(008)罪 (百年文庫)

  • ポプラ社
3.84
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  • Amazon.co.jp ・本 (161ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591118900

作品紹介・あらすじ

ノアの方舟から放たれた最後の鳩は、今も永遠の平和を求めて飛び続けている-。旧約聖書に題材をとった小品(ツヴァイク『第三の鳩の物語』)。目的地へ急ぐ車上から目にした一瞬の光景。それは生涯、「私」を赤面させる温かな叱責であり続けるだろう(魯迅『小さな出来事』)。美男の青年近衛士官が突然、輝かしい未来を捨てて修道院に入った。贖罪を求めて彷徨する魂を描いたトルストイ晩年の傑作『神父セルギイ』。胸底に灯をともす、文豪たちの誠実と愛。

感想・レビュー・書評

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  • 「第三の鳩の物語」
    ノアの洪水ならぬ戦火の火炎。
    「人類は平和を見出すことができなかったのだ」
    この一文は悲しい。
    自由・喜び・安息・平和
    この鳩は、実に多くを象徴して、空をさまよっている。
    永遠の祈りだ。

    「小さな出来事」
    人として、だなんて、口では簡単に言える。
    たとえそれが嘘や偽りであったとしても、倒れた人に手を差し伸べられるだろうか。
    寄り添うことができるだろうか。
    「罪」は、じつに巧妙に仮面をかぶって、正当ぶることもあるのだ。
    それをつきつける作品だった。

    「神父セルギイ」
    なんともよくできた小説だ。
    様々な欲が、自然に巧みに描かれている。
    功名心や自尊心が、物事の本質から自分を遠ざけてゆく。
    努力するからこそ、自尊心が生まれる。
    どこまでもクリアで、謙虚で、けがれなき心。
    それに憧れ、望む気持ちはわかる。
    しかし、結局、人は神にはなれない。
    一生自分の心を見張って、丁寧に生きていかなくてはならないのだ。

  • ショートショート2篇と中編(トルストイ)という構成。86/100

  •  
    ── ツヴァイク・魯迅・トルストイ/西 義之・訳
    《百年文庫(008)罪 20101012 ポプラ社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4591118908
     
    …… ノアの方舟から放たれた最後の鳩は、今も永遠の平和を求めて飛
    び続けている。旧約聖書に題材をとったツヴァイクの小品⦅第三の鳩の
    物語⦆。目的地へ急ぐ車上から目にした一瞬の光景。それは生涯、「私」
    を赤面させる温かな叱責であり続けるだろう。
    ── ツヴァイク/西 義之・訳⦅レゲント 1974‥‥ みすず書房⦆
     
    ── 魯迅《小さな出来事》。美男の青年近衛士官が突然、輝かしい未
    来を捨てて修道院に入った。贖罪を求めて彷徨する魂を描いたトルストイ
    晩年の傑作《神父セルギイ》。胸底に灯をともす、文豪たちの誠実と愛。
     
    (20210615)
     

  • テーマが「罪」のせいか、宗教色の強いものが多かったように感じた。

    『神父セルゲイ』の重厚感に圧倒された。トルストイの物語を読むのはこれが初めてだったが、こうした初めての出会いが沢山あるのも百年文庫の良さの一つ。

  • 罪をテーマにしたアンソロジーだけど、普段過激なミステリーを読んでいる身としては、罪は罪だろうけど何て健気な罪の意識だろうと思う。

    先の2編は大変短く、本書の殆どのページをトルストイの『神父セルギイ』が占める。ロシア文学はそれほど詳しくないが、ドストエフスキーは世俗的だけど面白く、トルストイは生真面目でお堅いなと思う。

    神父セルギイは端から見たらだんだん悪いほうに転がってるように見えるが、人間の幸福の本質は何かを問いている。これもやはり良書だと思う。

  • ツヴァイク『第三の鳩の物語』
    聖書に題材をえて、反戦を訴える。みじかっ!

    魯迅『小さな出来事』
    なんか美談めいた話。世相とかに託すものがあるのだろうが。みじかっ!

    トルストイ『神父セルギイ』
    抹香くさい話である。前の巻の『聖ジュリアン伝』に似たテイスト。『人間失格』っぽくもある?

  • トルストイの『神父セルギイ』が圧巻過ぎて他の二作品が寓話的な印象しか残りませんでした。
    『神父セルギイ』の信仰と俗とのせめぎ合い、聖とそれを売り物にする聖職者の俗物さ、神父の青年時代から老年までの心の動きや揺れの書かれ方がすごかったです。
    ただ自分がキリスト教に対して知識を持っていないので間違った受け止め方をした部分もあるだろうな、とは思いますが…。作品を読む前に宗教的な知識を持つことの大切さも感じました。

  • 強烈ではない存在感なのに記憶にのこりました

  • ツヴァイク『第三の鳩の物語』、寓話みたい。
    魯迅『小さな出来事』はタイトルのように本当に小さな出来事が書かれていて、短い話だけれど印象深い。
    トルストイ『神父セルギイ』には啓発された。私には信仰のことはよく分からないけれど、これの人間の姿の描き方はすごいと思った。

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