(P[に]2-1)私の大好きな探偵 仁木兄妹の事件簿 (ポプラ文庫ピュアフル に 2-1)

著者 :
制作 : 戸川 安宣 
  • ポプラ社
3.47
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本棚登録 : 444
感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591114452

感想・レビュー・書評

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  • 植物学者の兄・雄太郎と、行動派の妹・悦子。そんな仁木兄妹の活躍を描いた短編集。キャラクターたちのコミカルなやり取りと、ミステリとして練られた展開で、初出こそ昭和30年代ながらも、今のユーモアミステリやキャラミステリと比べても、決して遜色はないように思います。

    印象的な短編は「黄色い花」
    植物学者である雄太郎ならではの視点から見つかる解決の糸口から、ロジックを突き詰めてのトリックの解明がお見事な作品。

    「灰色の手袋」はクリーニング店での取り違えから、事件が展開されます。少しずつ明らかになってくる登場人物たちの不審な行動、そこの場面のつなぎ方が巧く感じました。少しずつ推理の材料がそろってきて、そして伏線の回収と推理と、短篇ながらまさに正統派の本格ミステリといった感じ。

    「ただ一つの物語」は手作りで作られた絵本の謎をめぐる短編。悦子が今は亡き友人から贈られた絵本を狙う怪しい人物たち。絵本に隠された秘密が話を引っ張り、そして過去の事件も交差して、読み応えがありました。
    この短編では悦子は結婚し子供もいるのですが、その子供たちの描写であったり、友人のことに想いを馳せる悦子の内面描写も印象的な作品。

    最初に収録されている「緑の香炉」では二人は中学生ですが、最後に収録されている「ただ一つの物語」では悦子は二児の母になっていて、作中の時間の流れも楽しい作品でした。
    また解説では著者である仁木悦子さんの人生についても紹介されていますが、これも興味深い。

    仁木悦子さんは4歳の時に病気のため半身不随となりながらも、大人になってから執筆をはじめ、当時女流ミステリ作家が少ない中、1957年に江戸川乱歩賞を『猫は知っていた』で受賞。著者の性別や経歴で注目を浴び、作品は異例の大ヒット。その翌年に松本清張の『点と線』が発売され、清張につながる推理小説ブームの火付け役、そして今の女流ミステリの先駆者として解説の戸川安宣さん(東京創元社の元社長)は仁木さんを評価されています。

    「ただ一つの物語」に関しての仁木さんと編集者のエピソードも面白い。本物のミステリ小説さながらのエピソードや、心温まるエピソードもあって、解説自体も面白く読めました。

  • かわいいふりして結構、本格。

    短編が五編。
    大きな仕掛けがある訳ではないですが、隅々まで行き届いた伏線と思わぬ展開に引き込まれました。
    意外と血なまぐさい事件も多いのですが、仁木兄妹の軽妙なやり取りに、ほっとさせられます。そしてなにより、作者仁木悦子の人間に対するまなざしが優しい。登場人物たちはちょっとずるいところがあったり弱いところもあるけれど、それぞれみんなちゃんと生きています。
    トリックのための物語ではなく、物語として面白く、尚かつミステリとしてきちんと成立している。そんな作品が僕は好きです。

    『ただ一つの物語』が特に素晴らしく、巻末の解説で作者の人となりを知って読み返すと、また味わい深くなります。

  • ありがとう戸川さん!と全力でお礼を言いたいです。日本の女流ミステリ作家の草分け、仁木悦子さんの傑作選。この仁木兄妹のシリーズが一番好きなんです。ほとんどが前に読んだことのある作品であっても嬉しい。登場人物紹介の悦子はもうちょっとふくよかな気もしますが、イラストもかわいらしいし。シリーズ中の時系列に沿っているので、仁木兄妹の中学生時代から悦子が二児の母になるまでを読むと、オバサン的な感慨深さもあります。ばあやじゃないけど「あのお転婆さんがお母さんだなんてねぇ…」と。シリーズ全作、文庫で復刊してくれたらいいなぁ。

  • 仁木兄妹シリーズ。
    YAだからか漢字が少なめな感じ。最後のだだ一つの物語以外は既読。人間のちょっとばかり外に漏れ出た意地悪を書くのが上手い。

  • 『猫は知っていた』を読んでみたいと思っていて、その前にこちらを読んでみた。これまで書籍に未収録だった話も入っているそうだ。
    仁木兄妹が成長していって、さまざまな年代のお話があり、
    「ただ一つの物語」がよかった。
    昭和の話だと思って読んではいたが、さらっと「疎開していたとき」なんて書いてあるので思った以上に上の世代の話なんだなぁと逆に驚いた。とても読みやすいので、ミステリーの入口としてもオススメ。
    表紙の絵もかわいい。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/684238

