ばら色タイムカプセル

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 296
感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591118115

作品紹介・あらすじ

13歳の家出少女・奏が流れ着いた場所は、海が見える町にたたずむ、不思議な老人ホーム『ラヴィアンローズ』だった。咲き誇る薔薇が自慢のこの施設で、年齢を詐称して働きはじめた奏は、薔薇園に隠されたある噂を知ることに…。40年以上の時を超えてその秘密が明かされるとき、止まっていた、みんなの時間がふたたび動き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 学年イベントでタイムカプセルを作って校庭に埋めたのは、中学三年生の頃。
    15年後、みんなが30歳になる年に掘り返すことを約束し、
    自分の一生を想像して書いた年表と思い出の品々を、ぎゅうぎゅうに詰め込んで。

    そして約束通り15年後、遠くから皆駆け付けて懐かしい校舎でカプセルを開け、
    根拠のない自信に後押しされて書いた、あまりにも立派な自分の未来像に赤面したり
    あの頃、クラスでだけ大流行していた遊びを思い出して懐かしがったりしたあと
    記念誌を作るため、カプセルの中身を学校に置いて、とりあえず解散したのですが

    消えてしまったのです、全部。 文字通り、煙になって。

    何もしらない在校生が、「なんだ?この汚い紙切れの大群は」と
    思い切りよく焼却炉で燃やしてしまったとのこと。

    でも、その時ふと思ったのです。
    消えてしまったんじゃなくて、消えてくれたんじゃないかって。
    あの頃の輝かしい成績も、あるいは思い出したくない辛い思い出も
    15年の時を経て、かたちあるものとして甦るのはたった1日でじゅうぶん。
    あんなこともこんなこともあったけど、あの頃の栄光からも屈辱からも自由になって
    今いる場所で、思うまま生きていいんだよ、とでも言うように。

    この『ばら色タイムカプセル』も、可愛らしいタイトルと表紙からは
    想像もできないような苦い過去や罪の意識に彩られた物語だけれど
    心のタイムカプセルを開いたとき、その中身に捉われ、引き摺られて生きるのか
    しっかり咀嚼して栄養にしてしまうのか、解放して清々しく見送るのか。
    できることなら明るい選択をして、前を向いて生きられますように、と
    13歳にしてストレスで白髪になってしまった奏を見守る
    大沼さんのまなざしが温かく、心に沁みます。

    家出した奏を受け入れる老人ホーム、ラヴィアンローズのおばあちゃんたちの
    悲しみも淋しさも昇華した「プロの乙女」ぶりが素敵な物語です。

    • 円軌道の外さん

      コレ気になってた話だったんで
      まろんさんの本棚でたまたま見つけて、

      『やったぁぁ!!
      まろんさんの解説が読める〜』って

      ...

      コレ気になってた話だったんで
      まろんさんの本棚でたまたま見つけて、

      『やったぁぁ!!
      まろんさんの解説が読める〜』って

      なんかラッキーな気分です(笑)(^O^)


      傷ついた中学生の少女が
      老人ホームで働くという設定が
      スゴく斬新に感じたし、

      確か『真夜中のパン屋さん』の作家さんですよね(笑)


      次図書館でチェックしてみます!



      自分は小学校時代
      転校ばっかやったんで、
      タイムカプセルを埋めた思い出が
      あんまないんやけど(汗)、

      まろんさんは
      実際経験ありますか?

      だからテレビや映画でそういう場面を見ると、
      スッゴく羨ましく思ってしまいます(^_^;)


      映画『20世紀少年』でも
      確かそういうシーンありましたよね(笑)

      2013/02/06
    • まろんさん
      円軌道の外さん☆

      そうそう、『まよパン』の大沼さんの作品です。
      このところ、大沼さんの作品にハマッていて♪
      図書館にある大沼さんの本は、こ...
      円軌道の外さん☆

      そうそう、『まよパン』の大沼さんの作品です。
      このところ、大沼さんの作品にハマッていて♪
      図書館にある大沼さんの本は、これで読みつくしてしまいました。

      この本、ヒロインの奏ちゃんが年齢を偽って働く老人ホーム、ラヴィアンローズの
      おばあちゃんたちが、とにかく素敵なのです!
      特に、歌舞伎のおっかけをしている3人の暴走おばあちゃんたちが♪
      ホームの庭を埋め尽くす、見事な薔薇の秘密もドキドキの展開ですよ!

