- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591104231
感想・レビュー・書評
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日本で一時かなりメディアを賑わせていたワーキングプアの問題を、似た様な状態にある海外の状態や対策と比較することで、日本での解決策を探す、というNHKのプロジェクトを書籍化したもの。
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race to bottom
のように、底辺の競争に駆り立てられる人々。
→ワーキングプアの存在と、追い詰められそうになりながらもはたく正規社員。
*どの国でもワーキングプアは存在する。
イギリスでは行政が責任を持って、社会包摂を目指す。
→貧困の再生産を阻止するような政策
アメリカでも繻子英府が中心になってセーフティネットの構築を目指す:
例:ノースカロライナ、グローバル経済に影響を受けな
日本;セーフティネットが脆弱
→釧路市:生活再建の過渡的な措置としての生活保護い
→法定受託事務として、水際作戦、硫黄島作戦
*社会的包摂による、中間的就労へつなげる
*新たな社会的連携の模索(フリーター労働組合) -
本書は、「ワーキングプア」という言葉を世に知らしめたNHKの特集番組を本にしたもの。2006年のⅠ・Ⅱに続き、2007年に放映された第3弾をもとに作成されている。
番組はみていなかったが、以前Ⅰの本を読んで大変衝撃を受けた。
Ⅰ・Ⅱが実態を取材したもので、このⅢは視聴者の反響としても多くあった、その解決策を問うたもの。
お隣の韓国から、アメリカ、イギリスに取材し、再び日本の現状を伝えて、解決に向けたさまざまな現状を報告している。
海外を取材した意図は、より悲惨な現状を確認して日本に警鐘を鳴らすことだったらしい。
確かに、どの国も悲惨な状況に変わりがなかったが、番組作成チームの当初の仮説とは違った現実がそこにあった。
諸外国に比べて、日本はまだましかと考えていたのが、大きく見当違いだったことが明らかにされている。
韓国では非正規雇用者が過半数を占め「勤労貧困層」が急増しているが、すでに彼らを守る法律ができている。
米国でも医療保険制度の欠落など、国家の福祉システムにおいては劣っているものの、NPOの市民活動が極めて活発に動いている。
英国でも、貧困層の職業訓練のために民間企業の力を活用するなど、国の威信をかけて対策を講じている。
さらに英国では、日本でも問題になっている「貧困の連鎖」を断ち切るために、シングルマザーの母と子供を援助する施設や、チャイルドトラストファンドと呼ばれる、18歳になると、就職や就学のための一定の資金が得られる仕組みができているとのことである。
ワーキングプアの問題は、彼らに働く意志や意欲がないのではなく、環境や状況が、彼らに職を与えず、また最低限の生活もさせ得ない点にある。
グローバライゼーションと市場原理主義、そして極めて多元的に組織化された知識経済中心の社会は、極めて激しい競争社会となっている。
その競争がフェアならば問題ないのかもしれないが、当人には責任のない理由で、貧困の環から抜け出せない人がたくさんいる。そして、ワーキングプアに象徴される問題の行きつく先は、社会・経済・そして人間の破壊に至る。
ワーキングプアの問題については、国の政策的な解決が必要だと思う。
しかし、企業内や、地域社会の一員として、一人ひとりが関心を持ち、解決への道を模索していく必要があると感じた。 -
4000字レポートの参考文献 上巻(っていうのかアレは?)と同じくわかりやすい
むしろセットで読まないと解決策のかけらも見えなくてもやもや おかげでレポートの出だしが大幅に遅れた苦い思い出の本 しかし内容はいいとおもう -
・NHKワーキングプアものの続編。前回一番気になった、「で、どうしろと?」についての答えを諸外国に求める内容。
・韓国では労働者の半分以上が非正規雇用だというのは驚いた。
・アメリカのノースカロライナの例は素晴らしいけれど、日本でこういったことができるかピンとこない。ただ、オフショアされない・されにくい産業を選んだというのはヒントになると思う。
・イギリスのコネクションズなどの例は素晴らしい。膨大な予算を使ってこれだけ真剣に若者の貧困化を防ごうと取り組んでいることに驚く。むしろどうして日本はこれができないのか?と不思議にすら思う。
・その中で釧路の例は良かった。生活保護という国民の権利として保障されている仕組みを利用して自立(という言葉にやや抵抗あり)を目指すというのは目新しいことじゃなく、本来の生活保護という仕組みの使い方のはず。なのに実際はものすごく敷居が高いように思えるし、恥ずべきものという概念が自分にもあることに気づいた。
・前回マヌケなどと言ったことについては半分訂正したい。そうじゃない例も沢山ある。全て社会のせいだとは言わないけど、全て個人のせいでもない。
・働くということは誇りを持てるということ。失わないと気づかない。最後の岩井さんの例で強くそう思った。
(八王子市立図書館にて借る) -
もう少し、具体的提言が書かれているかと期待したけれど、
TVのドキュメンタリーの焼き直しならこんなものかという感じ。
やはり入門的にはいいけれど、それ以上を求めるなら専門書を読むべき。
この本の最大のMessegeは、「人間にとって働くとは何か??」
人によってこの問いの捉え方や答えは違うと思うけれど
この本の答えはただ、自分の食いぶちを稼ぐというだけでなく
他者から必要とされる―他者との関係性
自分の行っている仕事に対して誇りが持てること―自尊心
この二つも共に重要なのだと訴えている。
社会的排除をなくし、包括社会の重要性を訴えている。
便利になるにつれて薄くなる他人との絆。
地縁・血縁が薄くなった中で今後どのように人々は他人との絆を作っていくのだろうか??
