([ほ]1-3)星新一時代小説集 人の巻 (ポプラ文庫 ほ 1-3)
- ポプラ社 (2009年12月5日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591114568
感想・レビュー・書評
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ショートショートの大御所による時代小説短編集第三弾。
『薬草の栽培法』は真面目な男が女遊びを覚えて追い詰められていく話なのだがオチは予想外で驚いた。オチ的に氏のいつもの作品では難しいだろうと思う。
作風といえば『城の中のひと』と『はんぱもの維新』が新鮮かつ面白かった。秀頼と小栗を主役に扱っているのは珍しいのでは。さらりとした文書に乾いた目線で淡々と小栗と家来の人生を描いておりこの方面でももっと読みたいと思った。維新の方でも秀頼の亡霊(憶測の話だけど)話が出てきたり微妙に繋がってるのも良い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シリーズ3冊のなかでいちばん好きだったと思う。城のなかの人とはんぱもの維新はストーリーそのものも勿論、面白かったが、歴史の真相がわからない側面の捉え方の幅が広がったような感覚が新鮮だった。あまり日本史に詳しくないので歴史書を読んでみたいという気持ちにもなった。
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星新一に、こんな本があったなんて、知らなかった。
江戸の初めから幕末までを時代背景とした五篇の短編を集めたもの。
使われる言葉は平易で、文もすっきりしている。
変に持って回った表現がなく、読むテンポも上がりがち。
でも、自己の欲望に忠実に生きた人の浮沈や、運命に翻弄される人の姿などが印象的に残る。
一番印象的だったのが、五篇の中でも最も長い「城のなかの人」。
主人公は豊臣秀頼。
邪悪から遠ざけられ、嫉妬もないような高貴な育てられ方をし、実に素直に育っていく。
自分が「旗印」であることを理解し、淡白ではあるけれど、人の本質も的確に見ていくような聡明な青年だ。
しかし、行動力がない。
美しい大阪城に魅入られてしまったからだ。
滅亡に近づく中で、自分が何を理解していなかったか、どこで間違ったのかを悟っていくのが痛々しい。
高貴な若き君主が滅びていくことで刺激されるのか、太宰治の「右大臣実朝」を思い起こしてしまった。 -
初めて読む星新一が時代小説。
歴史の激動期にその身を置いているはずの主役たちが、皆どこか諦観し、運命に翻弄されっぱなしの受け入れっぱなしというのが面白い。その淡々としている冷静な目線は、いっそ皮肉にも見えた。
私の中で「後味悪い」で有名な星新一だが、この小説群はただ「後味が悪い、不幸だ」では終わらない静かなエネルギーを感じた。歴史物特有の世の無情さや儚さと言ったものが、それを緩和し、より味わい深い作品になっていると思う。
「コンサルタント」という単語が平然と顔を出していたり、詐欺師や横領の話があったりと、ストーリーとしては結構近代的なものがテーマかもしれない。
蛇足だが、水戸黄門や暴れん坊将軍みたいな時代劇をイメージして読むと、猫に顔面パンチされたような感覚に陥る。 -
豊臣秀頼の話は何回読んでも素晴らしい。時代小説ももっと遺していってほしかったです。
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星新一って時代小説も書いていたとは知らなかった。
全5編の短編集。
どれも星新一らしいオチがついてて、ニヤリ。
佐幕も倒幕も「はんぱもの」とやきもきする小栗忠順目線の幕末話が面白かった。 -
星新一の時代小説を集めた本。他にも「天の巻」「地の巻」があるそうな。20年ぶりぐらいでホシ作品を読みました。シンプルで飾り気のない文章が懐かしひ・・・。「城の中の人」は、むかし文庫本持ってたなー。高校生のころだったかな?ショートショートばかりでなく、時代モノも面白かったのだなぁ、と再認識しました。あと、エッセイも良かったなぁ。むかしよく読んだのを思い出すです。