- Amazon.co.jp ・本 (177ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591118986
作品紹介・あらすじ
幼さの残る夜長姫は美しい笑顔に似ず、残忍きわまりない。「好きなものは呪うか殺すか争うかしなければならないのよ」-姫の魅力に抗しきれぬ若い匠の恐怖と憧れ(坂口安吾『夜長姫と耳男』)。名もなき衛士が三つの姫宮をさらって逃げた。突如巻きおこる疾風のようなロマンス(檀一雄『光る道』)。白粉の下に「男」を隠し「私」は街の奥へ分け入っていく。女装することで変容していく男の心理を描きだした谷崎潤一郎の『秘密』。エロティシズムと夢魔が交錯する、妖気に満ちた世界。
感想・レビュー・書評
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三人の作家の書くなまめいた話があなたを掴んで離さない!
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無垢な少女に妖しさを認めて男が絡め取られる坂口、團に対して、夕鶴のおとぎ話のような谷崎。99/100
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文豪ストレイドッグスのアニメを見て、坂口安吾と谷崎潤一郎を読んでみたくなり。
坂口安吾の夜長姫と耳男はちょっと怖い昔話にありそうな話で面白かったけど、谷崎潤一郎の秘密は主人公がクズだった。 -
『夜長姫と耳男』の無垢な少女の残虐性が怖い。他社の眼を気にしない善悪の基準や美意識を持つことはある意味最強なのかも知れないと感じます。
『光る道』は途中まで在原業平の『露と答えて』と重なりましたが全く違う結末でした。
『秘密』は探偵小説めいていて一番安心して読めました。謎だからこそのロマンス。
どの女性も個性的で妖し過ぎる…。 -
「夜長姫と耳男」
物語全体が異界の空気に包まれている。
登場人物たちも、その名も、その動きも。
随所で繰り返される文章も、単語の選び方も、使われる文字さえも。
なんだか、魚眼レンズで登場人物の心を覗いてみているような思いがする。
湾曲し強調された感情や世界。
耳男もヒメもエナコも、それぞれに狂気を抱えている。
長者からも、キリキリと舞う村人からも、異様な空気を感じる。
狂気に飲まれ、命を捨てるほででないと、化け物のような芸術はできない、ということなのだろうか。
ほんとうに、それだけなのだろうか。
耳男はこの後、どんな仕事をしたのだろうか。
また、読み返してみたい。
次読んだときは、どんな印象を受けるだろう。
楽しみだ。
「光る道」
16歳の、毎日に飽きたらしい世間知らずのお姫様。
可憐で軽やかで、重みもない。
この世とかけ離れた天女のような存在に酔いしれた「おのこ」。
しかし、いわば自分の世界に属する男、を殺してしまい、さらには姫に操られるかのように女まで手にかけてしまったことによって、強烈にもといた現実に引き戻されてしまう。
姫とは対照的な、生命を感じさせる豊かな女を殺した小弥太は、反射的に姫にとびかかってしまう。
小弥太に2度見えた光る道は、両方とも現実から離れてゆく幻の誘惑の道だった。
妖艶な存在に飲まれて酔ってしまった結末は、破滅だったのだ。
小弥太の気持ちはわからないではないけれど、若いなあ。即時的だなぁ。
「秘密」
まさに秘密の魅惑が描かれた小説だ。
いくつもの「秘密」。
それぞれらはどれも、一時の非現実だから、心がひきつけられるのだ。
からくりがわかってしまえば、興味が尽きてしまう。
知った道になってしまえば、それはありふれた日常に飲み込まれてしまうのだ。
最後の、
もッと色彩の濃い、血だらけな歓楽
というのが、グロい。
「秘密」のほうが、よっぽどロマンスにつつまれているなぁ。 -
有名どころが3人並んだ。
坂口安吾『夜長姫と耳男』
なかなか面白い。ちと作りすぎという気がしないでもないが。
檀一雄『光る道』
安吾のと似ているが、こっちのヒメのほうが怖いかも。
谷崎潤一郎『秘密』
これは一転してネチッとしている。乱歩とかの時代感。 -
手頃に読める長さで、未知の作家を知ることもできるいいレーベルだなぁ。