- Amazon.co.jp ・本 (165ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591118870
感想・レビュー・書評
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幸田文「台所のおと」
川口松太郎「深川の鈴」
高浜虚子「斑鳩物語」
どれも音にまつわる、美しく哀しい作品。
静かにひっそりと、丁寧で美しい音を立てることが
日常にあった時代。
どの作品も読後、それぞれの音が耳をすませば
聴こえてくるような余韻が残った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
3編とも穏やかで好きなんだけど、特に『台所のおと』がいい。
このシリーズ(百年文庫)、休みの日に少し時間潰すのにちょうどいいかも。 -
音 が小説に彩りを添える。
様々な音が印象的に出てくる3篇。 -
テーマがもう一つピンとこないときもあるが、本書のテーマ「音」は3編ともにうまくはまっている。高浜虚子の斑鳩物語は機織りの音(と抑揚まで再現される大和言葉も)、幸田文と川口松太郎は題名のごとくそれぞれ台所と鈴の音がそれぞれ作品の鍵となっている。
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三人の小説家の短編集。音に関係する小説。幸田文の「台所の音」しみじみ心に残る優しい小説だ。なるほど日本文学とはこんなものなのかと思い知らされる文体だ。料理人佐吉の目を通して三人の妻の話だが、最初は三人目の妻視点。以降は佐吉視点。小説を書いている人にとっては描写力のお手本になる本だ。今読んでも文体に関しては古臭さをまったく感じない。読んだことがなかっただけに驚いた。
川口松太郎の「深川の鈴」心に清と染みる小説だ。男女の仲を通し時代を世界観を照らし、読み手の心に大きな哀れの石を落としていく。重すぎてどかせない。しばらく哀れの石の下で物語の余韻に浸るしかない。書き手目線で見ればもう、上手いしか言いようがない。高浜虚子「斑鳩(いかるが)物語」確かに自然描写がうまい。当時もてはやされた文体なんだろう。幸田露伴の文体は好きだが、虚子のこの小説はさすがに古臭さを感じる。三篇中一番響かなかった作品だ。文学は描写、特に自然をありのまま描写することに重きを置いていた時代の作品から何かを得ようとするなら、やはり幸田文の作品か。斑鳩物語も面白いが、何度も言うが現代ではやはり古さを感じる。この古さが何なのか、それがわかればいいのだが漠然として掴むことが出来ない。どちらにしても三篇、全てが書き手にとっては意味ある作品だ。川口松太郎談「大衆小説は描写じゃない。筋であり、物語である」 -
何度読んでも幸田文の『台所の音』はよい。