ヘヴンリープレイス (ノベルズ・エクスプレス)

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 99
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591119570

感想・レビュー・書評

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  • 前の家とはほど近い(3キロほど)新興住宅に引っ越しした僕たち。リセットできるかも、とそんな期待があった。
    ぼく・桐本和希(小6)は自転車で新しい町をまわっていて、雑木林で英太と出会った。ぷくぷくしていて、低学年にも見える言動の英太だけど、本当は小4。天使のような笑顔につられて、セミをとったりと遊ぶうちに、雑木林の中のボロボロの廃屋に連れられて行った。そこにはローシと呼ばれるホームレスと、養護施設から抜け出してきた史生(ふみお・小6)が住み、登校拒否の少女・有佳(ゆか・中1)と英太の集う、汚いけれど、不思議に落ち着く場所だった。
    和希は親の希望する中学受験より、ピアノが好きだと気がつき、両親に自分の気持ちが言えるように成長してゆく。しかし、雑木林の家は取り壊される事が決まっていて、ローシもぬれぎぬで警察に捕まってしまう。
    少年の一夏の成長物語。

  • 夏休みにはいってすぐ、引っ越した町を探検していた6年生の和希は雑木林の廃屋で悩みをかかえる子どもたちと出会う。
    年齢のわりに幼い英太、施設を家出した史生、不登校の中学生有佳。
    和希は3人が信頼するローシ(老師)に惹かれ、交流を深めていく。

    「知っていることがえらいんじゃないんだよ。知りたくても知るチャンスがなかったのだから。
    わからないことは調べればいい。自分で調べるんだよ、史生」p.79

    しかし、ローシにつながることでできた子どもたちの世界も、おとなの論理によってつぶされてしまいそうになる。

    ぼくの親は、和希の自由にしなさいといいながら、必ず道を指ししめす。
    この道を進むといいと思うのだけれど、和希はどうしたい? 決めるのはきみだよ。
    そうして、親がしめした道を、自分が選んだと思ってこれまでやってきた。
    本当はどこかで自分をごまかしているってわかっていたはず。p.170

    子どもたちの“ヘヴン”がさわやかに描かれたひと夏の物語、小学生を主人公にした「ノベルズ・エクスプレス」のシリーズで。

  • ピアノが好きな和希(6年生):引っ越ししてきた同級生をいじめてしまったことが心にひっかかり続けている。本当は中学受験がいや。親の信頼を壊したくないと思っている。

    エイタ(4年生):発達が遅い。体が小さい。天使のような子。父親からの暴力を受け自分をバカだと思っている。大人の男性におびえる。

    フミオ(6年生):両親がおらず施設にいたがそこを飛び出し廃屋で寝泊まりする。エイタを弟のように思っている。

    ユカ(中一):絵を描くのが好きだが、姉のほうが優れていて自分はだめだと思っている。不登校である。

    老師(藤川さん):ホームレスの男性、子どもたちの保護者的立場にある

    ミホ:ピアノレッスンにきている子。和希が好きで心配している。

    親が子どもにする心配→今はとにかく頑張って勉強してほしい。理想的な友達づきあいをしてほしい。
    親の思いは子どもたちに伝わりプレッシャーになっている。

    子どもたち→両親の言動に対し思っていることは沢山あるが、期待を裏切らないでいたい。説明してもわかってもらえないだろうという思いから「良い子」の返事を続ける。

    両方の思いが歩み寄れずに距離を置き続ける様子が苦しい。
    それでも子どもたちは悩みを抱える子たちとの出会いで少しずつ変わってゆく。心的成長。

    和希は四人の悩める子たちと出会い、本当に自分がしたいことは何か、言葉に出して親に伝えることができるようになる。
    すべての登場人物がスッキリとした解決を迎えるわけではないのだけれど、
    それぞれがそれぞれの道を歩んで行ける光のようなものを感じた。
    老師の存在も大きい。
    「いい人かどうかということとね、お金持ちか貧乏かということは、まったく別なんだよ」
    行き場のない子どもたちは多いけど、何かひとりぼっちじゃないって思える本だと思う。
    話を聞いてくれる、わかってくれる人が周りにいない人も、こういう本に出会ってほしい。

  • 夏っぽくていいな、と思った。
    それぞれの色んな問題が解決するわけではないけれど、少しは変わったんじゃないか、と思う。

  • 夏休みに新しい街に引っ越してきた6年生の和希は、自転車で走っていて偶然見つけた雑木林で、英太という少年に出会った。
    英太に連れて行ってもらった雑木林の中のあばらやで、有佳や史生やローシと知り合う。

    今まで親の言うとおりにしてきた和希は、最近それを疑問に思うようになってきていた。
    あばらやで知り合った人たちと語り合ううちに、和希は自分が本当にやりたいことに気づき始めた。

    親は子どものことが心配で、ついつい先回りしてしまいがちです。
    うまく子どもの意思を尊重するのって、なかなか難しいことです。

  • 少年たちの夏の物語。
    面白かったです。子供はええなあ。

著者プロフィール

熊本県に生まれ、東京に育つ。『フュージョン』でJBBY賞、『トーキョー・クロスロード』で坪田譲治文学賞を受賞。主な作品に『トーキョー・クロスロード』(第25回坪田穣治文学賞受賞)、『この川のむこうに君がいる』『with you』(ともに青少年読書感想文全国コンクール課題図書選出)、『石を抱くエイリアン』『南河国物語』『Mガールズ』ほか、「レガッタ! 」シリーズ、「ことづて屋」シリーズなどがある。

「2023年 『金曜日のあたしたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

濱野京子の作品

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