(002)絆 (百年文庫)

  • ポプラ社
3.80
  • (15)
  • (31)
  • (21)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 224
感想 : 50
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (155ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591118849

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 3つの「絆」が紹介されています。

    海音寺潮五郎「善助と万助」
    戦国の世。兄弟の約束を交わした二人の絆です。歳月を経て老年を迎えた二人は、城主長政の面前である騒動を起こします。その結果、弟の兄へと心根に秘めていた想い、そして自分よりも体が大きく、性格も乱暴な弟へと兄が拳にこめる愛情が、表立って見えてきました。
    それは熱く、そしてほろりとくる絆でした。
    と、同時に城主の前だろうと遠慮などない二人の様子に、きっとみんなが何でも言い合える組織なんだろうなと、長政と家臣たちとの太い絆を感じました。

    コナン・ドイル「五十年後」
    音信不通となった恋人ジョンをずっと待ち続けるメアリー。どんなに周囲に煙たがれようと、憐れと思われようと、必ずジョンは帰ってくるとメアリーは信じてます。タイトルが示す「五十年後」
    メアリーの胸に過るのは、怒りでも悲しみでもありませんでした。
    いつ帰ってくるとも分からぬ愛する人を信じて待つことはとんでもなく難しいです。愛してるはずなのに、その想いが絶望や憎しみ、苦しみに変わってしまうこともあるでしょう。メアリーも悩んだはず。それでも愛を貫き通したその想いの強さに心打たれました。

    山本周五郎「山椿」
    もう、これは梶井主馬の男気ですね。裏切られようと騙されようと、男はぐっと堪えます。そして自分のことより、そんな目にあわされた相手のことを思んばかり行動します。誰ひとりに自分の胸のうちを明かすことなく……
    主馬はきっと、自分が勝手にやったこと、見返りを期待するわけではないと思っていたのではないでしょうか。これって無償の愛ですよ。人を信じることは難しい。でも、その先には希望があることを伝えてくれます。
    ……このお話が一番好きでした。

  • 漢字一文字をテーマに、古今東西の名短篇3篇を収めた百年文庫、読むのは2冊目。日本人作家と海外作家、どちらも入っているのがいいな…と思って選んだのが「絆」。
    ●海音寺潮五郎「善助と万助」
    黒田家の家老2人の物語。大河ドラマの「黒田官兵衛」のキャストを思い出しながら読んだ。強情な万助に半分呆れかけたところでの、ほろっとする展開がよかった。
    ●コナン・ドイル「五十年後」
    今回一番好き。ホームズ以外の作品も味があってよいですね。冒頭の喩え話がまわりくどいかなと一瞬思ってしまったが、その後語られる、離れ離れになった恋人達の波瀾万丈な歩みを思うと、なるほど…である。格調高い訳文も素敵。
    ●山本周五郎「山椿」
    新妻のつれない態度に初めはイライラさせられるものの、その理由を知ってからの夫の主馬の行い…「男」です、惚れ惚れします!伏線は張られていたはずなのに、気付かず「やられたぁ!」と思ってしまった。

    どの作品も、「絆」というより「忍耐」だなぁと。いや、耐えて耐えてこそ、絆は一層強まるということなのか。ベタではあるが、決して野暮ったい展開にならず、カタルシスを感じさせてくれるところが名作たる所以なのかなと。
    活字も大きく、読み易い分量のこの百年文庫。名作短篇に触れるいい機会、これからも読んでいきたい。

  • 海音寺潮五郎と山本周五郎が同じ本に入っているだけでも読む人は読むし、読まない人は絶対に読まないだろうという感じだが、果たして期待を裏切らない。
    まぁしかし山本周五郎のはちょっと反則が入ってますよね。
    32/100

  • 「善助と万助」は名前がかわるのがわかりづらかった。
    「五十年後」記憶喪失におちいっていて約束を忘れてしまったとは。切ない話だった。コナンドイルはこんな話も書いていたんだ。
    「山椿」は山本周五郎さんらしい人情あふれる温かい話だった。信じられるということくらい人間を力づけるものはない。

  • 人との繋がり、信じることが感動を生む、と言った話が三編。
    『山椿』がとても良かったです。

  • ≪県立図書館≫

    確かに、絆のお話ばかりだった。

    ただ、「善助と万助」の絆は、私には少し痛く悲しい思いもする。
    荒くれ者の但馬の気持が、悲しい。
    彼が備後を慕う気持ほどには、備後は彼のことを想ってはいない。
    備後にとって但馬は、やっかいである、という気持の方が強い気がする。
    その温度差が、痛く悲しい。

