(024)川 (百年文庫)

  • ポプラ社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (179ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591119068

作品紹介・あらすじ

酒の名所、伏見の船宿に嫁いだのは登勢が十八の頃だった。頼りない夫と気難しい姑、打ち続く災厄にもへこたれずに生きぬく女性の輝き(織田作之助『螢』)。水上バスに乗って川岸の景色を眺めるうち、記憶の底から呼び出された「魔物」の正体(日影丈吉『吉備津の釜』)。都での宮仕えが決まった夫は津の川を東へ、妻は西へと別れた。ふたたび一緒に暮らせる日を願って妻は便りを待ち続けるが…(室生犀星『津の国人』)。暮らしに川が生きていた頃の、日本人の心の風景。

感想・レビュー・書評

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  • 織田作之助『蛍』
    当人の名前そのものが出てくるまで坂本龍馬に纏わる話とは気づかなかった。司馬遼太郎に先立つこと20年弱、オダサクがこんなの書いているとはチト意外

    日影丈吉『吉備津の釜』
    幻想譚のごとくだったのをパッと現実に引き戻す手際がうまい。洲ノ木の心理描写も読ませる。川蒸気とやら乗ってみたいね

    室生犀星『津の国人』
    王朝もの、と言うのだそうだ。独特の味があり、ヤキモキしながら読んでしまうのだが、なんというかtoo much。あなた何者なんですか筒井さん

  • 織田作の蛍は既読だったが、それにしても京言葉が完璧に再現されていることには何度読んでも嬉しくなる。「御寮はん、笑うてはる場合やおへんどっせ」。これですわ。
    日影丈吉はこのシリーズには珍しいサスペンスもの。よくできている。34/100

  • この巻は日本の作家さんばかり三作品。

    『螢』のきびきびと働き不幸を乗り越えて生きる強さは読んでいて気持ちの良いものでした。
    『吉備津の釜』は騙されていたらどうなっていたのか…とぞくりとするミステリーで読み応えがありました。
    『津の国人』はしみじみとして良い話でした。筒井の心の持ち方が美しく、この本の中の作品では一番好きです。

  • 初めて読む日影丈吉さんの
    「吉備津の釜」が結末に予測がつかず面白かった。

  • 20191103〜1107 図書館で借りた。文学史とかで有名でも、実際に読むことが余りない作家の短編集。室生犀星の文章は、美しい。

  • 「螢」
    こういう作品を読むと、つい史実と比べたくなってしまう。
    しかし、作品は作品で完結した世界として受け止めて、純粋に楽しむことを、まず最初にしたほうがいいのだろう。
    そのほうが、より深く作品とコミットすることができる気がする。
    が、つい、ウィキペディアなどを見てしまうんだよなあ。
    登勢の、弱いようでしなやかな強さは、まさに大和なでしこだ、と思わせる。
    受け入れていく強さ。
    川の流れのように、幸も不幸も移ろっていく。
    それに抵抗するわけでなく、その川とともに生きていく登勢の姿は、実に美しい。

    「吉備津の釜」
    川が記憶を呼び起こし、その記憶が道を分けた。
    最後の展開ですべてが繋がる。
    なんか、祈祷師を信じてしまいそうだ。
    運命が、言葉でない言葉で、彼に語りかけている。
    行くな。
    一度は這い上がれたじゃあないか。
    行くな。
    川を流れる菊や、祈祷師の面影は、熱にあたって狂いかけた彼の人生を、なんとか引き留めたのだ。
    面白かった。

    「津の国人」
    川の上と下とに別れていく夫婦。
    有名な古典をもとにしている。
    筒井という名前も、筒井筒を思い出させる。
    女の心理が丁寧に描写されている。
    3年待ったと読むか、待てなかったと読むかは、人それぞれだと思う。
    男が軽率であったと読むか、女の心が定まらなかったと読むか、双方致し方なしと読むか。
    もとの古典を読んだ時も、いつも、なんとも割り切れない、致し方ない気持ちになってしまう。
    若い女が、たった一人で男を待ち続ける苦しさは、いかほどか。
    結末が古典とは異なるところが、ちょっとリアルさを増しているように思った。

  • 2013.5.6
    『螢』織田作之助
    強く明るく働く女の話は読んでいて気持ちがいい。ちょっと強すぎるか。螢の出てくる無邪気な場面が繰り返されていて良い。

    『吉備津の釜』日影丈吉
    金の苦心から一変、むかし祈祷師から聞いた民話へころがり、一体この話はどこに行くのかと思えば、ミステリー。おもしろい。

    『津の国人』室生犀星
    聞いたことあるような話だと思ったら、伊勢物語が題材。古典て好き。でも綺麗だけの話でこれは少し長いな。

  • 織田作之助「螢」(1944)登勢の身の上に降り掛かるあれこれ。現代人ならへこたれてしまいそうなことが起こっても気丈に生きる。
    日影丈吉「吉備津の釜」(1959)戦後の混乱のなかで生きる男が酒場で出会った男に紹介された男を訪ね、水上バスに乗りながら子供の頃に乗った川蒸気を思い出す。
    室生犀星「津の国人」(1942)、貧しさに似合わず、うつくしい言葉をつかう女性の物語。男としては、何もなくともこのような素晴らしい言葉を発する女性が傍らにいたら、非常な幸せを感じるだろう。

  • 織田作之助『螢』
    日影丈吉『吉備津の釜』
    室生犀星『津の国人』

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著者プロフィール

一九一三(大正二)年、大阪生まれ。小説家。主な作品に小説「夫婦善哉」「世相」「土曜夫人」、評論「可能性の文学」などのほか、『織田作之助全集』がある。一九四七(昭和二二)年没。

「2021年 『王将・坂田三吉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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