(018)森 (百年文庫)

  • ポプラ社
4.04
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本棚登録 : 199
感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591119006

作品紹介・あらすじ

森が朝の美しい光に染まり始めると老嬢はつぶやく。「新しい日なんか、大きらいだ」-。近隣から「けちな金持ち」と誤解されながらもプライドが高く助けを求められない女性が、ついに心開くまでを描いたモンゴメリーの『ロイド老嬢』。子どもの澄み切った眼差しと自然の神秘が織りなすメルヒェン『花のささやき』(ジョルジュ・サンド)。果物売りの大男と小さな女の子の心の交流を美しくつづった『カブリワラ』(タゴール)。人生の厳しい現実も、詩心と優しさで包みこむ感動の三篇。

感想・レビュー・書評

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  • 極上の一冊。

    優しい物語を読むと自分も優しくなれる、そんな気がする。

    モンゴメリーの「ロイド老嬢」は心に残る作品。心閉ざしていた孤独な老嬢。
    一人のかけがえのない、愛おしい存在が、老嬢の心を占めていたとある感情を溶かしていくさまに心を打たれずにはいられなかった。

    思いやりという愛の偉大さ、人の喜び=自分の幸せに繋がるって素晴らしい。

    身分差を超えた、心の交流と共有が涙を運ぶタゴールの「カブリワラ」も秀逸。

    せつなさの中の温かさがたまらない。

    三篇に共通するのは心の壁が取れる瞬間かな。優しく美しく、深く心に沁みる極上さ。

  • 珍しく地域に開放されている定時制高校の図書館を知り、4つ目の図書館カードを作り今年から利用している。初めて訪れた日、窓際に並んだ白で統一された文庫棚が目に入った。もしかすると、これがブク友さんのレビューで見かけた百年文庫? 表紙は「憧」「駅」「恋」などと漢字ひと文字で表現されて洒脱。想像通り爽やかで素敵な装丁だった。ページを繰ると文字のサイズも大き目で、中高年読者層に配慮した文庫本だった。山が好きな私は迷わずにと云いたいところだが、迷った末に『森』を選んだ。理由は大好きだったモンゴメリーの小説が入っていたから。

    モンゴメリー『ロイド老嬢』
    『アンの友だち』の中に収めた作品らしいが残念ながら覚えていない。近隣から「けちな金持ち」と誤解されながらもプライドが高く助けを求められない女性が心開くまでを描いてある。ロイドはある日恋人にそっくりの娘・シルビアに出会う。名前を聞いてもと婚約者の娘だと確信。若くして亡くなってしまった彼の娘を喜ばせようと、森に生えている苺や花を籠に入れて娘が通る道に置くことにする。
    年取った未婚女性をオールドミスと呼ぶのは差別用語と使われなくなって久しいが、老嬢こそ今では耳にしない古めかしい表現で、タイトルが時代を反映しているよう。でも、だからこそモンゴメリーの作品なのだろうけど・・・。ロイドって何歳ぐらいだろう? シルビアが20代ぐらいだから50代でもおかしくない。現在の50歳とは比べようもない時代の女たちを想像しながら読んだ。ロイド家を取り囲むトウヒの森やブナの樹々は「赤毛のアン」に登場する小径を連想させる。ロイドは野イチゴの季節が終わると斜面に咲くメイフラワーの花を贈ったとあり、メイフラワーの花が甦る。「赤毛のアン」でアンがお気に入りの花と話していたあの花だ! 早速ググってみると、メイフラワーの正式名は”トレイリング アービゥータス”。つつじ科のイワナシ属で、世界には2か所しか自生していない。何とも日本ではイワナシの名前で北海道西南部、本州の日本海側に分布し、山地から亜高山帯の林縁に生育していた。愛らしい花に出会えたことも嬉しい。花の画像は→http://amegasuki3.blog.fc2.com/blog-entry-512.html
    他にジョルジュ・サンド『花のささやき』、タゴール『カブリワラ』の2篇。

