([に]1-1)ゆれる (ポプラ文庫 に 1-1)

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591104347

感想・レビュー・書評

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  • ゆれるどころでなく震度6強くらいの激震でした。昔懐かしい映画の場面の様なスタートから一気に怒涛の展開へ。そこからは兄弟の想いが行ったり来たり。と思っていたら本当に映画だったんですね。全く知りませんでした。明日の休日、映画を観てみようと思います。

    で、映画を観ました。さすがに良かったです。特に猛の法廷での証言のシーン、声やお互いの表情、静寂、間などは説得力がありました。ラストのバスに遮られる直前の稔の表情も映画ならではで、最後まで観て良かったと思いました。ただ、前半の古臭い音楽や衣装、演技など、小説で感じていた雰囲気とはかけ離れていて残念と思うところもありました。小説は確かに書き過ぎている面もあるのでしょうが、立ち止まったり、戻ったり、考えながら読み進めることができ、本の世界に没頭できるのでこれはこれで読んでおいて良かったと思いました。

  • 小説のタイトルである平仮名三文字がこの作品のテーマを見事に言い表している。
    絶妙転落事件にかかわる人間の心のゆれを描いた作品。とある渓谷の古びた吊り橋のゆれも登場人物の心のゆれの暗喩となっているのだろうか。
    洗練され垢抜けたスマートな人生を送る弟と親が経営する地方の鄙びたガソリンスタンドで働く不器用な弟や東京で弁護士をしている中年男性である兄と田舎で細々とガソリンスタンドを経営する弟などの話し。
    物語が唐突に終わった感があり、兄が出所後にどのような人生を歩むことになるのだろうか。

  • 映画「ゆれる」を、監督の西川美和自身が、小説化したものですね。

    時系列で調べますと、
    2006年6月 ポプラ社より単行本発売
    2006年7月8日 映画が全国公開
    という感じみたいなので、おお!?映画公開より先に、小説が世に出ていたのか!?という驚きがあります。西川さん的には、映画と小説と、ほぼ同時進行で製作していたのか?という驚き。

    あれほどにとんでもないクオリティーの映画版と、これほどにとんでもないクオリティーの小説版と、同時進行だったのか、、、?と思うと、まあ、震えますね。奮えますね。感動で。

    自分は、「ゆれる」に関しては、映画を先に観て、その後で小説を読んだクチです。で、映画版「ゆれる」の方が、断然好きです。映画版、小説版、どちらも、本当に素晴らしいと思うのですが、やっぱ「ゆれる」に関しては、映画派。

    「永い言い訳」は、小説を先に読んで、その後映画を観たクチです。で、小説版「永い言い訳」の方が、断然好きです。小説版、映画版、どちらも、本当に素晴らしいと思うのですが、やっぱ「永い言い訳」に関しては、小説派。

    なーにその違い?って思うのですが、どちらの作品も、映画版も小説版も、本当に本当に素晴らしい、と、思います。となると、どっちを先に観るか読むか?で、まあ、評価決まっちゃうのか?って思う。不思議。

    「ゆれる」は映画を先に観て、小説版より映画版の方が好き。「永い言い訳」は小説を先に読んで、映画版より小説版の方が好き。順番だけかいな?って感じ?いやあ、不思議。

    で、この小説のポプラ文庫版は、2008年に刊行されています。

    2006年 ポプラ社単行本刊行
    2008年 ポプラ文庫刊行
    2012年 文春文庫刊行

    2020年現在、3バージョンが、流通している感じ?みたいですね。

    この中で、個人的に断然オススメなのは、ポプラ文庫版、ですね。ポプラ文庫版だけ、香川照之さんの解説が、収録されているんですよ。

    小説本編も、まあ途轍もなく素晴らしいんですが、映画で早川稔を演じていた香川さんの書く、解説が。いやもう。めっちゃくちゃ良いんですよ。ちょっと、もう、驚愕するほどに。是非とも、「ゆれる」という作品を愛する一人でも多くの人に、この香川さんの解説を、読んで欲しいなあ!!って、心の底から思います。

    本当に素晴らしい解説なのです。早川稔という人物を、あれほどに演じ切った香川照之だからこそ、書くことができた解説。そんな気がしますね。

    あんま、全然、小説の内容の感想書いてないんですが、すみません。まあ、とりあえず、途轍もなく素晴らしい作品であることは、間違いないです。あくまでも、あくまでも自分の中では、映画版「ゆれる」が最高峰ですが、この小説版も、まあ、コレ単体で読むだけでもホンマに面白いし、映画と補完しながら味わうとしたら、更に面白い。

    「あの時のあの場面のあの人物は、内面でこんな事を思っていたのか!?」という事を答え合わせできる幸せさよ。西川監督自身が小説化してるんだもの。本家本元ですやんか。いやもう、、、素晴らしいなあ、ホンマ。

