ジェミ-と走る夏 (ポプラ・ウイング・ブックス 38)

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591109854

感想・レビュー・書評

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  • 黒い肌の少女ジェミーと、白い肌の少女キャス。2人はマラソン大会で優勝することを夢見て、ひそかに練習を始めるが…。人種の偏見を乗り越えて、少女たちが育む友情を生き生きと描いた、ひと夏の物語。

    わたしたちはチームだよ。チョコレート・ミルクっていうね。ジェミーはいう。わたしもふたりで走りたい。でも、お父さんはダメっていう。わたしたち二人の肌の色がちがうから。(『キラキラ子どもブックガイド』玉川大学出版部より)

  • 肌の色が違う二人の少女。白人の少女の隣の家に黒人の少女が引っ越してくるところからはじまる。走るのが好きなふたりの夏の物語。

  • 「外国の本っておもしろい! ~子どもの作文から生まれた翻訳書ガイドブック」の「1. 外国のくらし」で紹介されていた10冊のうちの1冊。

  • 差別や偏見は良くないことだと頭ではわかっているのに、それらが自分の心の底でときどき見え隠れするのに気づくことがあります。そういうときは、私の場合は、まずはその事実を自分で認めることから始めます。

    アフリカ系アメリカ人のオバマ氏が大統領になったとはいえ、アメリカ社会で人種に対する偏見がなくなったとはいえません。

    人種差別が残る環境の中でも、黒い肌のジェミーと白い肌のキャスは、走るという共通の趣味を通じ、心を通わせ友情を育んでいきます。

    実は、ジェミーとキャスのように、環境さえ整えば、子どもたちの方がが心が柔軟で、差別や偏見なく人とつきあっていく素地をもっているように思えます。

    その環境を整えるのは、大人の役割です。
    私たちは、子どもたちから学ぶべきことが、まだまだたくさんあるようです。

  •  読んで良かった。出会いで泣いて、危うさに立ち向かう姿に泣いて、
     自助とか協調とか前進する姿に泣いて、ラストはね、もうね、嗚咽ですよ。
     読んで良かった。跋渉。8月のスローガンにする。

  •  フロリダ州タラハシー、12歳の少女キャス。隣人のミス・リズが亡くなった後、その家を買ったのは黒人の家族だった。それを知ったキャスの父は、高いフェンスを作る。引っ越してきた家族には、キャスと同い年の少女・ジェミーがいた。2人は走ることが好きで、家族には内緒で、いっしょに過ごすようになるが…。

  • 久しぶりに読んだYA(ヤングアダルト)。
    ここまでドキドキしながら読んだYAは久しぶり

    白人の女の子・キャスの目線で描かれていて、
    キャスと一緒に戸惑い、進み、恥じる。

    のめりこんで、のめりこんで、
    読み終えた頃には「ああ、チョコレートミルクに会えないなぁ」
    と少しがっかりする。

    良作だったなぁ、としみじみ思います。

    ************************

    白人の女の子・キャスのお父さんは、
    「隣に黒人が引っ越してくるから」と隣家の間に
    大きなフェンスをたてる。

    キャスは、隣の家の女の子・ジェミーとフェンス越しに仲良くなる。
    「走ることが好き」が共通点な二人は仲良くなり
    一緒の時間を過ごすことになる。

    しかし、キャス・ジェミーの親は互いをよく思っておらず
    うまくいかない。

    ある日、キャスの妹の急病をきっかけに和解する。

    最後は「あぁいいなぁ…」とためいきをつけます。
    前半が前半だっただけに、ラストは平和でなごみます。

  • 原題はヨルダン川をわたる。このタイトルのままでは手に取りにくいだろうけど、いいタイトル。黒人の一家がお隣に越してきて始まる夏の物語。レースのくだり、好き。

  • これも4年前に読んだ本。また読みたくて借りてきた。6年生の夏休み、走るのが大好きなキャスとジェミーの話。

    隣に黒人の家族が引っ越してくるという噂を聞いて、キャスの父さんは、隣家との間に、プロのバスケ選手だってのぞけないような高い塀を建てた。母さんは「いい人たちかもしれないじゃない」と言ったが、父さんは「転ばぬ先の杖だよ」と言った。

    フェンスの節穴からお隣さんをのぞいていたキャスは、隣のジェミーに見つかる。お互い名乗り、「もしかして、走るの好き?」「走るの? わたしはね、走るんじゃないの、とぶのよ。だれにも負けないわ」「わたしなら勝てるかも」と言い合って、次の日の朝、学校のトラックで確かめることにした。