      私がタイムカプセルに入れたものは、
      こうして在校生によって煙になって燃えてしまったのですけれど
      自分の一生を想像して書いた年表には、「最後には、ピアノを弾きながら息絶える」
      と書いてあって、笑いました(*'-')フフ♪
      2013/02/06
  • 母のDVにより崩壊した家族。父は自分の家庭教師と再婚。どちらにも迷惑をかけたくない、しっかり者の奏は用意周到な家出を企てるが…

    そこはやっぱり13歳。仕事にはありつけず、思い詰めた彼女は身投げして…三人の天使ならぬ、おばあちゃん方に拾われ、特別養護老人ホーム「ラヴィアンローズ」での住み込みバイト生活が始まる。

    髪の白髪化と言えばマリーアントワネットかブラックジャックが定番だけれど、多分これは最年少。

    海老様似のイケメンコックをストーキングするプロの乙女トリオに、厨房を独占して凝ったフレンチだの好き勝手に作り上げる者、昔取った杵柄でホーム内にクラブを開いてお酒を振る舞う者…個性豊かな人生の大先輩方に圧倒されながらも自分の居場所を見つけ出す奏。

    しかし、ホームには奇妙な噂があって…

    可愛らしいおばあちゃんになりたいなと思うけれど、まだおばちゃんにはなりたくないお年頃に読了。

  • 優しい雰囲気ではあるが、内容は人生や心について考えさせられる。
    長生きが怖くなくなった、気がする。

  • タイトルと表紙の絵だけでは、書店に並んでいても手に取る事はなかったであろうけど、図書館で人気作家コーナーという図書館での月一おすすめ棚にあったので借りてみたら、意外なほどに面白かった。
    軽い口調のタッチで13歳の主人公目線で書かれており、甘いも酸っぱいも知り尽くした老人ホームで過ごす主人公の立ち振る舞い、経験がなんともコミカルであったりしんみりとしたり、そしてサスペンスであったりとないまぜに網羅されており、綺麗に最初から最後まで上手にまとめあげられていた。
    老害されど老人は素晴らしい

  • あーまたタイトルに騙された(爆)。
    『ばら色タイムカプセル』なんて字面の綺麗なタイトルついてるのに
    揃いも揃ってずいぶんヘヴィーじゃないか。

    13歳でストレス要因の総白髪で義務教育放棄して家出とか
    (しかもその方法がやたら周到だし)これをヘヴィーといわずして何という。
    お年寄り連中はヘヴィーな何某に折り合いを付けつつ日々を生きてて
    若いもんはそこから学んでもがいて前に進んでる感じがした。
    それでも最後の方で田村くんが語ってたくだりはだいぶずっしり来たけど。
    いくつになっても生きてくってのは難儀なことなんだなぁとしみじみ。

    それにしてもやたら綺麗なタイトルのお話には要注意だな。
    何処に棘やら毒やらが潜んでるか分かったもんじゃない。
    …それって昔の童話のお決まりのパターンじゃないかΣ(|||▽||| )

  • あー、いいですねえ、こういうお話好きです。

    再婚した父親と再婚相手と一緒に暮らすのが嫌で家出→自殺未遂した白髪の女の子、奏ちゃんが老人ホームで元気なお年寄りたちと過ごして自分を見つめ直していくお話。

    児童書ちっくですが、書いてある内容はかなりシビアで重い。
    けど、それを全く重く感じさせないおばあちゃんたちの明るいキャラが素敵です。

    遥さんの狂気じみた愛情がぞっとするほど美しいバラの描写と相まって凄味を増しております。
    美しいものが見えないところに隠しているものって一体何だろう。

  • 表紙には色とりどりの薔薇の咲く庭に立つ白い髪の女の子。13歳の家出少女奏(かなで)は、衝動的に海に飛び込む。流れ着いたのは海辺の不思議な老人ホーム、ラヴィアンローズ。年齢を詐称して個性豊かな老人たちの世話をしながら暮らすうちに、奏は咲き誇る薔薇の庭にまつわるある噂を耳にするようになる。そこに隠された秘密とは・・・。人の心の不思議とあたたかなつながりを感じる、心に残る一冊。

  • 家出少女が老人ホームに迷い込んで働くお話。思い出できてよかったね。

  • 真夜中のパン屋さんがすきだったので、こちらにも手をだしました。
    予想外に重いはなしでした。いや、大沼紀子だから予想通りなのかも。
    13才にしてストレス性の総白髪の奏。
    お父さんが再婚するから家出してみたけど、13才では稼いで生きていくのは当たり前だけど上手くいかなくて、たどり着いたのが老人ホーム。20才と偽って住み込みで働いていく。老人達との交流の中でいろいろ経験して思うことがあって…。
    奏が白髪なのも、乙女たちとなんとかやっていくのも、友達ができるのも、なんかいいなぁ。

  • 父の再婚相手は嫌いではないけれど、この先一緒には暮らしたくない。 Dvが原因で離婚して離れて暮らす母親の元に行くのも嫌で家出。そこで奇妙な老人ホームにお世話になる。そこで繰り広げられる人間関係の中で心が育って行く。後半は少しミステリアスな展開が待っていて一気に読んでしまった。

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著者プロフィール

1975年、岐阜県生まれ。2005年に「ゆくとし くるとし」で第9回坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、小説家としてデビュー。『真夜中のパン屋さん』で注目を集める。

「2019年 『路地裏のほたる食堂 3つの嘘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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