    まあ、映画版も小説版も、一生手元に置いておきたい作品であることは、間違いない。それほどに、圧倒的に、大好きですね。

  • 長年気になり続けていた作品。ようやく読んだが、予想以上の重さ、複雑さに脳が痺れ、うまく言葉が出てこない。
    兄と弟のからまり合った愛憎に、更にからまり合う、兄弟の父・伯父の愛憎。彼らもまた「兄弟」であり、その重ね方がお見事と思った。
    全般を通してとても息苦しく、張りつめた世界なのだが、決して後味が悪いわけではなく…時々ちりちりと切なくなるのだ。
    いずれ映画版も観てみようとは思っているが…小説だけでもこんなに完成度の高い作品に仕上げてくるなんて、西川さん、すごすぎる。映画監督であると同時に、私の中では優れた作家のひとりである。

  • 幼馴染の死を起点に、とある兄弟のこれまでお互いが抱いていたイメージが揺さぶられるお話。 
    兄は智恵子を殺したのか、殺していないのか、真相が気になり一気読み。登場人物達の語りのみで進行するため、それぞれの視点から真相が徐々に読み手側に解き明かされていく過程に、目が離せない。
    それにしても、稔のような、一見生真面目で強い意思がなさそうな人の、暗澹な腹の中にぞくりとした。

  • 吐き気がする、胃から酸がこみあげてくる、手が震える、気持ち悪くて涙が出た

  • 西川さんの本は「永い言い訳」に次いで2作目。しみじみ読み込んでしまう深い本。親に逆らわない真面目で良い子として育ち家を継いだ兄。家に縛られたくなくて上京しカメラマンとして成功した弟。仲の良かった兄弟。でも幼馴染の女性が兄と一緒にいた吊り橋から転落死したことで兄の何かが変わっていく。吊り橋の上で智恵子が兄・稔を拒否したのも、稔が智恵子を突き飛ばしたのも我慢していた感情が沸点を超えた結果なのかな。感情の動きがすごくよくわかりました。西川さんってすごい。

  • 香川照之解説もアリだな。でもやっぱりオリジナルラストがいいな。

  • 2006年に映画化された『ゆれる』を監督の「西川美和」が自ら小説家した『ゆれる』を読みました。

    最近、なかなか読書の時間が取れず読了するまで時間がかかりましたねぇ。

    -----story-------------
    東京でカメラマンとして活躍する弟。
    実家に残り、家業と父親の世話に明け暮れる兄。
    対照的な兄弟、だが二人は互いを尊敬していた、あの事件が起こるまでは…。
    監督デビュー作『蛇イチゴ』で映画賞を総ナメにした俊英「西川美和」が4年ぶりに挑んだ完全オリジナル作品を、自らが小説化。
    -----------------------

    映画『ゆれる』は好きな作品で、何度か観ているのですが、、、

    心理描写について具体的な説明が不足気味なので、気持ちが"ゆれる"部分の解釈については、一人ひとり異なっていると思います。

    本作は登場人物達が、それぞれの視点で一人称で語る構成となっているので、その場面場面のそれぞれの気持ちが明確に分かる内容になっており、映画では想像するしかなかった部分の謎解きができた作品でしたね。

    あの笑みや怒りの意味は… 一つひとつの事柄について、あ~っ、そうなんだぁ… と思いながら読みました。


    ≪ちょっとネタバレ≫

    兄「稔」を庇おうとする「猛」。
    でも、それは兄を思う純粋な気持ちじゃなく、自分が殺人犯の弟になりたくないという気持ちからなんですよね。

    それまで弟「猛」のことを誇りに感じ、自分の宝だと思っていたのに、弟「猛」の本心に気付いた兄「稔」は意図的に「猛」を煽るような言動を発し、、、

    それにより「猛」は法廷で兄「稔」が「智恵子」を突き落としたと偽証… 「稔」は反論せず有罪に。

    なんか哀しいですね。

    お互いを信じられなくなったときの人間の行動って、思いがけない行動をとるもんなんですよねぇ。



    本作品、映画の謎解きができて嬉しいと感じる反面、なんだか残念なような、そんな気持ちも感じました。

    映画って、心情を全て表現するのは無理だし、ある程度、観客の解釈に委ねる部分があってイイと思うんですよね。

    そう思えば読まなきゃイイんだろうけど、自分の解釈が合っていたのかどうか知りたい気持ちを抑え切れなかったですねぇ。


    まぁ、本作の場合、小説化されないと真実はわかりようがないので、このような表現方法も許されるのかな… という気もします。



    それにしても、心理描写があまりにもリアルなので、読んでいて少し疲れました。

    こんな気持ちになるのは「東野圭吾」作品以来ですね。

  • この映画大好き。

  • 都会に出てカメラマンとして活躍している弟と、実家のガソリンスタンドで働く兄とが、幼馴染の女の子を吊橋から転落死したことを機に、家族が崩壊していく、といった感じなのだが、鬱屈した兄がよい。膣内から微量の精子を検出、とかいう話を裁判でされて可愛そう。

  • 読みやすい。
    表現のひとつひとつが好きだと思った。
    全員が不器用で、割り切ってるように見せて人を羨んでて、自分にもあることだなって思った。

  • この「ゆれる」というタイトルはあらゆる意味合いが含まれているのだな、と感じた。
    以前かなり評価された映画を先に観てはいたけれど、小説は小説でまた新鮮な気持ちで読んだ。
    都会で自由に格好良く生きる写真家の弟の猛と、父親が営む田舎のガソリンスタンドを継いで暮らす実直ではあるがどこか冴えない兄の稔。
    この時点で残酷さを感じる。容姿も生き方も弟には勝てないという稔の強大なコンプレックスが、ひとつの取り返せない事件を引き起こす。

