(016)妖 (百年文庫)

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (177ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591118986

作品紹介・あらすじ

幼さの残る夜長姫は美しい笑顔に似ず、残忍きわまりない。「好きなものは呪うか殺すか争うかしなければならないのよ」-姫の魅力に抗しきれぬ若い匠の恐怖と憧れ(坂口安吾『夜長姫と耳男』)。名もなき衛士が三つの姫宮をさらって逃げた。突如巻きおこる疾風のようなロマンス(檀一雄『光る道』)。白粉の下に「男」を隠し「私」は街の奥へ分け入っていく。女装することで変容していく男の心理を描きだした谷崎潤一郎の『秘密』。エロティシズムと夢魔が交錯する、妖気に満ちた世界。

感想・レビュー・書評

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  • 無垢な少女に妖しさを認めて男が絡め取られる坂口、團に対して、夕鶴のおとぎ話のような谷崎。99/100

  • 文豪ストレイドッグスのアニメを見て、坂口安吾と谷崎潤一郎を読んでみたくなり。
    坂口安吾の夜長姫と耳男はちょっと怖い昔話にありそうな話で面白かったけど、谷崎潤一郎の秘密は主人公がクズだった。

  • ・坂口安吾『夜長姫と耳男』
    三人の匠が腕を競うのどかな話かと思っていたら(タイトル『妖』の時点でそんなはずはないのですが)、序盤で主人公の男の耳がそぎ落とされて、あれっと思った。
    お姫様がだいぶ、エキセントリック。姫の気に入る持仏を作るために、蛇の生き血を飲み干しその死体を天井にぶら下げる主人公の耳男もすごいけど、その耳男がかすんでしまうくらい。
    終わり方はなんだかドラマチックだった。結局夜長姫って何者だったのか…

    ・檀一雄『光る道』
    文章(情景描写)がすごく綺麗だった。
    秋の気配を感じる晩夏の風の匂い、土の香りや光の感じまで伝わってくる。短めの作品だけれど、文章の作り出す世界に浸れる作品だった。突然始まって突然終わるので、これが全部主人公の男の妄想か夢だったとしても、驚かないかも…。

    ・谷崎潤一郎『秘密』
    こちらも短い作品だけれど、独特な雰囲気があって酔いそうだった。
    2つめの『光る道』は情景描写など爽やかさを感じる部分もあったけれど、この作品はまさに、妖しい感じ。女装する男の皮膚や体内の感覚までもくまなく描写されていて、その男の妖しさが伝わってきた。
    谷崎の作品を読むのは初めてくらいだったけれど、漢字が多めの文章だけれど不思議と読みやすく、リズムが美しく読んでいて心地よかった。

  • 『夜長姫と耳男』の無垢な少女の残虐性が怖い。他社の眼を気にしない善悪の基準や美意識を持つことはある意味最強なのかも知れないと感じます。
    『光る道』は途中まで在原業平の『露と答えて』と重なりましたが全く違う結末でした。
    『秘密』は探偵小説めいていて一番安心して読めました。謎だからこそのロマンス。

    どの女性も個性的で妖し過ぎる…。

  • 「夜長姫と耳男」
    物語全体が異界の空気に包まれている。
    登場人物たちも、その名も、その動きも。
    随所で繰り返される文章も、単語の選び方も、使われる文字さえも。
    なんだか、魚眼レンズで登場人物の心を覗いてみているような思いがする。
    湾曲し強調された感情や世界。
    耳男もヒメもエナコも、それぞれに狂気を抱えている。
    長者からも、キリキリと舞う村人からも、異様な空気を感じる。
    狂気に飲まれ、命を捨てるほででないと、化け物のような芸術はできない、ということなのだろうか。
    ほんとうに、それだけなのだろうか。
    耳男はこの後、どんな仕事をしたのだろうか。
    また、読み返してみたい。
    次読んだときは、どんな印象を受けるだろう。
    楽しみだ。

    「光る道」
    16歳の、毎日に飽きたらしい世間知らずのお姫様。
    可憐で軽やかで、重みもない。
    この世とかけ離れた天女のような存在に酔いしれた「おのこ」。
    しかし、いわば自分の世界に属する男、を殺してしまい、さらには姫に操られるかのように女まで手にかけてしまったことによって、強烈にもといた現実に引き戻されてしまう。
    姫とは対照的な、生命を感じさせる豊かな女を殺した小弥太は、反射的に姫にとびかかってしまう。
    小弥太に2度見えた光る道は、両方とも現実から離れてゆく幻の誘惑の道だった。
    妖艶な存在に飲まれて酔ってしまった結末は、破滅だったのだ。
    小弥太の気持ちはわからないではないけれど、若いなあ。即時的だなぁ。

    「秘密」
    まさに秘密の魅惑が描かれた小説だ。
    いくつもの「秘密」。
    それぞれらはどれも、一時の非現実だから、心がひきつけられるのだ。
    からくりがわかってしまえば、興味が尽きてしまう。
    知った道になってしまえば、それはありふれた日常に飲み込まれてしまうのだ。
    最後の、
    もッと色彩の濃い、血だらけな歓楽
    というのが、グロい。
    「秘密」のほうが、よっぽどロマンスにつつまれているなぁ。

  • 有名どころが3人並んだ。

    坂口安吾『夜長姫と耳男』
    なかなか面白い。ちと作りすぎという気がしないでもないが。

    檀一雄『光る道』
    安吾のと似ているが、こっちのヒメのほうが怖いかも。

    谷崎潤一郎『秘密』
    これは一転してネチッとしている。乱歩とかの時代感。

  • 手頃に読める長さで、未知の作家を知ることもできるいいレーベルだなぁ。

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著者プロフィール

(さかぐち・あんご)1906~1955
新潟県生まれ。東洋大学印度倫理学科卒。1931年、同人誌「言葉」に発表した「風博士」が牧野信一に絶賛され注目を集める。太平洋戦争中は執筆量が減るが、1946年に戦後の世相をシニカルに分析した評論「堕落論」と創作「白痴」を発表、“無頼派作家”として一躍時代の寵児となる。純文学だけでなく『不連続殺人事件』や『明治開化安吾捕物帖』などのミステリーも執筆。信長を近代合理主義者とする嚆矢となった『信長』、伝奇小説としても秀逸な「桜の森の満開の下」、「夜長姫と耳男」など時代・歴史小説の名作も少なくない。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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