ダイナー

著者 :
  • ポプラ社
3.89
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本棚登録 : 951
感想 : 202
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591112014

感想・レビュー・書評

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  • 鬼畜平山氏による定食屋(DINER)を舞台にした物語…ってだけで「何の肉、何のホルモン、喰わせるんだろう…」という冒涜的予感に戦慄きながら読み始めるも、フタを開けたら、いつもの鬼畜パワーをエンタテインメントに還元させた超絶暴力残酷活劇(でも鬼畜)。タランティーノやロドリゲス好きな人にもオススメできる徹夜必至本。
    舞台となる定食屋も殺し屋専門というトンでもなさ。一応、章立てにはなっているが、組織に売られてこの店で働くウェイトレスの主人公と、店を切り盛りする謎めいたシェフを主軸に、章ごとに入れ替わり立ち替わり登場する客(殺し屋)が織りなすシットコムのような構成で、連作短編のように読むこともできる(つまりひとつひとつの章が完成されてる)。そして、それらエピソードが重なり合って、物語がミステリ的に収斂していく心地良さったらない。あ、もちろん、立ってたり奥行き感があったりするキャラクター造形も、このシチュエーションを盤石にしている。
    いつもの鬼畜は控えめといいつつも、そこはそれ、平山氏なので出てくる以上は容赦がない。但し、陰湿さよりもアクションに比重が置かれた鬼畜と云うべき切り口なので、グロ苦手な人でも(何とか?)イケそうな予感。
    しかしあれですね、腐物汚物描写に優れた作家って、食べ物を美味しく表現するのも巧いんですね。読んでる最中、腹が鳴る鳴る。

  • グロイのがダメな人はとことんだめらしい・・・と聞いてはいたが、ははは、やはりなかなかのグロさでした。
    私は得意でも苦手でもなかったけど、結構いけたww。
    いけたどころか、もろにハマった。
    もー、いつオオバカナコが殺られちゃうのか、読み始めから読み終わりまできりきり舞いさせられちゃったわよ!
    ストーリー的に速攻殺されちゃうことはないだろうと、そんなのは重々承知なんだけど、それでもすんごい緊迫感なの!
    ページをめくる手を止められなくなったのは久々でした。
    目次もね、ダイナーの〈キャンティーン〉のメニューになってて凝ってるの↓。

    食前酒/メルティ・リッチと蜂蜜のスフレ/究極の六倍とベネズエラの濃い闇/デルモニコの掟とスキンの子守唄/ゴーゴンの髪とハムヴィーズ・ロック/ブリキ男の心臓とチンパンジーの小便/歌姫のウォッカ/食後酒

    この中の究極の六倍と蜂蜜のスフレ(あ、私は余計なもんは入れなくていいです)に惹かれましたー。
    あぁ、ボンベロが作るハンバーガー、食べてみたい~。
    (でも殺されたくないからお店にはいけないわ~)
    つかボンベロ本人がかっちょいいよ!!
    ビジュアルは多分好みじゃない(と思う)けど、実際目の前にこんなの現れたら惚れるっつの!
    スキンやキッド、炎眉など、イカれた殺し屋たちにも不思議な愛しさを感じちゃったわ。
    (ボンベロの相棒、菊千代も好きなキャラクターだわぁ。「かわいい」とか言ったら喉笛噛み切られそうだけど)
    登場人物も文句なし、ストーリーも、独特の世界観も文句なし。
    のめりこむようにして読んだ一冊。


    人は自分に合った靴を履くべきだと思う。
    押しつけられた靴ではなく、自分で探して納得した靴を。
    そうすれば驚くほど遠くまで歩くことができる。

    カナコが心の中で呟く、このラストの言葉も印象的でした♪

  •  ストーリー
     主人公のオオバカナコ(本名)は、カウボーイとディーディーというカップルの武装強盗に出来心で運転役としてつきあい、見事に失敗し捕まってしまう。杜撰な犯行計画だったわけだ。カウボーイは拷問死、カナコとディーディーはさんざん撲られた末に、山中で穴を掘らされることになる。もちろん、自分が埋められるための穴である。生存確率はほぼゼロ%。唯一の望みは誰かに身柄を買ってもらうことだが、すでに一回競りにかけられ、買い手なしで終了していた。したがって絶望なのである。だが土に埋められ、絶体絶命というところで、カナコは最後の賭けに出た。
     。カナコを貰い受けることになったのは、ボンベロという男だ。彼はダイナーを経営している。といっても普通の食堂ではない。分厚い扉に守られた要塞のような場所で、店内ではボンベロが絶対のルールとして君臨する。それもそのはずで、ダイナーの客はプロの殺し屋だけだからだ。カナコの前にも何人ものウェイトレスが雇われてきたが、みんな「おもしろ半分に」殺されてしまった。一命を救われたカナコだが、彼女の運命は風前の灯なのだった。