    同性の兄弟や姉妹を持つ人ならば、稔の感情が理解できる人も少なからずいるかもしれない。
    近い存在に嫉妬するというのは、とても苦しいことだ。
    表面上は柔和に兄らしく振る舞っていた稔だけど、智恵子という好きな女に関して猛への嫉妬を感じたとき、その感情が爆発してしまった。

    不安定な吊り橋の上で起きた事件。その現場も、そのとき揺れ動いた稔の気持ちも、事件後の兄弟の関係も、そして猛がラスト前で覆したあること(これが恐らくこの物語の根幹)も、すべてが「ゆれる」という言葉に集約されている。
    人のためを思って嘘をつき通すのか、それとももっと深くその人を思って真実を話すのか。どちらが正しいとは簡単には言えないけれど、結末を見るに、猛の選択はきっと正しかったし、稔もその意図は理解していたように思えた。

    近い存在に嫉妬するのは苦しいけれど、反面、血というのは強い、とも感じた。
    同じ血が流れているから許し難い、同じ血が流れているから許そうと思う。相反するけれど、どちらもある感情だ。
    世の中多くのこじれている血縁関係を見てきたので、ある意味で救いとなるようなこの物語は、とても小説(映画)らしい役割を果たしていると思う。

  • 「兄ちゃん、うちに帰ろうよ!」

  • 西川美和は「永い言い訳」以来二冊目。
    映画に携わる人とのことだけど、確かに邦画っぽい雰囲気を感じる。香川照之のあとがきを是とするか否かで評価が分かれそう。
    著作をもう一冊読んでみたいな。

  • 暗いよ~。よくこんな残酷な話書くよなー。
    兄弟の深層に漂う確執と、それを開放するまでのお話。

    いやもう暗い重いの途中で投げ出したくなる話だが、
    登場人物の視点毎に書かれていて、丁度いいくらいで話が変わるのと、
    すげー読みやすいせいでガンガン終わりまで読める。
    このあたりの構成は見事。

    ラストの終わり方も、スパッと終わっていて
    ショーシャンクみたいに、最後の最後はこうなって
    幸せな終わり方になってるんだよね、
    と妄想をいだかせるいい終わり方。

    香川照之のあとがきみたいな終わり方だよね、ね。

  • 【いちぶん】
    この人は、私だ。大人しい驢馬のような顔をして、こころに鬼を飼っている。

  • 映画のような展開性。

    読んでいる最中はどんどん読めました。
    読みやすいと思います。

  • 田舎のガソリンスタンドを継いだ兄と、早くに写真家になるためにアメリカへ行った弟。兄弟は母親の葬儀で再会するが、幼なじみの転落事件をきっかけに家族の関係がほころび始める。
    嫉妬や怒りに心がゆれる様子が、老朽化したゆれる吊り橋の上で描かれていて、象徴的。寂れたガソリンスタンドと田舎の情景も、目に浮かぶよう。裁判の終着は裏切りが予想外で、最後まで不器用な兄弟、親子、家族の間のすれ違う感情がもつれていて切なかった。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    故郷である田舎町を嫌って都会へ出た奔放な弟・猛と、家業を継いで町に残った実直な兄・稔。対照的な生き方をしてきた二人の関係が、幼なじみだった智恵子の死をきっかけに揺らぎはじめる…。映画史に永く刻まれる傑作を監督自らが小説化。第20回三島由紀夫賞候補作。

    イケメンで自由で押しの強い弟。流れに任せ地元に残る従順な兄。
    絵に描いたような明暗の分かれ方です。同性の兄弟だと比較されるし嫌ですね。自分の兄弟は異性なのでそのへん安心。
    田舎の閉鎖的な部分が描かれているのは描かれているのですが、よくある田舎のマイナス面ばかり描いている本でもなく、不思議な解放感と薄明りのようなものを感じます。
    ぼろぼろの絆でも皆細々と手繰り寄せて繋ぎ合わせようとする姿がいじらしいのかな。皆投げ出したいと思いながら各々捨てきれない情が湧きあがる所に引き込まれるのかな。
    最後まで意外なさわやかさが漂っています。文章がクールだからかもしれません。

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著者プロフィール

1974年広島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。在学中から映画製作の現場に入り、是枝裕和監督などの作品にスタッフとして参加。2002年脚本・監督デビュー作『蛇イチゴ』で数々の賞を受賞し、2006年『ゆれる』で毎日映画コンクール日本映画大賞など様々の国内映画賞を受賞。2009年公開の長編第三作『ディア・ドクター』が日本アカデミー賞最優秀脚本賞、芸術選奨新人賞に選ばれ、国内外で絶賛される。2015年には小説『永い言い訳』で第28回山本周五郎賞候補、第153回直木賞候補。2016年に自身により映画化。

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