    おたがいに全力で走った二人は、熱中症でぶったおれないよう、ひきわけにした。「あんた、速いじゃない」「あんたもね」と認めあって、それから毎朝、一緒に走る。

    キャスは黒人ぎらいの父さんに見つからないよう、そしてジェミーは心の狭い人種差別主義者の隣人をにくむ母さんに見つからないよう、フェンスの端から本を受け渡しして、順に朗読して一緒に読んだ。ジェミーたちが越してくる前に住んでいたミス・リズからもらった『ジェーン・エア』。

    引っ越してきたとき、高いフェンスを見たジェミーのおばあちゃんは、ほっときなさい、それに「隣人を愛せよ」だよと言ったが、ジェミーの母さんは、娘のジェミーに「ちょっと、見てごらんなさい」「心の狭い人間っていうのは、こういうものなの」(p.19)と言った。

    ジェミーとキャスのつきあいを知ったとき、ジェミーの母さんは、隣の子とは会うな、つきあうなと言った。「となりの子はね、黒人に対するにくしみに満ちた連中のなかで育ってきたの。あの子の身にしみついているのよ。となりの子のような友だちは、いつかジェミーをがっかりさせることになるわ」(p.123)と。

    キャスは、父さんは正しくないと思い、ジェミーは、母さんだって同じ、心が狭いとぶつける。でも、12歳の二人は親を容易に説得できない。会うなと言われ、友だちと会えないさびしさに身をこがす。

    物語の後半、ある事件をきっかけに、キャスの父さん、母さんと、ジェミーの母さんとが、ぎこちないつきあいを始めてから、ジェミーの母さんがどんな経験をしてきたのかが、おばあちゃんの口から語られる。

    黒人の子を白人と同じ学校に通わせることができるようになって、しばらくしてから、おばあちゃんは娘のレオナ(ジェミーの母さん)を、白人の学校へやることにした。あの子を始めて学校まで送った朝のことは忘れられない、とおばあちゃんは言う。

    ▼「…白いスカートをしっかり糊付けして、髪にはリボンをつけてやった。学校じゅう探しても、あの子ほどかわいい子はいなかったね」「あたしらが学校に着いたとき、ちょうど、白人の親たちが、子どもを車からおろしているところだった。ふたりの男がレオナの真正面に立ってこういったんだよ。『きたならしいクロンボめ』ってね。想像できるかい? たった六歳の子にむかってそんなことをいうなんて」「でも、あのときほどあの子を誇らしく思ったことはなかったよ」「レオナはね、泣いたりはしなかった。ランチの入った紙袋をぎゅっと胸にかかえて、その男たちを見上げていったんだ。『失礼します。通してください』ってね。ところが、あの子がふたりのあいだを通ろうとしたとき、そのうちのひとりが、あの子のドレスにつばを吐いたんだ」(pp.229-230)

    キャスの父さんは、その話を聞いて、白人の学校へ行こうとしなければ、そんな目にあわずにすんだのにとつぶやく。

    おばあちゃんは、娘のレオナがどんなに怖い思いをしたか、おばあちゃん自身がどんなにおそろしい思いをしたかを続けて話した。

    ▼「あの子はね、毎日恐怖と戦いながら学校に通った。トイレにいくことさえこわかった。校庭のけんかに巻き込まれるのをおそれ、夜になったら白人の子どもたちが近所を歩きまわって、あたしらの家にむかって水風船をぶつけるのをおそれた」「その子らの父親たちは、見せびらかすようにショットガンを持って、トラックを乗りまわしてた。あたしらを脅すためにね。あたしは自分の子になにか起こらないかとおそろしくてしかたなかった」(pp.230-231)

    水風船なんて、ただの子どものいたずらじゃないですかと、キャスの父さんは言い、そこまでしてなぜ通わせたんですかとまた訊いた。おばあちゃんの答は「ちゃんとした教育」のため。

    ジェミーの母さん・レオナは、自分の未来のために必要な教育を手に入れ、一族で初めて大学へ進み、看護師になった。キャスの家では、まだ誰も、短大にも行ったことがない。キャスの父さんが、もう少しで条件のいい仕事につけると思ったとき、その仕事は黒人に決まった。キャスの父さんはなかなかいい仕事がみつからず、それを黒人のせいにするねじれた感情のことも、描かれている。

