獄窓記 続

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591101803

作品紹介・あらすじ

『獄窓記』から4年。囚人コンプレックス、前科者への法的拘束、数々の苦悩、軋轢を超えて、一人の男が日本の知られざる福祉問題に挑む様を綴った感動のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 情報のレベルで知っているのと、経験者の言葉が伝えるてくることの違いに圧倒された。
    もう20年以上も前に出され当時話題になった本だったのに手にすることも、記憶にも残っていない。 (考えてみれば、その頃はまだ本を読むことが習慣化されていない頃だった。)

     山本譲司さんが語る言葉の背景には、良くも悪くも常に1年半の刑務所生活がひかえている。
    ご苦労様。でも、それだけではないのを感じる。それは、山本譲司さんの人間性があってこの経験を貴重たらしめている要因がある。
     文章はちょっと硬い言葉(漢字)が頻発するので、若い人には読みづらいかもしれないが、気持ちを表現するときの向き合い方に純粋さと賢さを感じる。その漢字の硬さが後者に作用している。

     この本を手にとったきっかけは『ケーキを切れない非行少年たち』(宮口幸治)だったか『「鬼畜」の家ー我が子を殺す親たちー』(石井光太)だったか、ほぼ同時に読んだから思い出せないけど、いずれにしても、犯罪を繰り返す人たちの中には知的障害者が多くいて、彼らは悪人とか、凶暴とかに属するのではなく、“小さな犯罪を犯さないと生活していけない”ループの中にいてその原因が知的障害(IQ75〜50)によることが多いということを知ったことからだった。 
     そしてこの知的障害者者は日本の全人口の3.5%〜4%ほどいるということが衝撃的だった。
    だってこれって1クラス35人だとしたら、その中に1人いるという率になる。

     そんな彼等がいったん刑務所に入ったら、その再犯確率は60%にものぼるという。それは、刑務所という施設のなかの運営環境に起因する。
    このあたりの事実の記録が一番の読みごたえがあった。
    「もし、自分だったら、、、」と常に考えながら読まざるおえなかったのだ。

  • 栃木県黒羽刑務所で知的身体的障害を持つ刑務所仲間の世話係を経験した著者が出所後、知的障害者の刑務所内外の処遇改善に取り組むことになる経緯を書いた本。
    獄窓記の後日談として面白い。
    日本で保護司になるには禁錮以上の犯罪歴がないことが条件ですが、ダルクのように経験者が後輩を指導する手法で累犯を減らしている国もあることを知れました。
    犯罪者について考える良いきっかけになりました。

  • 続編も読み応えあり。取材しないと。

  • 「獄窓記」は何年も前に読んだのに,なぜか続編は読んでいなかった。
    で,今回読んでみたが,読み始めてすぐに,なぜ続編に食指が動かなかったのか思い出した。

    私の関心は,多数の障害者が刑務所に収容されている問題にあり,秘書給与詐取事件とか著者個人には興味はなかったのに,獄窓記ではその辺りについての記述も多かったため,イマイチ引き込まれなかったのであった。

    それはこの続編についても同じであって,「いや,私が知りたいのはそういう話じゃなくてー」感は強かった。
    とはいえ,それは読者側の問題。読む価値のある本だとは思う。

    【メモ】
    新聞記者たちは「サツ回り」」の結果,障害者が多く刑事事件を起こしている(その結果刑務所に収容されている可能性が高い)ことは認識している。しかし。それは紙面には全く(あるいは,ほとんど)反映されていない。

    安部譲二「塀の中の懲りない面々」が文学賞受賞に至らなかったのは,前科者差別があったから。との記述あり。(事実なのだろうか???)

  • 獄内の体験記録に続くその後の仮出獄に始まる獄外における記録である
    逮捕・裁判・係留からの後遺症に苦しむことの紆余曲折があって後
    子供の情緒不安定による嘔吐に遭遇することで目覚めて立ち直る勇気を得る
    隠し込んでいた前科者という経験を咀嚼するためにも
    その間の事情を書き起こすことを決意して実行する
    それが元になって出版しドキュメント賞を取り望み通りの福祉の仕事を得
    触法障害者の問題に付いて調査研究へと進む
    更に法務省矯正局の要請によって刑務所の問題点とその解決への提案について
    講演するに至る
    トントン拍子にTVのドラマ化へと発展していくことになる

    現状の刑務所では出所後の暮らし向きに対する何のバックアップもないままに
    出所することに成るのだが
    出所後も前科というレッテルと偏見差別の他にも
    様々な法的制限というリンチともイジメとも言える現実が待ち構えている
    例えば資格が無いとできない仕事が多いことと
    その資格をとるにしても刑期満了後2年だの5年だの経過しないと
    試験さえ受けれないというねじれた社会環境で締め出しているし
    受験のための学校や養成所の受け入れも実質的に拒否されてしまうようだ
    NPO法人設立も満了後2年は申請すらできない上に
    役員として参加することもできない