    但馬はいつまでたっても幼いかもしれない。
    それでも、それだからこそ、彼には魅力がある。
    確かに、近づきすぎると、しんどい人物だろうな。
    でも、少し離れてみていると、楽しい人だろう、と思う。


    「五十年後」は、美しい物語だ。
    汚れちまった私では、ありえないような、そんな物語だ。
    最後の数年間の幸せが、きらきら輝いて見えて
    悲しくも幸福な気持にさせられた。
    コナン・ドイルは、ホームズの印象しかなかったので、彼の著作も、もっと読んでみたい気持になった。

    「山椿」、好き。
    皆がよい状態に、幸せになっていく感じがいい。
    お話の終わり方も、好き。
    この後の主馬の言葉と、みちの表情とを、つい想像してしまう。
    そして、つい、微笑んでしまう。
    そんな終わり方で、いい。

  • 海音寺潮五郎 『善助と万助』
    コナン・ドイル 『五十年後』
    山本周五郎 『山椿』

    どれも絆というタイトルにふさわしい、思わず目頭が熱くなってしまうような結末を
    迎える話ばかりです。

    『善助と万助』 じっくりと登場人物の人となりを読者の頭に想像させる文章がラスト手前まで続きます。主と部下の関係、同じ老中同士の関係、仲の悪い者同士の関係……。
    それまで特に起伏のある展開があるわけでもないので、ラストまでなんとな~くな流れで
    読んで把握していく人間関係の繋がりですが、ラストで急に「ああ、そうだったんだ」と
    しみじみ心に訴え掛ける動きを見せます。
    登場人物は血を持ち、肉体を持って、しっかりと芯の通った考えを持って生きてきた
    ひとりの人間なのだと思わされます。
    実在した人物を描いた歴史小説。きっとそれがこういうことなのだと感じました。


    『五十年後』 最後は王道な終わり方なのに、王道がゆえに涙しました。
    百年文庫はやはりいい。
    この文庫を手に取らなければ、私はおそらくコナン・ドイルを、多くの人がそうで
    あるように(と、私は自分の瑣末な自尊心のために信じたいが)、
    コナン・ドイル=ホームズの作者としてしか知らないまま、この一生を
    勿体無く終えていたに違いない。
    大げさかもしれないが、多分実際そうなっていたのだから仕方がない。
    とにかく、こんなものも書いてたんだ!という驚きを与えてくれたことで高評価。

    『山椿』 一番内容が光っています。
    結末はやはり予想がつくけど、ラストの人物たちの書き表し方が絶妙に胸にくる。
    映像として完全に頭の中で物語が流れます。
    爽快感?とでも言ったらいいのでしょうか。何一つ取りこぼしもなく、登場人物たちの上に
    あまねく幸せを予感させてくれる結末でした。
    どれだけ時間が経った昔の話でも、よいものは良い。それがこの物語。

  • 五十年後や山椿は恋愛ものがすきな人は読むべき。あと、幸せな気分を増やしたい人、におすすめします。

    海音寺潮五郎「善助と万助」
    特になし。

    コナン・ドイル「五十年後」
    幸せにまとまるので、ほんわかする。作者がホームズ作品以外のものを書くのだと知った。

    山本周五郎「山椿」
    実写してほしい!!ラストの風景が目に浮かぶ浮かぶ。幸せになるなぁ。

  • 2012.11.3読了。

    3篇ともそれぞれに面白いのだが、中でも山本周五郎が素晴らしい。

  • 一件落着っていう話だった。
    一冊読んで落ち着きたいな~って人向き
    あとがきの著者の説明も面白い

著者プロフィール

(かいおんじ・ちょうごろう)1901~1977。鹿児島県生まれ。國學院大學卒業後に中学校教諭となるが、1929年に「サンデー毎日」の懸賞小説に応募した「うたかた草紙」が入選、1932年にも「風雲」が入選したことで専業作家となる。1936年「天正女合戦」と「武道伝来記」で直木賞を受賞。戦後は『海と風と虹と』、『天と地と』といった歴史小説と並行して、丹念な史料調査で歴史の真実に迫る史伝の復権にも力を入れ、連作集『武将列伝』、『列藩騒動録』などを発表している。晩年は郷土の英雄の生涯をまとめる大長編史伝『西郷隆盛』に取り組むが、その死で未完となった。

「2021年 『小説集 北条義時』 で使われていた紹介文から引用しています。」

海音寺潮五郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
湊 かなえ
村上 春樹
貴志 祐介
三浦 しをん
カポーティ
有川 浩
コンラッド:大岡...
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×