    続編の『猫は知っていた』は第3回江戸川乱歩賞を受賞したベストセラーに。
    装飾系男子な兄と好奇心旺盛な妹が、遭遇する事件に挑む「仁木兄妹」シリーズ。

  • 仁木雄太郎・悦子兄妹の事件簿。5篇の短篇集で、兄妹の年齢順に並べられている。編者の戸川安宣による選りすぐりの作品だけあってどれも佳作。最初の事件は兄妹がまだ中学生の時分、最後の事件では悦子は2児の母になっている。収録作品は、みどりの香炉/黄色い花/灰色の手袋/赤い痕/ただ一つの物語。

  • 兄妹の可愛さ。登場人物がみんな生き生きしていてとても楽しい。
    ばあやなんか「あいにくと人殺しがあって」と、人殺しより、それで兄妹を息子が迎えに出られないことを嘆くようなことを言ったり。
    戸川さんの親愛の情溢れる解説もよかった。

    ○みどりの香炉
    中学生の兄妹のかわいらしいこと! おじさまも素敵な人。
    語り口と事件の解決のやさしさに、なるほど初出少年誌の“らしさ”を感じた。これは子どもに読ませてあげたい。
    ○黄色い花
    植物学者の面目躍如といったところ。兄のオムレツにだけ胡椒を六倍にしてやる、だとか、悦子の知りたがりと愛嬌が。何を事件の解決のきっかけにするか、本格ものらしいトリックだと思う。
    ○灰色の手袋
    これ好き。途中出てくる弟が、ちょっと反則気味では?という気がしないでもないけど、ミステリ的解決として一番のような。傷痍軍人が普通の人物として出てきているのに新鮮さを感じてしまった。きっと、当時、普通にいたんだろうなと。筆者の境遇からも、そうした人ともしかしたらリハビリ関係の病院で知り合う事もあったりしたんじゃなかろうか。横溝や乱歩の傷痍軍人のイメージが何か少し薄暗かったりするのに対して、こちらは障害があって大変ではあるにしろ、市井の人として普通に生きていく人、ただその特性がトリックに使用されてハメられそうになる、というのが、独特でとてもよかった。
    ○赤い痕
    ばあやとその夫と、それぞれとの兄妹のやり取り。ふたりが、この夫婦と息子にみせた愛情がよかった。出世させてあげたり、目をつむったり。
    ○ただ一つの物語
    日常の謎を解決しようとして、その裏にあった友人の死の真相を明らかにする。えっちゃん、ママになっても“らしさ”満点。下の子の分も上の子の幼稚園弁当と一緒に作って家で食べたり、子どもの前でも食事中に新聞を読んで、「元からそんな完璧な母じゃない」と言ってみたり。この、自然であっけらかんとして、明るい感じがとてもいい。作者ご本人は甥っ子姪っ子と若いころ一緒に暮らしていたそうだから、そこで相手をしながら見ていたのかな。子どもへの愛情があふれていて、作者の人となりがにじみ出ているんだなと思った。かわいらしい話で、よかった。

  • 「猫は知っていた」に続く読了。猫は…のほうはキャラに全く共感出来ず残念…だったのですが、今作はなんともスイスイ読めて、悦子も雄太郎もすごく良いなぁと思いました。短編だったのが良かったのか、獅子文禄を読んで気持ちが変わったのか…とにかく昭和の時代背景も素敵だし、雄太郎の推理も悦子のちょっとおてんばぶりも良いなぁと思いました。そしてやっぱり表紙も素敵☆昭和が好き&ミステリ好きなら、読んでみても良い作品だと思います。また巻末に作者、仁木悦子さんの紹介がされており、それも興味深かったです。

  • ポプラ文庫ピュアフルの巻末にあった既刊紹介ページで初めて仁木兄妹の事件簿を知ってから、ずっと読みたくて長いこと探していて、ようやく今年入手できました。

    ▼収録作品
    「みどりの香炉」
    「黄色い花」
    「灰色の手袋」
    「赤い痕」
    「ただ一つの物語」

    仁木兄妹が中学生の頃のお話から始まり、最後は悦子が二児のお母さんになっています。ビックリ!
    『クマの子べーちゃん』という手製の絵本がキーポイントの「ただ一つの物語」が一番好きでした。

    他の仁木兄妹のお話も読んでみたいなあ。

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著者プロフィール

1928 - 1986。小説家。ミステリーや童話を手がけ、1957年に長編デビュー作『猫は知っていた』で江戸川乱歩賞を受賞。明快で爽やかな作風で、「日本のクリスティー」と称された。1981年には「赤い猫」で日本推理作家協会賞を受賞。無類の猫好きとして知られる。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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