教科書に載った小説

  • ポプラ社
3.60
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感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591103180

感想・レビュー・書評

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  •  中高生向けの教科書に載っている小説、その他を佐藤雅彦氏が厳選して集まとめた本。
    殆どは短編ですべて載せてあるけれど、長い話は教科書なので一部抜粋という形。
     昔は、教科書に載っている本なんて、何の興味もなかったけれど、最近、子どもの教科書を読んで、面白そうなものは、自分でも探して読んだりしていました。
     昔は国語が大の苦手だったので苦痛だったけれど、授業を離れて読んでみると、教科書って意外と面白い話が沢山あるんだな、と。
     今回は、この小説集を読んでみて、教科書に載るというくらいだから、これが掲載されている教科書を使っている学校では、当然、授業で読み深めたり、テストなどで何らかの問題が作られたりしたわけで、どんなところがどんな風に出題問題として出されたのかな、と想像しながら読みました。あとがきに書かれている佐藤氏の楽しみ方とはちょっと違う方向性ではあったけれど、楽しめました。

     名作12編、とありますが、この中で読んだことがあったものは、たった一つ。リヒターの『ベンチ』(『あの頃はフリードリヒがいた』より抜粋された話)のみでした。(確かに、この話は名作でとても面白かったです)

     著名な作家が目白押しですが、そのほとんどは、名前はもちろん知ってはいるけれど、自分から手に取って読んだことはない方々だったので、普段読まない話を読む機会を得ることが出来ました。
     私のお気に入りは、『出口入口』、『絵本』、『少年の夏』、そしてもちろん『ベンチ』でした。

    とんかつ・・・・・・・三浦哲郎
    出口入り口・・・・・・永井龍男
    絵本・・・・・・・・・松下竜一
    ある夜・・・・・・・・広津和郎
    少年の夏・・・・・・・吉村 昭
    形・・・・・・・・・・菊池 寛
    良識派・・・・・・・・安部公房
    父の列車・・・・・・・吉村 康
    竹生島の老僧、水連のこと・・・古今著聞集
    蝿・・・・・・・・・・横光利一
    ベンチ・・・・・・・・リヒター
    雛・・・・・・・・・・芥川龍之介

  • 普段読まないような作品が読める。
    三浦哲郎「とんかつ」、吉村昭「少年の夏」、吉村康「父の列車」、横光利一「蝿」、リヒター「ベンチ」が良い。
    古文(「竹生島の老僧、水練のこと」)も久々に読んだ。

  • 面白い。侮れない。

  • あとがきにも書いてあったけど、誰かが人が育つ過程で通過させたかった本。
    よくよく考えてみると、書いた本人でも無いのに、実に興味深い。
    どれも自分の教科書には載っていなかったが、教科書に載ってそう感は、とても味わえる。
    少年の夏が一番好きかな。

  • 文字通り「教科書に載っていた小説」

  • どれも教科書で読んだ覚えはないけど、国語の教科書は楽しかったな。自分じゃ全然見つけられない人も知れて。これの安部公房はおもしろかった。

  • CMでは、ポリンキーやバザールでござーる。他に、だんご三兄弟やピタゴラスイッチを手がけた佐藤雅彦さんが、教科書に載った本から幾つか選び、一冊にまとめた本。
    あとがきを読んで共感したのは、国語の教科書をむさぼるように読んでいたことである。
    国語の教科書をもらったその日に、初めから一話ずつ読むのが大好きだった。ちなみに、私は無類の本好きではない。今でも、そこそこ好きな程度である。
    思えば、教科書の小説は短編で読みやすく、いろいろ読めて楽しかったのだと思う。この本は、教科書を読んでいた頃を思い出させてくれる楽しい本だった。
    あんなに読んだ教科書なのに、あまり覚えていないのが悲しいかな。きっとこの本で読んだ小説もそのうち忘れるだろう。なので、あらすじと感想を備忘録として残す。この作業もなんだかな。

    とんかつ : 三浦哲郎 ★★
    息子が修行僧に行く前の晩に、息子の好物のとんかつを食べさせる母親。一年後、息子が怪我をしたので、同じ宿で待合わせをし、とんかつを用意する母親と宿のおかみさん。
    残念ながら、深く考えずに読んだ私にはピンとこなかった。理解力が足りないせいか。
    息子は僧なのにとんかつ食べたかな?

    出口入口 : 永井龍男 ★★★
    お通夜での靴の取り違えの話。
    もしかしたら、読んだことがあるかもしれない。オチが小気味よい。ダメ人間はすべてがダメな行動をとる。

    絵本 : 松下竜一 ★★★★
    12年前に死んだ友達から、自分の子供に絵本が届く話。
    悲しい中にもユーモアがあり、心暖まる話だった。

    ある夜 : 広津和郎 ★
    とある夜、大嫌いなゲジゲジ虫の動きを観察した文が続く。翌朝、ゲジゲジ虫は死んでいた。
    「あの動きは、死ぬ間際で力がなかったのであったことを了解した。」という文で終わる。
    うーん。何が言いたいのかよくわからない。ゲジゲジ虫の様子が気持ち悪く、流し読み。