    このようにして、カナコの生き残るための闘いが始まるわけである。舞台がダイナーという閉鎖空間であるところに注目されたい。主人公は、狼の檻に投げこまれた子羊同然。最初は生き残るすべどころか、檻のルールさえ判らないわけである。そうした状況から、いかに力をつけて生き延びていくか、というのが前半部のテーマだ。

    後半では、物語の様相が少しずつ変化していく。閉鎖空間の中にカナコとボンベロの二人きり。いわゆる「青い珊瑚礁」状態ですよ。最初は反目しあっていた二人の間に、少しずつ心が通い始めていく、というのは小説の常道だが、作者が巧いのはくだくだと会話を重ねず、「料理」という行為ですべてを代弁させているところだ。厨房が主舞台となる小説だけあって、この小説で出てくる食べ物はどれもみな実に旨そうである。客としてやってくる殺し屋たちにも、それぞれ食べ物がらみのエピソードがあるのだが、カナコとボンベロの間にも料理を通じて接点が生まれてくる。ここだけ取り出して読めば、料理恋愛小説なのである。舞台は血まみれだけど、胸を打つロマンスが展開されるのですね。

     そしてもちろんアクションの要素もある。登場する殺し屋たちは全員なんらかの特殊能力の持ち主で、中には人体改造まで経験している奴もいる。間違いなく作者は、山田風太郎の忍法帖小説を意識しているはずだ。風太郎忍法帖ではゲームの駒のように忍者たちが扱われ、人命がおもしろいほど粗末に扱われた。戦争などの圧倒的な暴力を前にしたとき、人間は虫けらのように小さな存在にすぎなくなるということを示すためだ。平山も同様のことを登場人物に語らせている。おのれが戦場に生きていることを知らない人間は、それだけで無知という罪を犯しているのだと。こうした世界観によって蒙を啓かれるからこそ、カナコは強く逞しく成長していけるわけなのだ。
     

  • web連載の時に読んでいてオチが気になったので購入。
    あとがきでご本人も触れていたけれど加筆修正っぷりがぱねぇ。
    前半は平山先生お得意の『地に足着てる非現実感』なシチュエーションから
    後半はエンターテイメント感たっぷりの仕上がりで初平山先生にぴったりの本じゃないかな。
    読みながらハンバーガーが食べたくてたまらんかった。

  • あああなんだか悔しいっ!
    文字の写植がちょっと好きじゃないなとか、いい意味での安っぽさの中に混じる表現のほつれみたいなものが気になるな~とか感じながらも、だんだん読むスピードに加速がついて1日で一気に読んでしまった。
    少し前のダヴィンチの「今月のプラチナ本」になっていたような。
    殺し屋だけが集まる会員制のダイナーで、24時間生命の危機に晒されながら働くことになった、無力なウサギのような主人公の悪あがきな日々。
    レザボアとかパルプ・フィクションみたいな雰囲気だなあと思って読んでたら
    「いくわよ、パンプキン」「OK、ハニーバニー!」などとチンピラカップルの会話がまんまパルプのパロディでしたw
    元殺し屋のボンベロがつくる究極のハンバーガーの数々の描写が半端なく美味そう~~~!!で、それがまたろくな食事もとらずに働き続けて目の前で人が殺されて精神的にもへとへと…みたいなタイミングで毎回出てくるため、ふかふかのバンズとたっぷりのチーズと子鹿の背肉やら早生まれの子羊やらを使った柔らかくジューシーなパティの肉汁がじゅわっと口の中に溢れ出す瞬間を想像し、思わず今すぐファーストフード店にかけこんで、大きなハンバーガーにがぶりつきたい衝動に駆られます。こんなの反則だーーー!
    各章のタイトルも洒落ていて、<食前酒><メルティ・リッチと蜂蜜のスフレ><究極の6倍とベネズエラの濃い闇><デルモニコの掟とスキンの子守唄><ゴーゴンの髪とハムヴィーズ・ロック><ブリキ男の心臓とチンパンジーの小便><歌姫のウォッカ><食後酒>と、劇中に登場する強烈な品々がコース料理の名前のように並べられています。
    そしてラストは誰もが知っている有名フランス映画○○○の展開そのまんまなんですが、オマージュなのかパクリなのか?!
    ほかにもあちこちに元ネタがありそうで気になります。してやられたり。

