に、ゆらゆらと漂うような心地で彼女たちの話を聞いていた。
ミラさんのさっぱりした生き方がかっこいいなぁと思う。 -
両親が離婚し、父は姿を消した。母と小学生の有加は、父方の祖母、蕗とともに暮らすことになった。一見、不和が起こりそうな組み合わせだけど、これが不思議としっくりとくる、良好な関係だ。舞台女優だった蕗の当時からの友人達に囲まれ、その生き方を見聞きしながら有加は成長する。そして蕗と父の最後の姿を見る。終盤に差し掛かかった時、改めて表紙とタイトルを見てみると、この物語の情景がさらに沁みてきた。皆の、有加の父親をめぐるシーンが印象に残った。
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1人づつ登場して、1人づつ退場していく。
誰にとっても特別で一度切りな、生まれて人を愛して赦して死ぬまでの、時間のお話し。 -
ちょっと浮世離れしているような本。きれいにまとまっている。もう少し泥臭いところがある方が好みかしら。
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誰にも、等しく「やがて目覚めない朝が来る」のだなぁ。もちろん私にも。
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夏草や 兵どもが 夢の跡
という芭蕉の句をなんとなく思い出してしまった。
自然の営みの中では、人の生死ってなんてちっぽけなんだろう。
その大きな流れのなかで、同じ時代を一緒に生きることになった人たちを、愛しく思う。
そして、誰もがその人なりの、輝かしく美しい時間を紡ぎ出しながら、生をまっとうしていくんだ。
いつか、私にも目覚めない朝が来る。
その時まで、私はわたしなりに、わたしだけの道を歩んでいく。
温かい余韻が残る、心にしみる一冊でした。