    少年の夏 : 吉村昭 ★★★
    父の趣味は、庭の池の鯉。ある日、隣の子供が池に落ちて溺死する。池を潰すことを決める父。夏に起こった出来事を、息子の目から見たお話。
    父、母、少年の気持ちの描写が上手で、話の展開の仕方もテンポが良かった。
    とはいえ、気分が暗くなるお話なので★3つ。

    形 : 菊池寛 ★★★★★
    槍の名手がいつも身につけている陣羽織と兜を若武者に貸した。翌日の戦いで、若武者は大活躍。槍の名手は、奮闘したのにもかかわらず、負けそうになり、貸したことを後悔したその瞬間、敵の槍に腹を刺された。という話。
    とても解りやすくて、好きだ。人は実力だけではなく、形にも大きく影響されている。

    良識派 : 安部公房 ★★★★★
    昔、ニワトリはエサを取りに行くのがとても大変だった。人間が現れて、エサもやる。小屋も作ってやる。と言った。ニワトリ達は話し合い、ニワトリの良識派の意見がとおり、自ら進んで檻へと入って行った。結果、人間の家畜となって今に至る。 という、話。
    良識派 の意見を取り入れたのにこの結果ww 読みやすく、解りやすく、面白く、為になった。良識派は多数派、楽観派、揉め事回避派。いろんな解釈ができるところ良い。これからも教科書に載せて欲しい本です。

    父の列車 : 吉村康 ★★★★
    出兵中の父が隣町の駅に立ち寄るという情報を得た家族が、急いで峠を越えて会いに行く。列車が通過する中、運よく手紙を受け取ることができた。その後、父は生きて帰ってくることはなかった。
    戦争中の家族愛や絆が描かれている良いお話。

    竹生島の老僧、水練のこと : 古今著聞集 ★
    竹生島に巡礼に行った子供達が、ここの僧侶は水泳が得意だから見てみたい。と言ったが、寺の若僧達は出払っていた。船で帰ろうとしたところに、老僧が海を歩いて渡って来て「若僧がおらず、子供の期待に答えれなくて申しわけない。」老僧達からの伝言だと言って帰って行った。これに勝る水泳があるだろうかと、驚いた。 という、話。なのかな?
    古文なので読みにくくて、解釈もあってるのかすら微妙。 古文。何十年ぶりだろか?

    蝿 : 横山利一 ★★
    馬車に乗る人達と一匹の蝿。最後は呆気なく、馬車の事故で終わり、蝿はゆうゆうと飛び立った。
    馬車に乗るまでの話があって、最後のオチが引き立つのはわかるけど、馬車に乗るまでが長くてダレちゃった。

    ベンチ : リヒター/上田真而子 ★★★★★
    少年の恋愛話と思いきや、ユダヤ人迫害の切ない物語。
    まんまとやられた。少年の語り口が、差別や迫害が当たり前のように明るく語られているところが切なさを増す。
    ベンチは、「あのころはフリードリヒがいた」に収録された短編らしいので、この本を読みたいと思った。

    雛 : 芥川龍之介 ★★
    ある一家がお金を工面するために、雛人形を売ることになる。売る前に一目見たいという娘に対して、お金は受け取ったのだから開けるなという父。しかし、売る前日の夜中に、父が一人で雛人形を、並べて見ているのを目撃する少女。 で終わる。
    読みやすくて、話に引き込まれるものの、何が言いたいのかよくわからなかった。父が雛人形を手放すことに寂しさや虚しさを感じていたのか? 娘の落胆を伝えたいのか?

  • 中身はともかく、あとがきの内容が意外だった。へぇーという感じ。

  • なぜ今になって買ったのだろう?~三浦哲郎「とんかつ」(H18高)永井龍男「出口入口」(H7高)松下竜一「絵本」(H4中)広津和郎「ある夜」(H5高)吉村昭「少年の夏」(H11高)菊池寛「形」(H17中)安部公房「良識派」(H18高)吉村康「父の列車」(H8中)古今著聞集「竹間島の老僧,水練のこと」(H5高)横光利一「蠅」(S61中)リヒター・上田真而子「ベンチ」(S61中)芥川龍之介「雛」(S47高)~伊豆の田舎で小学校教師をしていた父の本棚から出して貪り読んだ少年の記憶

著者プロフィール

三浦哲郎

一九三一(昭和六)年、青森県八戸市生まれ。早稲田大学文学部仏文科を卒業。在学中より井伏鱒二に師事した。五五年「十五歳の周囲」で新潮同人雑誌賞、六一年「忍ぶ川」で芥川賞、七六年『拳銃と十五の短篇』で野間文芸賞、八三年『少年讃歌』で日本文学大賞、八五年『白夜を旅する人々』で大佛次郎賞、九一年『みちづれ』で伊藤整文学賞を受賞。短篇小説の名手として知られ、優れた短篇作品に贈られる川端康成文学賞を、九〇年に「じねんじょ」、九五年に「みのむし」で二度にわたり受賞。他の著作に『ユタとふしぎな仲間たち』『おろおろ草紙』『三浦哲郎自選全集』(全十三巻)などがある。二〇一〇(平成二十二)年死去。

「2020年 『盆土産と十七の短篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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