(033)月 (百年文庫)

  • ポプラ社
3.08
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591119150

作品紹介・あらすじ

夜の静寂が村をつつむ頃、月の光が男たちの影を浮かび上がらせる-。貧しい土地に根を張る農家の暮らしぶりを素朴な小宇宙として写しとった『フィリップ一家の家風』(ルナアル)。公園のベンチで日を過ごす老人の一瞬を鮮やかに描いたリルケの『老人』。出征中に妻は不貞を犯したのではないか-疑念に囚われた夫の苦悩と家族が担った運命を描き、深い感動を呼ぶプラトーノフの『帰還』。庶民の人生に光射す瞬間、神々しいまでの生命の流露をとらえた三篇。

感想・レビュー・書評

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  • ルナアルの「にんじん」を読んだ娘が、他の作品も読みたいというので探してみたら、こんな本に出会いました。
    世界の名作短編を3編ずつ収めた、「百年文庫」。
    ルナアルの短編は、「フィリップ一家の家風」。村人の生活の様子がまるで散文詩のようにとりとめなく描かれている。日記の断片のような。「ほう、そんなことが」と思うような、日常の数々。本人たちにとっては当たり前かも知れないけど、時代や、身分が違うとこんなにも新鮮に思えるのか、と思う不思議な作品。
    リルケの「老人」は、森鴎外が翻訳。二人の老人が公園のベンチで隣り合って座っている僅かな時間を描いたものなのに、なんだかしみじみと哀愁が漂う。そして、二人の絶妙な心の距離感。これはもしかすると森鴎外の訳がすごくいいのでは?淡々と、美しい。
    プラトーノフ「帰還」は、戦時下の家族の物語。戦場から帰ってきた夫と妻のすれ違い、親子の心の通わなさ、など、登場人物が最初はみな自分本位なんだけど、ラスト、怒涛の展開があって、ちょっと目が潤んでしまった。悪いところ、許せないところ、みんなそれぞれあるけど、でも、それを飲み込んでいけるってところに、救いがある。

  • ルナアル、リルケ、プラトーノフの短編集。ルナアルの「フィリップ一家の家風」は、まるでミレーの農民画を眺めているような落ち着きと暖かさがあった。リルケの「老人」(森鴎外訳)は、短くも命の輝きが凝縮されていて印象的。大好きなプラトーノフの『帰還』は、大人びた兄妹が最後に見せる、必死に父に縋る姿に胸を締め付けられた。

  • 『フィリップ一家の家風』民俗学的というか、小説の枠を超えた面白さ。きだみのる『気違い部落周遊記』を思い出したが、こちらの方にはより愛がある。92/100

  • 百年文庫は、「憧」や「絆」のように、漢字1文字をテーマに、3名の作家による日本・海外文学の名作短編を集めたアンソロジー。全部で100巻あるので、300人の作家と出会うことができるシリーズです。
     本書は「月」をテーマに、ルナアルの『フィリップ一家の家風』、リルケの『老人』、プラトーノフの『帰還』といった、人々の日常や生活を風景ごと切り取ったような、美しい作品を3作収録しています。

  • 『フィリップ一家の家風』は小さな農村に根を張って生きる姿が力強かったです。自然の描写が美しくて印象に残ります。

    『老人』はなぜこの巻に収録されたのでしょうか。
    彼らが経た歳月から?

    『帰還』は戦場から帰還した夫が妻の不貞を疑う話。
    夫婦ともにグダグダですが家のことを頑張る息子が無理に大人になろうとしているようで読んでいて辛いものがありました。

  • 「フィリップ一家の家風」
    実に素朴で、愚直でシンプルで見栄をはらない生き方だ。
    その生き方は、愚かで学がなく、知恵のないようにも見えるだろう。
    その姿は、みすぼらしくちぐはぐで、汚くすら見えるかもしれない。
    それでもフィリップたちからは、どこか心地のよい気楽さを感じる。
    彼らの気負わぬ素直な姿には、やすらぎを見出すことができる。
    気どって誰かを蹴落としたりしなくたって、人は豊かに生きていけるのだ。

    「老人」
    あれ?
    月は?
    ひと月ふた月、の月かな?
    毎月、こうやって生きている老人。
    そういうことかな?
    それにしても、これを読むと、最近の年寄りは実に元気だ、と思う。
    リルケの時代の年寄りの描写は、まるで90を超えた人のようだ。
    いや、もっと上かな・・・
    でも、今はこういった老人たちは、病院や施設にはいっているだけなんだろうな。
    実はたくさんいる。
    そんな気がする。

    「帰還」
    苦しい生活の中で人間の心が弱ってゆく。
    その心の隙を埋めるために、誰かが必要になる。
    それはイワノフであっても同じだったろうに、許せない。
    双方の気持ちは、よくわかる。
    そして、その狭間で震える子どもたちが、切ない。
    家族は離れちゃいけない。
    私は、やはりそう思う。

  • 百年文庫23冊目は「月」

    収録は
    ルナアル「フィリップ一家の家風」
    リルケ「老人」
    プラトーノフ「帰還」

    いずれも初めて読む。「フィリップ一家の家風」の力強さがよかった。そして、自分の思いが届かない世界というのを知る。「老人」はほんとうに短い一篇。これも鴎外訳。そして「帰還」はずいぶん旦那が勝手な気もしたが、小説としては実に上手い一篇だと思った。

  • 2013.6.12
    『フィリップ一家の家風』ルナアル
    淡々とした貧しさ。感情は伴わずただそこにある。
    『老人』リルケ
    老人が3人並んでベンチに座っている。小さな絵のような話。
    リルケ二作目。一昨目はあわなかったけれど、これはなかなか。
    『帰還』プラトーノフ
    ロシア人の書くものは硬いパンのようでなかなか好きだ。しっかりものの息子ペトルーシカが哀れでかわいい。

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