地球のまん中わたしの島 (ノベルズ・エクスプレス 5)

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591109861

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  • 父の故郷の島でペンションを始めることになり、辰島に移り住むことになった灯子。人口百人ほどの漁師の島で、今までと全く違う暮らしに戸惑う灯子。たったひとりの同級生の少年竜太とぶつかりながらも、灯子は島に馴染んでいくのだった。

    漁業で成り立つ小さな島の生活を描きながら、そこに移り住むことになった灯子の気持ちの移り変わりが表わされます。
    島での生活に不安を感じていたが、島の子らに歓迎されて感動したこと。でも疎外感も感じたこと。自ら島の人と交流しようと動いたこと。島に外の人が来ることに拒否感を持つ竜太の気持ちを知ること。そんなことを経て、灯子は辰島を「わたしの島」と感じることができるようになる。

    小さな島ならではの苦労や漁業の困難な面にも触れ、決して島の生活を美化し過ぎない。でも灯子の心にともる希望は、児童書が持つ力だと感じられたのです。

    これを読んだ後に島の暮らしに興味を持てば、辻村深月の『島はぼくらと』を読むのもいいかも。中学生から高校生へと視点が変わることで、島の暮らしがより深く見えるかもしれません。

  •  中2の灯子は、両親とともに、父の出身地・辰島に移住。辰島は、対岸の倉部港から約30キロ、高速船で45分のところにある周囲3キロほどの小さな島。小中学生は9人。灯子と同じ中2の竜太の父は漁師。
     石川県の漁師さんに取材しているようなので、どこの県とは書かれていなかったけれど、日本海側の海なのかな?最後は、大漁旗をなびかせた船団が海をゆく祭りのシーン、このあたり読んでいてとても良かった。

  • 大学生にもかかわらず、図書館の児童書コーナーをうろうろしていたら目にとまった一冊。
    中学2年生の主人公灯子は突如、「ペンションを始める」と言い出した家族とともに、父が生まれ育った島へと移住。そこで、唯一の同級生、漁師を目指しているという竜太と出会う。どこか素朴な島の人々や豊かな自然と戸惑いながらも接していくうち、彼女は彼らが「島」や「海」に対して抱いている強い思いや、自分自身の竜太への心情の小さな変化に気付いていく。
    島が観光客に踏み荒らされるのを快く思わない竜太と、商売柄観光客に頼らざるを得ない灯子の対立シーンが印象に残った。私の実家もとある観光地の近くにあるのだが、ポイ捨てをした人に注意をしたら「ここで買ったものを、どうしてここに捨ててはいけないのか」と逆に言い返されたという話を聞いたことがある。確かに観光地は観光客が来てナンボのものだが、では、その地に住む人々が心から観光客を歓迎しているのか、というとそれは分からないと思う。恐らく、大人はその問題をどこかで割り切って考えているのではないだろうか。しかし、その大人とは違い、まだまだ本音で言い合える少年少女たちがそれを考える様は、みずみずしくてよかった。
    児童文学には、意外とこういう話が多いから見逃せない。

  • 父親の実家がある辰島で、両親が民宿経営を始めるため、引っ越してきた灯子。
    本当は住みなれた町を離れるのが嫌だったし、小さな島での暮らしに不安を抱いていたが、
    島の人たちに歓迎され、なんとかやっていけそうな気がしてきた。

    たった一人の同級生の竜太は、島を思うばかりに、観光客をよく思っていないらしい。
    灯子に対しても、何だか壁をつくっているような態度だし、
    灯子の家が民宿だということが、気に入らないのかもしれない。
    島で生まれた子たちとは、まだ十分に馴染めない気持ちの灯子だった。
    でも、その竜太が、灯子に心を開かせるヒントをくれていた。

    自然とともに生きる漁師の厳しさや、誇り、島や海への愛情などが、
    浜辺に打ち寄せる波のように、心に染み込んできます。
    気持ちのいい読後感でした。

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