もし、自分の所与の人間関係が自分とは異質のものだった場合、人はどうすべきなのだろうか??
またそのために行政はなにができるのだろうか??
行政が関与することは個人の自由の侵害にならないのだろうか??
これがその後の「無縁社会」特集につながっていくのだろう。
他人との絆がセーフティネットのとしての大きな役割を負いすぎていたことは日本の問題点ではあるが、
セーフティネットとして社会保障が充実させたとしたら、
今後日本はどのような社会を描くのだろうか??
ただ、これは働いても生活できないとはあまり関係がないのでは??
Ⅰ部Ⅱ部で疑問に思ったのが働いてもぎりぎりの生活できない。
このことに対して本人達が自分たちの生活を不幸と捉えずに笑ってくらせるならそれはそれでいいのではないだろうか?
ということ。
1国の中であまりにも差がありすぎるのも如何かと思うし、
そのいった層に対してなんらかのアプローチはすべきだとは思うが本人達が幸せならばそこまで声高に叫ぶことではない。
問題は世代間連鎖や働く意義が見いだせない状況だ。
世代間連鎖に関してはOECD加盟国最低レベルの子供にかける予算を増やし、
各家庭の負担ではなく社会が責任を持って一定レベル以上の教育をし、
自ら望む進路を選べる環境を獲得できる環境作りが必要だろう。
働く意義が見いだせない状況に関しては、
それが経済的に日々の生活が苦しすぎて感じる余裕がないのならば、
それは社会保障の問題や最低賃金の問題でありそこにアプローチすべき。
精神的に感じる余裕がないのならば、ソーシャルワーカーやカウンセラーといったアプローチが必要。
派遣等で人との関係性が築けない働く意義が見出せないのは、
働き方自体の問題である。
人が皆、自ら望んだ進路のみ選べる状況でないのならば、
その後にどうすれば人が幸せになれるかを考えなければならない。
社会の動きが早いなか産業構造の転換に対して、
社会は人はどのように対処していくべきなのだろうか??
産業構造が変化したからといって、人を右から左へとは動かせない。
人々がその地域や仕事で気づいてきた人間関係や、仕事への誇り、思いあるなかで
人をものとして扱わずにどうすれば目まぐるしく変化する者会いに対応できるのだろうか??
行政だけでなく、地方自治体、企業、NPOといった市民活動。
そしてなにより、個々の市民が問題意識を持ち、行動することが求められる。
そして、私はどのような立場からどのような人に対して、どのようにアプローチしたいのか自問自答しなければならない。 -
海外も凄いことになってますね。イギリスの取り組みは素晴らしいが…。アメリカやばいなぁ。
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NHKスペシャル『ワーキングプア?〜解決への道〜』の番組をもとにして作られた本。書籍としては、『ワーキングプア 日本を蝕む病』の続編に当たります。韓国・アメリカ・イギリスなど、日本よりも先にワーキングプアが問題になったり課題解決に取り組んだりしている国の現状と対策を紹介したあと、日本のワーキングプアの問題をどのように解決していくかという流れになっています。都会のワーキングプアは孤独になりがちということで、人間関係を広げていくことが解決に近づくうえで大切と書かれていました。(2008.9.30)
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―この国は、豊かな国だと思っていた。
というキャッチが印象的。何も知らないでこの本(あるいは、NHKの番組そのもの)を手に取った人は、きっとこの言葉を口にするだろう。
問題提起の、上巻のほうがおもしろい。
ワーキングプアって、グローバル社会に対応するために行われた小泉政権下の市場原理主義が招いた格差の弊害らしいけど、
こんなに日本に増えているなんて知らなかったし、こんな現実があるなんて知らなかった。
人間が、人間らしく生きることが難しくなっているこの国のリアルを見て胸がつまされる思いだった。
将来が、間違いなく不安になる本。
いろんな人に読んでほしい。
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「ワーキングプア」とは、「働いても生活保護水準以下の所得しか得られない社会階層」のことを指します。このような状況は日本でも進行していますが、その対策において諸外国から学ぶ点は多いでしょう。それを韓国・アメリカ・イギリスそして日本(釧路市)の事例から対策を読み解こうとしています。
最も関係すると感じたのはアメリカの事例です。アメリカでは、年収1000万円を得ていたプログラマがいまはバーガーショップの店主になり、月収15万円で働いているといいます。アメリカでは、ソフトのオフショア開発(インド・中国という海外の企業にソフト開発を委託すること)により、国内のIT人材(特にプログラマ)の必要性が減少しているようです。これは、日本にも重要な示唆を与えています。現状はIT人材の必要性が叫ばれていますが、「世界共通言語」としてのプログラミングのみの技術に長けていても、必ずしも職が安定的に得られる保証はないといえます(もちろん圧倒的な技術を持っていれば別ですが…)。
となれば、必然的に多くのIT企業が唱えるように、ITで付加価値をつける以上のもの(経営課題の解決)を提供しなければ、インド人でも中国人でもできることになるのでしょう。「ITソリューションからビジネスソリューションへ」というスローガンが身を持って体感できたのは、この本を読んでの危機感によるものでしょう。
今までは世界と戦っていると考えたことはなかったのですが、この本を読んで「世界から自分の職を虎視眈々と狙われている」ことがわかりました。市場価値を高められるような仕事をしたいと思います。