    しかし受刑した人だけが狙い撃ちされている差別環境を
    見落としてはいけないだろう
    気付いていようといなかろうと
    他人を損ねた罪の意識を持ち合わせていない人がいるだろうか

    悪い奴ほどよく眠り受刑から逃れている事実があると思う
    例えば交通違反をしていない人は誰一人いないはずだ
    選挙に関わる者は気付かないまでも違反をしているだろう
    罪を知的障害者にナスリツケて平然と足蹴にしている者もいるだろう
    利益だと言って声なき他人の未来を五分五分以上に搾取して
    暴利を貪っているこそ泥がこの競争原理社会にあふれている
    善意の第三者を装った権利で弱者をイジメていることに
    気付いてさえもいない者もが山ほどいる

    山本さんがこの本で最も伝えたいことでもあり
    現状に衝撃を受けて第二の人生を注ぎ込むことになった障害者福祉は
    この刑務所暮らしで発見した競争社会と
    それを促す法制度の歪みによって生まれた
    それは初犯者用の黒羽刑務所で用意されている「寮内工場」の指導補佐?
    つまり重度の障害で役に立たない者を集めた掃き溜めだということで
    垂れ流しの彼らの暮らしを支える看守の代わりとなるのが仕事となる

    最後に気になったのは「特化ユニット」という言葉と
    専門化した資格によるサポートである
    ユニットとは単位を表す部隊とか群れと言った
    即物性の強い意味を持つものではないだろうか?
    又専門とか資格というのは
    部分性に特化したもので人間性という全体観を欠いた
    視野の狭い世界をつくりやすく
    善悪観を洗脳してしまうのではないかという怖さを感じてしまう

  • 前作の獄窓記より、明るい兆しがあった。問題提起としてもすごいが、文章としてもすごくよかった。

  • 上に立つことが宿命のような人の文章は遠いが、上の方の動きを知ることができた。また、よく知ってはいてもその内情までは踏み込めない機関の一面も解った。

  •  順番が逆ですがこれで3冊とも読了。『獄窓記』出版までのプロセスが詳細に書かれていてとても興味深い。何ともまぁ運の良い人だと思う。
     PFIで全てが解決したわけじゃないけど,大きな一歩ではあったのだと思う。一度は見学にいきたい。
     奄美に更生保護施設をつくるというのも必要なんだろうな。さて,どこからお金を引っ張るか。
     

  • 前科者というコンプレックス、数々の困難に対して、苦しみ、内省を繰り返しながら、自分が目指す道へ歩みを進めていく山本さんの姿に深く感動した。私も頑張ろうと思う。

  • 【読書】著者は、2000年9月に秘書給与流用の詐欺容疑で東京地検特捜部に逮捕された元国会議員の山本譲司氏。懲役1年6ヶ月の実刑判決を受け、栃木県黒羽刑務所に服役。この本は、その刑務所での実体験を基に書かれたもの。ここで書かれる刑務所の現実は私の新潟での生活保護のケースワーカー時代の経験に重なるものがある。担当した中にも、罪を犯し、刑務所を出所した人がいた。当初は出所者ということで非常に緊張したが、普通の大人しい青年であった。彼のこれまでのいきさつを色々聞いてみると、彼は幼少期から知的に障害を抱えていたものの、複雑な家庭環境から福祉にアクセスすることができず、事件まで至ったものであったものであった。事件に至るまでに福祉にアクセスできれば人生が違ったのではないかと当時どれだけ思ったことか。この手の話は、氷山の一角だ。刑務所にいる受刑者の中にも同様な人がたくさんいるかもしれない。また、問題は、刑務所出所後の人生設計である。何もサポートがなければ、再犯に至るか、生活保護への道に行くことになる。生計を立てる上で仕事を探すにしても、受刑者が背負ったハンデは本当に大きいものがある。新潟での受け入れ先は本当に困難であった。何よりまずは生活基盤の安定をして、社会へのつながりを確保することだと思う。そして次に就労への道を模索すること。刑務所から出所した終わりということではなく、福祉を含めた地方自治体への円滑な引継が必要になってくる。

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著者プロフィール

1962年生まれ、元衆議院議員。2000年に秘書給与詐取事件で逮捕、実刑判決を受け栃木県黒羽刑務所に服役。刑務所内での体験をもとに『獄窓記』(ポプラ社)、『累犯障害者』(新潮社)を著し、障害を持つ入所者の問題を社会に提起。NPO法人ライフサポートネットワーク理事長として現在も出所者の就労支援、講演などによる啓発に取り組む。2012年に『覚醒』(上下、光文社)で作家デビュー。近刊に『エンディングノート』(光文社)。

「2018年 『刑務所しか居場所がない人たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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