    • しずくさん
      地球っこさん、今コメントに気付きました!
      返信が遅れてごめんなさい。なるたき図書館(http://www.news.ed.jp/naru...
      地球っこさん、今コメントに気付きました!
      返信が遅れてごめんなさい。なるたき図書館(http://www.news.ed.jp/narutaki-h/toshokan/main-top.htm )という名称です。良かったら覗いてみられませんか? ひっそりとした佇まいで中へ入ると懐かしい雰囲気にすぐ好きになりました。百年文庫を置いてあるのがさすがです。近辺の高齢者の方々にも重宝されているようです。
      2020/02/18
    • しずくさん
      5552さん、ごめんなさい!
      ということで今気付き慌てています。
      一般にも開放してたぶん市民にもっと定時制高校を知ってもらうという素敵な...
      5552さん、ごめんなさい!
      ということで今気付き慌てています。
      一般にも開放してたぶん市民にもっと定時制高校を知ってもらうという素敵な試みでしょうね。シーボルト記念館近くにある鳴滝高校(http://www.news.ed.jp/narutaki-h/)です。夜間と昼間の定時制の他に通信課程もあるらしい。居心地が良い空間を作ってあります。図書室に施錠は良く聴きますが無粋ですよね。ここで百年文庫に会えた事が心から嬉しい!
      2020/02/18
    • 地球っこさん
      しずくさん、おはようございます。
      お返事ありがとうございます。
      とても雰囲気のある図書館のようですね。
      地域の方からも大切にされてるの...
      しずくさん、おはようございます。
      お返事ありがとうございます。
      とても雰囲気のある図書館のようですね。
      地域の方からも大切にされてるのがわかります(*^^*)
      2020/02/19
  • モンゴメリよかった。タゴールもよかった。
    かつての恋人の娘を、神のように崇めて推す老嬢の話。自身の破滅も厭わない自己犠牲精神に、感情が溢れすぎてしまった。めちゃくちゃ萌えました。

    タゴールの話は、切なさに殺されるかと思った。タゴールはじめて知った。インドの作家ぜんぜん知らなかったので、この人を知ることができただけでもよい収穫だったと思う。

    ジョルジュ・サンド目当てに読んだけど、一番苦手な作品だった。高圧的に感じられた。

  • ここ一年気になっていた「百年文庫」。
    気分転換に読みたくて、ポプラ社HPで内容を確認して、これを借りた。

    モンゴメリー、掛川恭子 訳「ロイド老嬢」
    ジョルジュ・サンド、小椋順子 訳「花のささやき」
    タゴール、野間宏 訳「カブリワラ」

    良かった。
    心がふわふわ、ここではないどこかに。
    長編だといろいろ具体的なので、この感覚は味わえないんじゃないかな。
    そんなことを、今初めて思いました。
    どの作家も読んだことがなかったので、新鮮だった。
    「ロイド老嬢」、ボタンの掛け違いのように物事がおかしくなってしまうこと、遠い日の甘酸っぱい想いを大切に生きること、生まれかわることができること……。
    私も少し年を重ねたからこそ、響いてきた。
    「花のささやき」、こういう狂いに最近触れていなかったから、おもしろかった。
    「カブリワラ」、読んでいると映像が目に浮かんでくるような、心のひだをよく描いた作品だと感じた。

  • ロイド老嬢『モンゴメリー』
    涙や感動を誘うストーリーなのに、不思議にいやらしさはなく、透明、純粋。ふしぎだな。

    『花のささやき』ジョルジュ•サンド
    フランス人らしく幻想的。でも花壇の花を蹴り散らしたのは驚いた。

    『カブリワラ』タゴール
    インド人。切ない貧富の差。

  • ロイド老嬢は、何度読んでも感動する。
    赤毛のアンシリーズを読み返したくなる。
    プライドとか、こだわりとか、そういったものを超越できたときに、本当の幸せや穏やかさが得られるのかもしれない。

    花のささやきは、面白い伝説のようなお話だ。
    花壇の花々のねたみやエゴが面白かった。

    カブリワラも印象的なお話だ。
    身分を越えた共感の部分が、胸を打つ。
    やっぱり、私は、人間に後付されたフィルターを外していった後に見えるものが描かれている作品が好きだ。
    そういうものが、長く読み続けられる作品なのかもしれない、と思う。

  • タゴールの「カブリワラ」が一番印象に残りました。身分の差別も、経済力の格差も、国境も、自分の置かれた境遇を全て捨てて、一つの想いを共感できた時、そこに信頼関係と友情が芽生えるのだなぁと思える良いお話でした。

  • ロイド老嬢、密かな狂おしい愛情が、言ってみれば継子のような存在に注がれるのだが、よく考えたらそんな感情を自然と持つ人ってなかなかいないのでは?やはり長年の孤独と寂寥の為せる技、という感じか。40/100

  • モンゴメリーのロイド老嬢、ジョルジュサンドの花のささやき、タゴールのカブリワラのアンソロジー。ロイド老嬢がいちばん読みやすかったのは昔、赤毛のアンを読んでいたからか。あしながおじさんのような妖精の代母さんにこころが温まった。ジョルジュサンドはショパンと関わりがあると聞いて読んでみたかった。タゴールは聞いたことがなかったけどインドの作家らしい。貧富の差がある中での友情。こういう短篇で気になる作家の本を読むことができるのはいいことだ。

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