(P[に]2-3)林の中の家 仁木兄妹の事件簿 (ポプラ文庫ピュアフル)
- ポプラ社 (2010年9月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591120637
感想・レビュー・書評
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短編かと思いきや長編かー!
今まで仁木さんの本は短編ばかり読んでいたかも。
久々に仁木兄妹物を読んだけど、妹ちゃん結構空気読めない(むしろ読まない?)子だったんだなぁ(笑。
なかなかに猪突猛進っぷりでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
仁木兄妹シリーズ長編。
仁木兄妹のもとにかかってきた1本の電話から始まる事件。
冒頭の、編み物をしている悦子と、植物カードを並べて楽しんでいる雄太郎兄貴がほのぼのします。
悦子は何かと首を突っ込むお転婆娘ですが、こういうキャラクターにしてはあまりでしゃばらないのでとても好感。
ちょっと毒の入った語り手としても楽しいです。
事件の方はとにかく登場人物が多くて人間関係も複雑。
早められた時計、移動された原稿用紙、指紋など、おもしろそうなアイテムがわんさかとありましたが、ごちゃごちゃしてしまった印象でした。
しかし、ちょっとした手がかりの提示など伏線がたくさんあるのは楽しかったです。
多い登場人物たちの事情が明らかになるにつれ、事件当日の行動がみえていき真相に収束していくのもおもしろい。
雄太郎が警察にも事件関係者にも信頼されすぎですが、それはまぁ、彼の人望。
夫婦間の事情などかなり毒がありどろどろしている話ですが、読んでいてあまり嫌な感じがしないのもこの作者の特徴だと思います。それが良いことなのかどうかは分かりませんが。
巻末の作者の創作についてはとてもおもしろかったです。 -
仁木兄妹の探偵譚、長編二作目。
探偵役に被害者からかかってくる謎めいた電話、華やかな関係者たち、
アリバイ崩しに秘められた動機。
本格ミステリ好きにはたまらない設定。
動機が現代風なのも驚き。半世紀近く経っても変化がないって事ですね。
巻末の製作秘話が飄々とした語り口とともに嬉しい。
表紙はあまり好きになれないけれど。 -
“「ちょっと待ってください。推定死亡時刻は正確なところ何時なのです?」
「被害者が君の妹さんに電話をかけてよこした午後八時十六分の直後、すなわち、八時十八分ないし二十分というところで間違いないと思う。君が駈けつけたとき、もう死体が冷えていたということだから、八時二十分よりあとということは、まずあるまい。つまりこれは、君と君の妹さんの証言を絶対的に信頼した上での推定時刻なのだよ。」
「責任重大ですね。悦子、だいじょうぶかい?」
「大丈夫よ。私の時計は、一週間に一分半しか狂わないんだから。解剖の結果も、八時二十分説に一致するんでしょう?」”
なかなかテンポ良くて読み始めると一息に読んでしまう。
誠父さんの正体がばれる場面が良かった。
仁木兄妹好き。
“「要するに、手がかりになるものが少ないというわけね。遺留品とか、そういうような。」
「そう。——遺留品といっては、まくらもとのねまき一枚か。」
兄は情なさそうにつぶやいた。と、その目が、不意に大きくなった。まじまじと、ちゅうを見すえている目だ。
「いやよ、にいさん、電柱にぶつけたりしちゃ。——わたし、まだ、にいさんと心中したくはないわ。」
わたしが肩をたたくと、兄はわれに返って苦笑した。わたしは、兄が何を考えついたのか、知りたくてたまらなかった。今の表情は何か新しい事実に思い至ったしるしに違いないからだ。だが、私にせっつかれるまでもなく口を切ったのは兄の方だった。” -
ちょいと登場人物が多すぎて読みながら混乱するところがありましたが、各自の思惑と行動が複雑に絡み合って一つの事件になっているところは流石です。
まぁ、都合よく仁木兄弟が事件に巻き込まれて、一般人がそこまで捜査活動に食い込めるか?とツッコミたいところもありますが、お兄さん大好きなので許します。
著者自身が本作を語った「悠久のむかしのはなし」では、仁木悦子さんがどのようにミステリを創作していたのか、という裏話もちらっと書いてあったりして、これまた面白いモノを読ませて貰いました。 -
仁木悦子が元気いっぱいでかわいい。兄のセーターを編む妹、洋裁店の縫い子、牛乳瓶から飲む牛乳、国民服を着るおじいさん、子供の面倒をみる女中、ほかにもたくさん、想像できないわけじゃないけどリアルにはわからない、ちょっと昔のものがたくさんでてきて楽しい。
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のっぽでマイペースな兄・仁木雄太郎は理学部植物学科の大学生。
ぽっちゃりで好奇心旺盛な妹・仁木悦子は音楽大学師範科の女子学生。
ふたりはシャボテン・マニアの豪邸で留守を預かって暮らしている。
いつものようなある夜、助けを求める一本の電話で二人は林の中の家に呼び出され、殺人事件に巻き込まれることに・・・。
という、ポプラ文庫の仁木兄弟の事件簿第3弾。
今回もまた、古き良き探偵小説の世界に浸ることができました。
とはいえ、今読むとこれほど民間人の調査がうまくいく展開はちょっと疑問ではありますが。
それはそれ、懐かしい匂いを感じつつも古臭くないのが素晴らしい。
緻密なプロットに美しい伏線の回収。
そしてやっぱり、殺人を扱っていながら爽やかなのがいいのです。
特に今回のラストなんて!ああ、よかった、と思わずにはいられません。
今回巻末に収録されていた仁木さん自身がこの作品について語った「悠久のむかしのはなし」と解説もよかったです。
作品づくりの過程や仁木さんのミステリに対する思いなど、非常に興味深く読みました。
いいなぁ、このシリーズ。続けて刊行していただきたいです。
ただちょっと気になったのがカバーイラストが中村祐介さんから変更になっている点。
中村さんのイラストも楽しみでしたので、ちょっとびっくりしてしまいました。
はじめは昨年の夏ごろ出版予定にあがっていたのがかなりズレての出版になったのは、このあたりのせい?
なんて、作品とは関係のないところが気になってしまったのでした。