- Amazon.co.jp ・本 (165ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591118870
作品紹介・あらすじ
病床の佐吉は台所の音を聞こうと寝返りを打つ。障子を隔て心を通いあわせる夫婦の姿-幸田文『台所のおと』。深川育ちで働き者の後家と小説家志望の「私」、ふたりはすし屋の二階で暮らし始めるが…。貧しくもいじらしい愛、川口松太郎の『深川の鈴』。菜の花が美しい大和路の宿、夜も更けて冴えた機織りの音が聞こえてくる…。純朴な娘の想いをほのぼのと描きだした高浜虚子の『斑鳩物語』。何気ない暮らしの音が優しく響く三篇。
感想・レビュー・書評
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(図書館本)
音にまつわるはなし
幸田文…台所のおと
気の難しい料理人(男)が床にふせ
聞こえてくる妻の台所の音にいろいろと思い馳せてるみたいなやつ。
料理人目線が中心。
時代もあるのか…ちょっと上から目線が
気に障る(笑)
音はタイトル通り
川口松太郎…深川の鈴
さくさくと読みやすい。
ちょっと艶やか場面あり。
主人公信吉の師匠の円玉…に
おいおい、って突っ込みたくなった。
お糸さんが気丈で強い…
音は鈴の音
高浜虚子…斑鳩物語
京都奈良に仕事にきた?男の話。
宿で出会った機織りをする女の子を気になり…
なんか、よくわからなかった。
旅エッセイみたいな感じ?
音は機織り機(筬)
一番読みやすかったのは深川の鈴
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幸田文「台所のおと」
川口松太郎「深川の鈴」
高浜虚子「斑鳩物語」
どれも音にまつわる、美しく哀しい作品。
静かにひっそりと、丁寧で美しい音を立てることが
日常にあった時代。
どの作品も読後、それぞれの音が耳をすませば
聴こえてくるような余韻が残った。 -
どの短編も、音が聞こえてくるとしか言いようがない、見事な三作品。静かな部屋で、本から聞こえてくる音に耳をすませたくなる。
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3編とも穏やかで好きなんだけど、特に『台所のおと』がいい。
このシリーズ(百年文庫)、休みの日に少し時間潰すのにちょうどいいかも。 -
百年文庫11冊目は「音」
収録は
幸田文「台所のおと」
川口松太郎「深川の鈴」
高浜虚子「斑鳩物語」
いずれも初読。高浜虚子散文も書いてたんだとへええとなる。
一番いいなと思ったのは「台所のおと」だろうか。文章の端々から、夫婦の微妙な感情がたちのぼるようで「名文だなー」と思ってしまった。すごい比喩とかあるわけじゃないんですけどね。言葉の選び方? 視線? 佐吉がなんだか優しく感じる。
「深川の鈴」は前読んだ宇野千代と同じくドラマとかにしてみたいような小説でした。
全体にどきどきするような雰囲気はなく、静かな「音」を感じさせる作品たち。 -
借りたときは地味かな~とおもったけどかなり読ませられる。すごい作品ぞろい。どれもこれも、ものすごく深く頼りがいのある視点がすえられた日常のひとまくなんだけれど、なんかいいわ~では済ませられない大きなうねりのような、まるで時間がそのままおしよせてきているような、しかし興奮ではなくあくまで静かな気持ちで読んだ。とにかくすごい。
幸田文は特にすごいと思った。台所の音っていう、病人が枕元に嫁の台所の音を聞く話で、まったく余分なことを書いている気がしないのに、雑然と生活がある様子や、愛情のひきこもごもや、すべてを書いているという感じがするのがすごい。川口松太郎はわたし好きかも。高浜虚子は奈良のはなし。干し柿のよう。 -
音 が小説に彩りを添える。
様々な音が印象的に出てくる3篇。 -