    ジェミーのおばあちゃんは、教育の力を信じている。キャスの家では、キャスが初めて大学へ行く人になるかもしれないと言い、「お金がかかりすぎるから」というキャスに、「だから、無知のままでいいのかい? 教育にはたしかにお金がかかるよ。けれど、それはいっときのこと。無知のままなら一生、そのつけをはらいつづけなきゃならないんだ」(p.84)と話しかける。「あんたみたいに賢い子はね、将来、なりたいものになれるんだよ」(p.84)と、キャスの肩に手を置いておばあちゃんは言った。

    物語のなかでは、教育という投資は信じられる話であるほうがいいのだろう。でも、こないだ『ルポ 貧困大国アメリカII』を読んだら、値上がりするばかりの学費と、とんでもない条件の教育ローンのせいで、未来への投資だったはずの教育は、いまのアメリカでは、まるで未来の足枷のようになっているようだった。

    ジェミーの母さんがおそろしい思いをしながら学校へ通ったことが描かれるように、そんないまを描く物語もこれから書かれるのだろうか…と思う。

    (再読 2014年7月4日)

    -----
    ヨソのブログで、ちらっと表紙画像を見て(走る話かなー)と思い、もしかして『ハートビート』みたいな話かなーとも思ったりして、近所の図書館にあったので借りてきて、積んでいた。

    読みはじめは、訳文がビミョウに自分にあわないようで、ちょっとのらなかった(「翌朝」に「よくちょう」といちいちルビが振ってあるあたりがとくに)。おしまいまで読まずに返すかなと思いながら、しばらく読んでいると、だんだんやめられなくなってきた。

    12歳のキャス、6年生の夏休み。休みが明けたら、7年生になる。隣家のおばあちゃん、ミス・リズが亡くなったあと、売りに出された隣の家に越してくることになったのは黒人の家族だという噂をきいて、キャスの父さんは隣家とのあいだに、えらく立派なフェンスを建てた。

    キャスは、父さんが建てたフェンスの節穴ごしに隣家をのぞいていたのを、隣のジェミーにみつかる。お互い「走るのが好き」「自分のほうが速い」と言いあうジェミーとキャスは、翌朝、学校のトラックで走る。

    「あんた速いじゃない」「あんたもね」と互いに認めあったふたりは、また明日とわかれる。

    父さんが黒人ぎらいなのをわかっているキャスは、父さんには内緒でジェミーと走り続ける。ジェミーもまた、母さんが白人の人種差別主義者を、つまりは黒人が引っ越してくると知って高いフェンスを建てた隣家をきらっていることをわかっていて、母さんに内緒でキャスと走り続ける。ふたりが友だちだとわかってくれるのは、ジェミーのおばあちゃん、そしてUSAストアのミスター・G。

    ある日、そうして一緒に走ってきたふたりの関係が、キャスの父さんにもジェミーの母さんにもバレた。すぐ隣に住んでいながら、会えないふたり。親から「会うな」と言われるふたり。

    あるできごとから、ふたりは、また一緒に走れるようになった。

    キャスとジェミーの関係が主として描かれるこの物語のなかで、ジェミーのおばあちゃん、そしてキャスの父さんやジェミーの母さんといった登場人物にくらべると、キャスの母さんの影は薄い。でも、私にはキャスの母さん・ローラの姿が強く印象に残った。夫の言うことにさからえず、けんかはしたくないのだと言っていたローラが、ジェミーが走れるように、夫の目を見てしっかり話した姿がとくに。

    黒人と白人の学校が分離されていた時代を知っているのが、キャスの父さんやジェミーの母さんたち。ジェミーのおばあちゃんは、ローザ・パークスのように、ボイコットをして、「侮辱を受けてバスに乗るよりは、尊厳のために歩く」道を選んだ世代。

    この著者の最初の本はこっちの『ジェミーと走る夏』だが、翻訳では先に『シスタースパイダー』が出ているというので、図書館にリクエストしてきた。

  • キャスの家の隣に越してきたのは黒人の一家。同い年のジェミーという女の子がいて、キャスは友だちになりたい。でも、キャスの父さんは黒人が大嫌いで、隣家とのあいだにがんじょうな塀を築いてしまう。それでも走ることを通じて仲よくなるジェミーとキャス。そしてある日……。
    それぞれの歴史や、偏見や、現実の貧しさから根深く居座る差別。それが具体的にも精神的にも「壁」となって立ちはだかる。
    そこに小さな風穴をあけるのは、「走る」という行為であり、またジェミーとキャスのふたりが交互に読み合う『ジェーン・エア』の物語でもあった。しっかりと描かれ、さわやかに読みきれる、とても良質な物語。

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