  • スゲー...。ノワール・エンターテイメント!!! 登場人物が
    ほとんどフリークス!! なのにお茶目!!!
    血と肉と笑いとスピードとアドレナリンと狂気と凶器と
    愛情と哀しみと...それから...んー...
    色んなもんがまさにハンバーガーの如く挟み込まれた
    渾身の逸品。ハードな暴力描写もガンガン、サービスしまくりで
    お腹いっぱいになりそうなんですが、止まらない。まだイケる!!

    ほぼ舞台がワンシーンなので舞台みたいな構成。なのに
    全く単調じゃないし、異常なスピード感に溢れてます。
    決して万人には勧められないけど、平山作品というハードルを
    軽く越えられるような気がします。
    今後もこの路線での作品、期待しちゃいます!!

  • ハンバーガーめっちゃ美味しそう。
    後書きにもある通り、力の限りエンタメに全振りした小説で、面白かった!良い意味で心に何も突きつけてこない本なので、筋だけに没頭して読める。
    詰め込みすぎなのかやや駆け足だけど、刺激的なキャラとストーリーには合っている。

    ボンベロやスキンがどの辺を契機にカナコに惹かれたのか謎である。菊千代は主人の心情を察知して守ってたのかな。彼女の精神的タフさ、不思議とサッパリしてるところ、でもやっぱり倫理観はパンピーレベル、なアンバランスさが魅力的なのかもしれん。
    終盤の「(本当は優しいかもしれない)殺し屋に守られる一般女性」は一部オタクに刺さりそうな雰囲気だ。自分を含む。

    エピローグはあっさり。もうお腹いっぱいだから丁度いい。カナコがボンベロと再会する日を想像すると、楽しい。

  •  最初のページから残酷な暴力描写があり、一瞬怯んでしまった。リアルに想像すると本当にトラウマになってしまいそうな表現満載なので、耐性ない方は読む時気をつけて下さい!
     闇サイトでアルバイトに応募したことがキッカケで、殺し屋達が集う食堂でウェイトレスとして働くことになった主人公のオオバカナコ。毎日が...というより、一瞬一瞬が、生きるか死ぬか?の壮絶な環境におかれてしまい、地獄のような経験をするのですが、やられっぱなしではなく、必死で知恵を絞り生き抜こうとするカナコの姿に、たくましさや生への強い欲望を感じ、カナコどうか生き抜いてくれ!!と応援せずにはいられません。
     店長のボンベロや、殺し屋の客の過去も徐々に分かっていくのですが、胸が苦しく、重く、壮絶でした。
    そしてカナコにも、思い出したくもないような過去が...。
     エグいシーンだけではなく、料理の美味しそうな描写もこの小説の魅力で、読んでいて涎が沸いてくるような、お腹が鳴りそうな...温度や匂いまで伝わってくるようでした!
     平山夢明さんの小説を読んだのは私はこれが初めてだったのですが、今後も色々と読んでいきたいと思います!


     

  • 殺し屋の集う食堂で働かされることになったカナコ。
    武器とか戦闘シーンなどが、私にはあまり想像出来なくて困ったけども、文章は読みやすい。
    人の無惨な死に方を淡々と説明する描写はキツかったけども、合間に愛が見えると不思議とキュンと来る。

  • ハンバーガーが、食べたくなっただけかな。

    グロいって聞いてたけど、
    グロさがわからなかったなぁー。
    グロいって思わない自分は、なんか変なのかも。

    カナコが、なんだかんだで殺し屋との中を
    渡り歩いてる感じは、よかったな。

    うーん…
    とりあえず、ハンバーガーが食べたくなる本!!

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著者プロフィール

1961(昭和36)年、神奈川県川崎市生まれ。法政大学中退。デルモンテ平山名義でZ級ホラー映画のビデオ評論を手がけた後、1993年より本格的に執筆活動を開始。実話怪談のシリーズおよび、短編小説も多数発表。短編『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社文庫)により、2006年日本推理作家協会賞を受賞。2010年『ダイナー』(ポプラ文庫)で日本冒険小説協会大賞を受賞。最新刊は『俺が公園でペリカンにした話』(光文社)。

「2023年 『「狂い」の調教 違和感を捨てない勇気が正気を保つ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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