裏表紙に「何気ない暮らしの音が優しく響く三篇」とあったが、本当にその通りで、読んでいてほのぼのした。(こちらを読む前に読んだ、同じ百年文庫の『白』は真剣で重い内容の作品がおさめられていたので、余計そう感じたかもしれない。)
最初の、幸田文『台所のおと』がすごく良かった。
病気で床についている料理人の佐吉が、布団の中から、妻の立てる台所の音を聞く。
音だけで、こんなに色々なことが分かるなんて…。妻のあきさんが台所で立てる音の描写を読んでいると、自分も音に注意しながら丁寧に料理したいような気分になった。
音の描写から、あきさんの台所仕事ぶりだけではなくて、それを布団の中から聞いている佐吉さんの妻に対する優しい愛しみに満ちた眼差しみたいなものも一緒に感じられる。素敵な話だった。 -
特に幸田文が良かった。リズム良くすっと染み込んでしまうような文章、これはもう名人。
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実に、音が鍵になっているお話ばかりだった。
「台所のおと」
特にこの作品は、音の細やかさが際立っていた。
全体を通して、音がこの作品を包み込み、あふれ出し、行間から聞こえてきた。その音のたたずまいまで、ありありと感じることができた。
作者は、なんと繊細な感覚の持ち主なのだろう。
丁寧に生きてきた作者の人となりが、見てもないのにはっきりとわかる。
素晴らしい小説だ。
さすがだ。
「深川の鈴」
江戸っ子とはこんなに粋なんだな、と、感心した。
お糸のさばさばして、真っ直ぐで、すっきりした強さは、読んでいて心地よかった。
夜にお母ちゃんにそばにいてほしかった子どもたちは、ちょっと不憫だったけれど。
「斑鳩物語」
実に田舎らしい、そんな風景にあふれていた。
窓から見える景色も、塔のなかのほこりっぽさも、
話す声も、夜の音も。
通りすがりの旅人が、そこの生活に触れる、その感覚が伝わってきた。 -
『台所のおと』幸田文
なるほど、こういうのを書く人なんですね。なんとも繊細な感覚。こまかいところに目が行きとどきすぎて窮屈な感じもするけれど。たしかに揚げ物の音は雨にも聞こえる。
『深川の鈴』川口松太郎
作者自身、講釈師の家に住み込んでいたので自伝的な色合い。芸道ものを書いていたそうで、やはり人物の口調がよい。お糸さんが眼前にいるような気がする。鈴のエピソードも、なんだか潔癖過ぎない女の情感という感じで面白い。
『斑鳩物語』高浜虚子
小説も書いていたのですな。なんだか『伊豆の踊り子』を思い出す。こちらは夜に響く機の音。
「音」ネタで3本見事にそろった。 -
・幸田文「台所のおと」△
同シリーズ「水」「青」と読んできて、日本人作家のは「また病気ものか…」とちょっと辟易。病気好きだね日本人。
夫が床に伏せてじぶんの代わりに台所の妻がたてる音に耳を傾ける。台所の音から心までお見通しのような美文。
しかしこうも美文であると最後にはうっとうしいのだ。
・川口松太郎「深川の鈴」◎
第1回直木賞作家。「大衆小説は描写じゃない。筋であり、物語である」
江戸!人情!
江戸っ子なだけに江戸っ子の書くものはどうも好きなようだ。そういえば色川武大もそうか。
芸道もの世話人情ものってのも気になる。
・高浜虚子「斑鳩物語」×
「『写生』という俳句理論を継承・発展させ、それを散文にも適用した人物」
へー。わかんなかったや。 -
『台所のおと』幸田文
くわいの柔らかな揚げ音、菜を洗うしゃあっ、包丁のとっ。
病や将来の不安で全体的に重めだけど、静かで心地よい音がたくさん。
これ好き〜。
『深川の鈴』川口松太郎
江戸っ子のはきはき、しおらしさを合わせ持つ魅力的な女性。お糸と過ごした幸せな時間が鈴の音と共に蘇る。
これも好き〜。
『斑鳩物語』高浜虚子
いまいち。読んだの忘れて、読み返しそうになった。 -
音に関する内容の小説。。。男女の仲は今も昔も変わらないのかなぁ?